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高校入ったし、とりあえずリア充目指してみる  作者: 雨夜かおる
暇人の退屈しない夏休み編
68/191

「憂さ晴らしに付き合ってもらいます」

 さて、ここからが勝負だ。今までの緩みを断ち切るように月夜は気持ちを切り替えた。

 朝日月夜は告白するという経験がない。反復練習や実体験を元に結果を出してきた月夜にとって、これは大きなビハインドになる。告白されたことなら、覚えていられないくらいあるのだが……月夜の心を動かせなかった彼らの戯言など、参考にする価値もないだろう。


 こういう面で頼れる友人がいないことが悔しい。翠に頼っても良かったが冷やかされるのが目に見えている。よって誠に遺憾ながらネット情報に縋るしか方法が残されていなかった。高校生にもなって『告白 仕方』で検索かける自分の姿はかなり痛々しいと思う。同様に検索結果も痛々しかった。なんだ、『絶対にフラれない告白の仕方~』とか。そんなものが存在していたら誰も困ってないっつーの。


 しかし、情報も集まれば有益なものが見つかる。特に『異性を二人きりで花火大会に誘えたら告白はほぼ成功したようなもの』という意見は実に勇気づけられた。月夜と大樹がそのケースに当てはまるかどうかは知らないが……。


 閑話休題。


 最大の結果を求めるなら、まず雰囲気がやはり大事だろう。自分なりに告白までの流れはイメージしてある。問題はそこにもっていくまで、いかに大樹を飽きさせないか、だ。会話を回すのは苦手だ。五月にデート(?)したときは目的が明確だったから困ることはなかったが今日は違う。あくまで月夜のわがままに、大樹を付き合わせているだけなのだ。月夜には大樹をもてなす義務がある。



 ほどなくして駅から花火大会会場にたどり着いた。華やかな浴衣を着た女性たちや両親の手を引いて走り出そうとする子供、そしてカップルの姿が多く見られる。所狭しと出店が列を連ね、宙に吊るされた提灯が優しく暗闇を照らし出す。まさに祭りといった雰囲気である。その中で、年齢の割に不相応にはしゃいでいる男子の姿があった。


「え、え、ちょ、やばい。なにこれすごい楽しそう」


 篠原大樹である。

 まるで童心に帰ったかのように、時々月夜を置いてけぼりにしつつ大樹は目を輝かせながらうろちょろと様々な店を覗きこむ。わたあめ、金魚すくい、射的など催しとしては定番のものばかりだが、大樹はそれらひとつひとつに吸い寄せられていく。


 予想外の事態に月夜は唖然として眺めていた。


「篠原くん……もしかしてこういうところは初めて?」

「え!? そ、そんなことは……。いえ、すみません。久しぶりなだけです」


 月夜の前で変な見栄を張ろうとしたが、意味のないことだと悟って大樹は諦めた。


「もう何年もこういうところに来てなくて……ちょっとテンションが上がっちゃいました。すいません」

「別に謝ることでもないけど」


 出店の商品の質なんて(たか)が知れているというもの。その上、利益を追求しようとして割に合わない値段に跳ねあがっている。いくら祭りの空気に当てられたとしてもドライな月夜は購買意欲をそそられない(一体何のために祭りに参加しているのだという疑問はもっともである)。

 しかし、相好を崩し無邪気でいる大樹を見ていると、存外悪くないような気がしてきた。理詰めで楽しませようなどと考えていたさっきまでの自分が馬鹿らしい。


「桜庭先輩みたい」

「紅葉先輩ですか? まさか、そこまで子供っぽくはないでしょう」


 言った瞬間、誰かがどこかでくしゃみをしたような気配を感じ取ったが、きっと気のせいだろう。ちなみに紅葉はクラスメイトたちとこの会場に来ていた。神谷は何をしていたかと言えば、なんと会場まで誘導のバイトとして駆り出されていた。今度は二輪免許をとるつもりでいるようだが、それで紅葉をほったらかしにしていたら本末転倒である。しかし、それは月夜たちには関係のない話だ。


「何かやりたいのある?」

「射的とかやってみたいですね!」


 大樹に射撃のセンスなどあるはずもなく、的から弾が逸れまくっていた。見かねた月夜は苦笑しつつも、涼しい顔で次々と標的を撃ち抜いていく。屋台の店主は絶句し、顔を真っ青にした。大樹は月夜の手腕に感動しながらも、店主に同情していた。ひとの良さそうなおじさんが、泣きそうな顔で景品を差し出してくる。


