第43話 メンテナンス終了のお知らせ
罠を張っていたのは何もあちらだけではない、こちらも念入りに罠を張り巡らせていた。金剛船を餌に見事罠に引っ掛けることに成功。遠距離戦ではかなり不利、なら接近戦に持ち込んで叩く。全船の空賊がこちらに同時に乗り込むという理想的な状態になったがうまくいきすぎて怖いくらいだ。これはギャンブル運を使ってしまっただろうな。マジックストーンサモン、ローディング中走る少女! ローディングと点滅を繰り返す文字、その場で走り続ける少女、ゲームの説明も表示されている。少女はスキルを発動。
「アップデートアフター!」
次元がゆがみ、空賊たちの動きが遅くなる。
「スキルが発動しました、元気な奴から倒してください!」
「ほ、本当に動きが遅くなった。お前たち、いくぞ!」
スローモーションのような動きの空賊、なかには止まっている者も。いくら数がいてもこれでは対応できない。次々と倒されていく空賊たち。アプデ後は重くて動きが悪いなんてことがよくある。最悪止まって動かないとかも。
「こ、ん、な、ば、か、な、!」
言葉も遅くなる。こうして少人数の仲間で空賊たち全てを倒してしまった。空賊を一隻に詰め浮遊石をある程度抜き投棄。そのまま落下していく空賊たち、理解はしているようだが体が動かない、リアクションも遅い。
「やりましたね。船と浮遊石も手に入りましたし」
始めから遠距離船を仕掛けられたり大型船にも動かれていたらこの方法は使えなかっただろうな。こちらをなめてくれたおかげでこれだけの臨時収入を得ることができた。
(被害を出さずにおまけで船と石まで。彼の動きもまるで瞬間移動しているように見え明らかにおかしかった、味方ながら恐ろしい男だ)
「カイさん?」
「ああ、まさか制圧できるとはな。だが問題はここからだ」
「はい。大型船に今の様子を見られました。接近戦は仕掛けてこないでしょう」
まだ本命の大型船が残っている。乗船員はかなりの数、まともにやると近づく前に落とされて終わりか。突っ込んでいっても難しい。速度はこちらが上、追いつかれることはないが向こうは帆船、長期戦だとこちらの燃料が尽きて動けなくなり負け。
「逃げながら策を練るか」
「いえ、大丈夫です。相手の射程に入らない程度に近づいてください」
金剛船を大型船に近づけていく。
「どうした? 臆病風に吹かれたか!」
挑発する敵船長。近づいたらこちらの負けだからな、乗ることはしない。円を描くように、徐々に間合いを詰めていく。
「何をする気だ?」
「船底を撃ち抜きます」
「なっ、無理だ、戦闘用の船は船底を金属で覆ってある、アレを撃ち抜くなんて」
よしよし、そろそろかな。すでに射程には入っているけどそのままだと大型船ごと撃ち抜いてしまう可能性があるからな、もう少し近づいて命中精度を上げたい。大技すぎて調整が難しいんだ。体の前で気を練る様に手を動かす、エネルギーが圧縮され、黒い塊が姿を現す。船底に向かってスキルを発動。
「ありゃなんだ!?」
「ブラックホールジェット!」
一筋の黒い線が船に当たらず下方に飛んでいく。
「へっ、驚かせやがっ‥‥ぐぼっ!」
この攻撃にかすりもしなかったが、その通り過ぎた余波だけで船底は大破。浮遊石は飛び散り、船は真っ逆さまに落ちていく。
「降伏勧告までしてくれたんだ、こちらも手加減はしておきましたよ。うまくやって船を入手したいところでしたがね、そこまでは難しかった」
(手加減だって!? では始めから彼の掌の上に)
戦闘が終わり、報酬も入手して浮遊島に帰ってきた。急いで使者を出し仲間たちを島に戻す。いつもの暮らしに戻る浮遊島。島民全員で大パーティを開く。よーし、飲みまくるぞ! 翌日に俺はこの島を出ることに。船が墜落してサラと別れて奴隷船に乗り空賊と激突か。一気に色々なことが起こりすぎだろ。不幸はいっぺんに来るものなんだな。
「強いのはわかっていたけどまさか勝ってしまうなんて」
リプーが俺を見ながら不思議そうにしている。彼女はまた一般の船員に戻るそうだ。
「君は強い。だが空賊連合はあんなものではない。彼らなぞ髪の毛一本に過ぎない。くれぐれも油断しないようにな」
「はい」
カイさんは空賊を続けていくとの話。もう少し立ち回りや稼ぎ方をうまくやるよと笑みをこぼす。
「それから君に報酬だ」
大量の浮遊石をテーブルの上に置く。
「これは!」
「二隻分の浮遊石だ。このくらいは受け取ってもらうよ」
「では遠慮なく」
大量の浮遊石を入手! 悪いことだらけだったけどいいこともあった。
「ではお元気で」
「ああダンもな」
「またね」
貨物船に乗り近くの街まで。そこからバルトワの街まで戻る。




