第44話 エメルが仲間に
帰りの船の中、頭の整理ができて落ち着いてきたころに、急激に寂しさに襲われる。いつも一緒にいたサラがいない、隣を振り向き虚空を見つめる。時間の経過とともに感情がじわりじわりとにじみ出てきている。ここまで色々ありすぎて感覚が鈍っていたんだな。ライトボードを取り出しフレンドを見るとサラが立った状態で表示される。サラのことは心配だがギガさんに早く報告しないと。目的地に到着しなかったから事故のことは伝わっているだろうが乗客の安否については知らないはず。あれから結構な日数が過ぎた。もしかしたらサラが先についているかもな。バルトワの船乗り場に到着、ギガさんがいるギルドへ向かう。
「ダン!」
後ろから声をかけられた、姉さんだ。走ってこちらに近づき俺に飛びつくように抱きつく。
「飛空船の事故にお前が巻き込まれていると聞いて気が気でなかった。よかった、無事だったんだ。心配したぞ」
「心配かけてごめん、ようやく帰ってこれたところなんだ」
体を離し今度は肩を掴んで俺に顔を向ける。
「サラは?」
「別れてしまったが無事だよ」
フレンドに登録した彼女を見せる。この様子だとまだサラは戻ってきていないか。話を聞くと姉さんは俺達が出発するのと入れ替わる様にバルトワの街に。そして船の事故を聞く。
「詳しい話はギガさんのところで」
ギルドに行きギガさんを見つける。安堵のため息をつくギガさん。ギルド奥の会議室へ移動し今までにあったことを二人に話した。
「そんなことがな。まさか事故が起きるとは、申し訳なかった」
「いえいえ、こればかりはどうしようもないですよ」
「ということだから別の人間に書類を取りに行かせるよ」
「お願いします」
「しばらくはゆっくりしていてくれ」
ギルドから出て公園のベンチで休む。
「元気がないな」
「強さがあっても全く通じない場合もあるんだと身にしみたよ」
膝の上に置いた拳を強く握る。姉さんが肩を寄せ、手を置いてくれた。
「人間一人ではないから」
いつもこうやって慰めてくれたっけ。
「はは、また姉さんに守ってもらっちゃってるな。守るなんて言っておいてゴメン」
「そんなこと気にしなくていい。ただ姉さんと呼ぶのは気にしろ」
「あ」
人間追い込まれているときは素が出るものだ。ねえさ、じゃなかったエメルと呼ばなくてはな。二人は顔を見合わせ笑いあう。エメルの笑う顔に一瞬ドキリとする。あらためて見るときれいな人だな、今までは姉さんだからとまったく気にしていなかったけど。
「どうした? ほうけて」
「いや」
「PTを組もう」
「ああ」
ボードを使いPTを組む。エメルはアタッカーで格闘家という体全体を使い戦闘をするクラス、装備部位の手が武器と防具の両方を兼ね備える。レベルは10になっていて新規冒険者は騎士団見習いの時に卒業している。そういえばエメルと一緒に戦ったことがなかったな。お互いの力を見るため二人で狩場へ。持っているスキルは四つ。魔物と遭遇、スキルを使ってもらう。スキルを発動、空気を大量に吸い込み一気に吐く。
「リミテッドフレイムブレス!」
まずはドラゴンの代名詞ブレス攻撃。広範囲を焼き尽くす迫力満点の炎のブレス、ドラゴンといえばやっぱりこれだね。威力が高すぎて草や地面が焼け、敵が消し炭に。
「炎鎖!」
次は殴る蹴るの物理の連続攻撃を高速で叩きこむスキル。現在三連撃、レベルが上がると連撃数が増える。
「三身撃!」
三体に分裂する大技。本来のステよりも落ちる、レベルが上がるとステが上がる。このスキルに炎鎖を合わせ、敵をボコボコにしよう! 消費SP4と連発は出来ず、分裂ブレスも無理。ストレングスライズは全員の力がアップ。セカンドスキルは「至炎竜の力」、全員の攻撃力アップ。バフも持っていてどれも攻撃寄りだな。続いて俺の力を見せる。オーバーフォーススラッシュを使い敵を切り刻む。
「聞いてはいたが凄まじいな」
目を丸くしスキルを見るエメル。ゴーディプロテクトを試す。
「速度が上がるか」
予想通り突っ込んできた、抱きしめ止める。制御が難しいからね。帰ってギガさんとラインに来てもらって、良いお店で俺が無事帰ってきた記念とエメル歓迎会。翌日から数日間は観光、街を案内する。おっと、ギャンブルの虫がうずいてきた、自由時間にして酒場へ賭けをしに行く。
「よう、ダン。しばらく見なかったな」
「いやー、大変な目にあってね」
「おう?」
海賊に襲われ大変だったとおっちゃんに話す。もちろん詳しいことは話さず適当に誤魔化しながら。
「そいつは大変だったな」
軽く遊んで宿屋へ戻る。
(義賊の空賊か。対空賊連合は多いに越したことはない。彼らのこと調べてみるか)
朝起きギルドへ行くとギガさんから連絡が入る。
「土の国の書類が届いた」
ギガさんから連絡が入り写真に目を通す。しかしここまで一枚もかすらないとはね。もしかしてエメルとサラの二人しかいないのかも。ソシャゲなら全員いるけどここは違う世界だからな。写真を確認し次々と積み上げ、そして隣の山に。いよいよ終盤、今回もないかとあきらめかけていたその時。
「いた!!」
「わっと!」
発見して今までのうっ憤を払うかのように思わず大声を上げる俺。ギガさんが驚きびくりと体を震わせる。しかしついに見つけた。
「ドワーフの少女、名前はキャイア。覚醒した場所は土の大陸の首都ハナンタか」
ハナンタの街はドワーフが多く住む鍛冶の街として世界的に有名。
「迎えに行ってもらえるか。いややめておいて使者を出す?」
「大丈夫ですよ。ある程度空賊を倒したわけですから今なら安全だろうし」
「私も行こう」
エメルと二人でハナンタの街へ向かうことに。




