第42話 空賊戦
「デザン兄弟との戦闘は聞いたよ、君は強いね、もしもの場合はリプーを頼む」
「‥‥兄さんも一緒に逃げようよ、もうこんなこと続けても」
涙を流し訴えるリプー。カイさんは立ちあがり彼女に近づき優しく抱きしめる。
「今も夢で見るんだ。民たちが悲鳴を上げ血を流し死んでいく様が。それにもう私は手を汚してしまっている。もう戻ることはできない、進むしかないんだ、わかってくれリプー」
長らく空賊として世間一般からは離れてしまった彼。一般人としてやっていくのは世間が許しても自分で許せないといったところか。ただ死は避けられるはずだ、本心としては彼は死に場所を求めているのかもしれない。本来なら悪を裁かなくてはいけなかった立場の人間、空賊という悪に身をやつし復讐のために戦ってきた、彼の精神は疲弊しきっているのだろう。しかし死に救いはない、新たな悲しみを生むだけ。やるか、この兄妹の絆を奴らに断ち切らせたくはない。
「カイさんの真意がわからなかったからここまで黙っていましたが事情は十分理解しました。この戦い、俺も参加します」
「駄目だ、負けて死にゆく戦いに君を参加させるわけにはいかない」
「どのような戦いになりますかね?」
止めようとする彼をよそに強引に話を進める俺。まあ話だけならと折れてカイさんは答えてくれた。
「飛空船の戦いは遠くからチクチクと攻撃を与えていくことが基本だ」
人数と遠距離攻撃が多い方が有利。弓や魔法が主力となる。いくら金属製の金剛船でも十隻以上の攻撃を一度に食らってしまっては破壊されてしまうか。
「普通に戦っては勝てませんね、逃げながらというのは?」
船の機動力がある方が有利ではあるが、当然それも対策をたてられている。
「一隻ずつと考えて釣りだそうとしても向こうが誘いに乗ってこない」
「固まって行動されたらどうしようもないと」
隙を見て網や柵などで機動力を封じてくるだろうとカイさん。そして、動きが止まったらこちらに乗り込んで接近戦。数の違いによりこれも詰み。
「そうだな、向こうの心理としては、勝ち戦だからできるだけ金剛船を傷つけないことでそのまま使いたい、もしくは高く売り飛ばしたいと考えるはずだ。接近戦に持ち込み船員を倒したいはず」
「それならいけるかも」
「いや、無理だろ?」
カイさんに考えた戦い方を伝える。
「そんなことが可能なのか?」
「いけます」
半信半疑ではあるが少しでも勝率が上がるならということでこの案を採用することになった。少量の浮遊石を持たせてくれた。もしもの場合は船から飛び降りろと。
「君は不思議な人だ、本当に勝てる気がしてきたよ」
「勝負は明日になってからですね」
夜のうちに非戦闘員を貨物船に乗せ島から送り出す。
「ダン、兄さんをお願い!」
「わかった」
彼女たちを見送り俺達は朝まで眠り、起きてから戦闘準備をする。太陽がまぶしい朝、広間で皆で食事をとった後、カイさんが出発前に激励。
「最後の戦いになるかもしれない、覚悟を決めろ!」
「おう!」
金剛船に乗り空賊たちが待ち構える空域へ。しばらく船を走らせていると奴らの船が見えてきた、帆船が十二隻、巨大な船が一隻。大型船から船長らしき男が出てくる。大声を張り上げこちらに声をかけてきた。
「よく来たな。義賊にしておくのはもったいねえ覚悟だ、本格的に空賊になって悪の限りを尽くさないか?」
「断る」
「残念だ、それでは貴様らを始末して空賊の繁栄を祝おうではないか」
「させないさ」
戦闘開始。空賊船は横四列の縦三列ときれいに並んでいる。大型船は後方に下がり待機。さてと、どうやって崩すか、まずは様子見をしようと回り込もうと船を動かす。すると彼らはこちらに向きを変え最初と同じような状態に。陣形が全く崩れない、流石に戦いなれているな。賊と聞いてもっと荒い奴らかと思っていたがとんでもない。目の前にいるのは統率の取れた戦士たち。
「遅い! どうなってる!」
「すみません!」
しかしここであちら側に問題が発生、後方の二隻がもたつき隊列が崩れ出す。怒り狂っている船長、何か問題でも起きたか。これは好機と一旦背を向け逃げ出す。すると二隻以外がこちらに近づいてきた。
「カイさん」
「ああ」
二隻が孤立したのを見計らって急旋回し最大限まで加速、空賊船を回り込んで抜き去り後方の二隻に近づいた。まずはこの二隻から。二隻は並んでいるが相変わらずもたついていて、しかも逃げようとこちらに背を向けた。攻撃もしてこない、戦意喪失? まあいい、さっさと二隻を潰して他の相手もしないとな。こちらは強気に二隻の間に割って入って近距離戦を仕掛けようと船を移動。もう少しで追いつくというところで、空賊船の船尾から爆発音が。そして何重にも張られた網が飛び出し、隣の船尾に引っ掛け固定。金剛船は吸い込まれるように網の中へ。
「罠か!」
網が船体前面にかかってしまいこのままでは止まってしまい足が死ぬ、突き破ろうと全速前進、しかし網は頑丈で突き破れず、金剛船は動けなくなり完全に止まってしまう。勢いで二隻はぶつかり帆が折れ行動不能になったが、空賊の船員たちは皆無事。船内から湧き出すように空賊が出てくる。甲板に出るといつの間にか近づいて来ていた他の空賊船がこちらに乗り込もうと多数の梯子をかける。空賊船十二隻すべてが接近戦を仕掛けてきた。
「船長の首を取った奴がこの船をいただけるとよ、お前ら気張れ!」
「とんでもねえ額になるな、俺がもらう!」
「俺は船長をしてみたかったんだ、やるぜ!」
声を上げながら凄まじい数の空賊が船に押し迫ってくる。
「かかってくれたな」