「いる?」

「いえ……、俺はいいので、センパイの欲しいものを取ってください。余ったものは荷物になっちゃうので返しましょう」

「うん、そうする」


 そう言ったときの、店主の安堵した顔が忘れられない。握手まで求められてしまったが、月夜には意味が分からなかった。

 しかし、月夜の手腕がこの程度のはずはなかった。次に行った金魚すくいでは金魚を捕り尽くし、ヨーヨーも同様だった。その繊細さは型ぬきでも発揮されたし、挙句の果てに糸くじが豪華賞品には繋がっていないことを見抜き、その店主をお縄にかけ警官に感謝されるという、月夜にとっては割と日常的、大樹にとっては非日常的な出来事が繰り広げられた。


「……センパイ、もうゲーム系はやめましょう。それよりお腹空きませんか?」

「篠原くんがそう言うなら……。あ、そこのソースせんべい、ルーレットとダーツの矢で枚数が決まるみたい。……五十枚、食べられる?」

「五十枚ってあのすごい小さいところですよ!? どんな動体視力ですか! ……十五枚のところ、当てられます?」

「やってくる」


 軽快に向かっていった月夜は、数分後、きっかり十五枚のせんべいを持って戻ってきた。あんな大きくて狙いやすい部分を外す道理がない。大樹が望むのであれば五十枚も撃ち抜くつもりだったが……。帰りに挑戦してみようか。




 と、その時、口笛を吹いたような甲高い音が響き渡った。その場にいた皆が、揃って空を見上げる。暗闇へ高く昇っていく閃光は、やがて雲ひとつない夜空を覆い尽くすように大輪を咲かせた。それをきっかけとし、次々と上空へ花火が打ち上げられる。

 赤や緑や紫、様々な色の花があり、ハート型や惑星を模した形もある。ハート型の花火にちょっと動揺した。視界いっぱいに広がった光の玉が、小さい火の粉に姿を変えて降り注いでくる。何故、人々が毎年懲りずに花火を見るのか、少し理解出来る。『誰か』が一緒なら楽しくて当たり前だ。好きな人が隣にいるなら特に。


 しかしこれだけ近くで見ていると、見た目の派手さよりもわずかに遅れてやってくる衝撃音の方が気になってしまう。何の比喩もなしに、心臓を揺さぶり耳をつんざく程なのだ。もう少しここから離れてもいいだろうか……。


「すごい……」


 ぽつりと呟かれた一言に、月夜は足を止めた。大樹は口を開けたまま、空の光景に釘付けになっている。今のこの一瞬の光を余すことなくその目に焼き付けようとしているのが分かる。屋台ひとつひとつに浮かれる大樹のことだ、おそらく花火を見るのも滅多にないことなのだろう。しばらくそっとしておいてあげよう。この花火、あと一時間くらいは途切れないと聞いているが。まあ、そこは大樹の横顔でも眺めて気長に待っていようと思う。



「すいません、時間を忘れてしまって……。立ちっぱなしで疲れていないですか?」

「これくらい大丈夫。篠原くんこそ疲れてない?」

「平気です」


 とは言ったものの、若干足が痛いような気もする。二人は座れる場所を求めて歩を進めた。さっきの花火で既に満足したのか、駅に向かって帰っていく人々と多くすれ違う。


「花火ってこれで終わりですか?」

「まだ、あと一回だけあると思う。さっきよりは短くなるけど」

「そうですか」


 直後、大樹の瞳がまた輝き出した。あ、余計なことを言ったかもしれない。大樹が楽しんでくれているのは嬉しいのだが、そろそろ月夜も『目的』の準備を始めたいと思っていたところなのに。


 月夜は再びネットから得た知識を想起する。告白するための絶対条件は二人きりになることだ。ネズミの国では大観衆に見守られながら想いを伝える例もあるが、それは一般的ではない。というか、そんなこと恥ずかしくて出来ない。

 ともあれ、これはそんなに難しくはないだろう。実際今二人でいるのだし、このまま人のいなさそうな場所へ大樹を連れ込めば……。思考が危なっかしいのは認めるが、なりふり構ってられない。


 まだまだ多くの人で溢れ返っているこの場所で、空いているベンチを見つけるためにかなり歩かされたが、ほどよく人気(ひとけ)のないこの場所は告白にはおあつらえ向きだ。


「篠原くん、実は話が――」

「あ、ここすごい煙ですね~」

「!?」


 何の気なしに大樹が漏らした一言に、月夜は慌てて辺りを見回した。大樹の言う通り、周囲に煙が立ち込めていた。多分、屋台ではなく花火によるものだ。火薬の臭いが鼻につく。こんな状態を見逃すとは、自分で思っているよりも緊張しているのかもしれない。


 まずい……か? 二人きりになるのも大事だが場所だって大事だ。こんな煙くさいところで告白して『うわ、こいつ空気読めねえな』と思われるのは嫌だ。すぐさま移動したかったがそれも不自然な気がして、大樹と談笑することにした。会話の内容はまるで頭に入らなかった。それでもじっと耐えていれば火薬臭さは次第に薄れていって、綺麗な空気と入れ替わっていく。


 これならいける!


