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みすとら  作者: 詰乃 愛莉
第一章『Promised Love(約束された愛)』

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〔20〕妖怪参加型・演劇発表会②主役決め会議

「何これ?」ユキが言いました。筋子先生が書き上げた脚本は、壮大で盛大に見えましたが、意味が分かりませんでした。いちどリハーサルをしてみないと、全体像が見えませんでした。

「それでは、筋子先生の脚本をもとに、配役決め会議を行います」そよりさんの司会で、会議が始まりました。松柳先生は、後ろの方の席で携帯電話を片手に動画を見ていました。シャベランカ-先生と、筋子先生も会議に同席しました。

「私たちは、生徒(あなた)たちの自発的な行動を邪魔しないため、会議には参加しません。ご自由に話し合ってお決めください」と、筋子先生が言いました。

「さ~て、これで一時間確保だ」と言って、シャベランカ―先生と筋子先生は将棋盤を挟んで座りました。決して、怠けている訳ではなさそうでした。会議に参加したのは、そよりさん、ユキ、カスミ、私の四人でした。ここあちゃんは、ときどきいなくなるのですが、誰も何も言いませんでした。

「(みんなには見えているのかな? もしかしたら・・・? そんなわけないか)」と、私は思いました。

「ここあちゃん、今日はいないんだね~」カスミが言いました。

「なぜだろう、外出しているのかな?」ユキが言いました。

「おじい様の付き添いで、ナントカナルニア国の大使と会うそうです」そよりさんが言いました。

「(あ~、良かった。みんなに忘れられている訳じゃないんだ・・・)」私は安心しました。

「大使と会うの? ここあちゃんって、そんなに偉いんだ」ユキが驚きました。

「みんなの中で、いちばんお姫様っぽいよね~」カスミが言いました。

「この学園は、ここあちゃんのためのものだからね」そよりさんが言いました。

「!」シャベランカ-先生と、筋子先生が固まりました。

「! あら、ゴメンナサイ。内緒の話だったわね」そよりさんが先生方に謝りました。松柳先生は動画に夢中でした。

「だいたい、気付いてたけどね~」ユキが言いました。

「ここあちゃんと、そよりさんは育ちがいいからね~」と、カスミが言いました。

「あら、ありがとう」そよりさんが言いました。

「だけど運動会でも、ワザとここあちゃんに勝たせる真似はしないのね」私は疑問に思いました。

「ここあちゃんは、周りに気をつかわせ過ぎることが嫌いなのよ。私たちは、自然に振舞っていればいいのです」そよりさんが言いました。

「まっすぐな、お嬢様だね~」カスミが言いました。

「今度の劇で、主役をしてもらうのはどう? 運動会でも、あれだけのお客さんを呼んで、全員にバイト料を払っているんだもの。親族の方々にも、ここあちゃんが主役の劇を楽しんでもらいましょうよ!」ユキが提案しました。

「それは、構わないんだけど、この脚本だと誰が主役なの?」そよりさんが言いました。

「・・・」ユキは悩みました。

「・・・」そよりさんにも、完璧には脚本の内容を理解できませんでした。

「あは~」カスミはご機嫌でした。

「・・・?」私は、脚本の内容が頭に入って来ませんでした。

「じゃあ、あらすじを確認するわよ。第一幕は、浦島太郎が主役でいいのかしら? サルとイヌにムリヤリ鬼ヶ島に連れて行かれる話よね? 鬼ヶ島は実は竜宮城で、育ての親と離れ離れになって、宇宙に飛んで行くかぐや姫の話になっているわ。浦島太郎がかぐや姫になるのかしら?」ユキは内容を確認しました。

「第二幕は、宇宙に向かっている途中に立ち寄った、空中庭園で毒リンゴを食べてしまい、白雪姫として復活する話よ。その後、下半身が魚になる呪いをかけられたから、呪いを解きにいったら、魔術師のおばあさんに声を取られてしまうの。仕方がないから、パントマイムで世界を救う話よね?」そよりさんが続けました。

「第三幕は、そこから怪獣が出てきて、戦うよ。食べくらべで勝ったコユビ姫が成長して親指姫になるよ」カスミが言いました。

「第四幕は、お姫様が、ウサギとカメの競争をご覧遊ばされるの。勝った方を干支に入れる許可を出す話よね。なにこれ?」と、私は言いました。

「・・・ここあちゃんに、浦島太郎とかぐや姫をやらせるの?」ユキが言いました。

「・・・毒リンゴを食べて死ぬ役を、やらせたらダメよね」そよりさんが言いました。

「コユビ姫と、親指姫は出番が少ないよ~」カスミが言いました。

「ウサギとカメの競争を見るのも、主役としては弱いと思います」私は言いました。

「・・・」

「・・・」

「あは~」

「・・・ダ・メ・じゃないかな~?」私は、静かに言いました。

「そうよね。どの役も、ここあちゃんにやらせるわけにはいかないわ」ユキが言いました。

「振り出しに戻りましたね」

「い~よ!」

「ダメなものは、ダメですね・・・」私は言いました。

話がまとまったので、筋子先生に提案しました。

「先生、将棋の最中にすみません。脚本の件なんですが・・・」そよりさんが言いました。

「傑作だろ!」筋子先生が、明るい顔をして言いました。

「私たちが話し合った結果なんですが、先生なら、もっとすごい傑作を書けると思うのです。愛にあふれる少女が、子どもたちを元気づけ、勇気づけ、動機づけて、大きな夢を叶えるお話をお願いします。異世界でも、異空間でも、宇宙でも構いません。壮大なスケールのお話をみんなで演じてみたいです!」ユキが言いました。親父殺しの、キラキラした目でお願いしました。

「! 書けるとも! ライフワークの第二章じゃ~! 十五秒で書き上げて見せるわ~!」と言って、窓を突き破って外に飛び出しました。

「ガッシャ~ん! あ~れ~」筋子先生は、下に落ちてしまいました。

「ここ二階だよ~」カスミが心配しました。

幸い、先生はかすり傷で済みましたが、次の脚本が出来上がったのは三週間後でした。

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