「あれー? 月夜じゃなーい? こんなところで何してるの?」

「!?」


 今度は何だ!

 月夜が顔を上げるとそこには月夜のクラスメイト、天野翠だ。その姿を見るのは終業式以来だ。彼女の後ろに何人か見知った顔ぶれがある。同様に月夜のクラスメイトだった。

 翠からは花火大会の誘いを受けていたが、丁重に断らせていただいた。返信内容は『忙しいから』と。


「こらー? 月夜? 私があれだけ誘ったのに断っておいて、なにゆえそんな気合いの入った格好している……わ、け……?」


 翠の双眸が大樹を捉えると、それまで不機嫌だった翠が一瞬で表情を緩ませる。するりと小さな体を駆使して月夜の隣にまで躍り出ると肘で突いてきた。


「おや~? んん~? 月夜さ~ん? ナルホドナルホド、篠原くんと一緒ならそう言えば良いのに! 忙しいってアレね! 篠原くんを口説くのに忙しいってそういう意味ごばあっ!?」


 ゴン! と鈍い音が響く。大樹からはよく見えなかったが、気が付くと翠が仰け反っていた。……何が起きたかと言えば、月夜の拳が翠の頬にめり込んだだけだった。


「あまりからかわないで、翠」

「いや待って!? 照れ隠しにしてはやり過ぎじゃない!? 完全に今殴ったよ!?」

「ちょっと軽く叩いただけ」

「グーだったけど!」


 納得いかない翠は頬をさすりながら文句を言うが、それを掻き消すように翠の後ろに控えたクラスメイトが黄色い声をあげる。


「朝日さんこんなところで何してるの?」「一緒に回りたかったのに!」「隣に座ってるのって誰?」「あれ、その人どこかで見たことあるような……」「バドミントン?」「あっ、たまに私らのクラスに来る一年生じゃん!」「どういうこと!?」「部活の後輩ってことかな」「なあんだ、そういうこと」「でもどうして二人きり?」「え?」「ん?」「やっぱりデートじゃね」「はあっ!?」「あの朝日月夜が!?」「よりにもよってこんな地味な男を……ひいぃいい!?」


 大樹のことを地味と言った彼女には後で制裁を加えるとして……。少しうるさくなり過ぎた。これだから知人は苦手だ。勝手に私に近づいてきて、煩わしく騒ぎ立ててくる。そういうのはやめてほしいのに。

 静かに席を立つ。翠が不安げに月夜の顔色を窺ってきた。


「あ、ちょっと月夜……」

「それじゃ、翠。また学校で」

「う、うん、ごめんね」


 翠にそんな顔をさせたかったわけではないのに、そうさせてしまったのは少なからず態度に出てしまったからかもしれない。萎縮した翠から、他のクラスメイトたちにも悪い空気が感染していく。水を打ったように、誰もが押し黙る。

 ああ、嫌だな。そんな目で私を見ないでほしい。逃げるようにして月夜はその場を後にした。その背中に翠は手を伸ばしかけたが、月夜がそれに気付く素振りはなかった。



「センパイ……センパイってば!」


 大樹の声が聞こえる。月夜はそれでようやく我に返った。あれだけ激しかった喧騒が嘘のような静けさだった。それもそのはずで、月夜は既に祭りの会場から離れてしまっていたのだ。近くにいるのは大樹だけ。遠くの方で炸裂音が響いている。ああ、花火か。月夜はぼんやりと考えた。


「どうしちゃったんですか、急に。天野先輩も置いてきちゃうし。他のクラスメイトの人たちも、心配してましたよ。怒っちゃったんじゃないかって。なんとかフォローしてきましたけど」

「ごめんなさい、ありがとう」


 ふと思い出したように月夜は口を開いた。


「花火、観に行く?」


 大樹はゆっくりと首を振って月夜を見つめた。


「いえ、その前に話しておきたいことがあるので」

「話したいこと……?」


 一瞬、期待しかけてしまう。が、月夜は頭を振ることでその幻想を追い払った。きっと月夜がしたがっている話と同じではないはずだ。自分と相手の想いが一緒なんて、滅多にあることじゃないはずだから。


「最近のセンパイ、変ですよ」

「そ、そう?」


 まさかそういう切り出し方だとは思わなかった。ド直球過ぎて上手く躱せなかった。


「あんなに一生懸命バドミントンをしてきたのに、今では全然そんなところ見えませんし! 合宿だって、結局ずっと指導側になって自分の練習をしない。俺だけじゃなくて、みんなおかしいって思ってますよ。朝日月夜はそんな人じゃないのにって」


 直後、月夜の眉間に皺が寄った。大樹と言葉を交わしている最中、月夜がこんな気分になることはなかった。大樹といるとき、月夜はいつでも幸福を感じている。笑ったり怒ったり不安になったりしながら、そんなやり取りを好ましく思っていた。


 だが今の言葉は。


 的確に鋭利に不愉快に。


 月夜の琴線に触れた。


「それ、どういう意味」


 こんなに低い声が出たのはいつ振りだろう。少なくとも大樹に聞かせたことはなかったはずだ。大樹は呆気にとられて目を白黒させている。


「え?」

「朝日月夜はそんな人じゃないって君は言った。では、どういう人物像が朝日月夜としてふさわしいの」


 畳み掛けてくる言葉には全く温度がなかった。感情に任せて言葉を紡ぐなんてみっともないことだと自分で思っているが、どうしても抑えが効かない。おびえ出している大樹を見てもそれは変わらなかった。


「それはだから……」

「何事にも一生懸命な努力家で己を高めようとしている? その上勉強もしていて文武両道を実現している? おまけに可愛い。完璧で憧れの先輩だ。……こんなところかな」


 大樹が自分のことをそんな風に思っていることは、なんとなく察しがつく。良くも悪くも純粋な後輩だ。自分より優れた人物を特別視しやすい。それは彼が他の上級生達と話しているところを見れば明らかだ。彼は目上の人間に対して礼儀を払い敬う。彼と話して気分が良くなる人は多いだろう。自分だって例外じゃない。


 でもね、篠原くん。よく考えてみて。そんなの、生まれるのがほんの数年早かっただけなんだよ。姫川真琴も相馬遥斗も神谷蒼斗も村上咲夜も、みんな、あなたと同じで普通の人間よ。


「自惚れとは言ってほしくない。だってみんながそう言うから。みんなが勝手に、そんなイメージで接してくるから。そういう目で見てくるから、仕方ない。私も最近まで自分で自分のことをそう思っていた。勤勉に生きることは美徳で、そういう生き方をしている自分は誇らしい存在だと、そう……思い込んでいた」


 これだけ饒舌に話すことは滅多にない。思いつきで口にしている部分も多々あるが、後になっても違和感がないということは、きっとこれは朝日月夜の本心なのだ。言葉にしてみることで初めて認識できた。

 月夜は自虐的な笑みを浮かべた。


「けど、咲夜が気付かせてくれたの」

「咲夜先輩?」

「そういう反応が返ってくるということは、本当にあのとき何も聞いていなかったみたいね」


 あの合宿の日々をもうずっと昔のことのように感じる。けどあの夜のことがなければ、重大な見落としをしてしまうところだった。


「私は何かを頑張ったつもりなんてない。ただ、自分がその時にしたかったことをしてきただけ。自分勝手な人間なの。だから……変なイメージで私に期待するのは、やめてほしい」


 言いたいことは全て言い切った。強張っていた体からふっと力が抜けて、両腕がだらりと下がった。こんな話をしている最中でも、花火は空気を読むことなく打ち上がりその轟音を響かせていた。二人の沈黙を埋めてくれるのは、それだけだった。


「俺は――」


 大樹の声は掠れていた。月夜の言葉を受けて、大樹が何も感じなかったはずはない。幻滅したり失望したりした部分もあったかもしれない。しかし、たったこれだけのことで月夜を見限ってしまえるわけもなかった。

 大樹は努めて笑顔を作った。上手く出来ずに少し歪になってはいたが。


「俺はバドミントンが好きです。バドミントンに携わっている人が好きです。一緒に頑張ってくれる人が好きです。センパイはちゃんと頑張っています。中学のときからずっと、卒業してからもあなたに憧れて、あなたを目標にしてきました。俺はセンパイみたいになりたいってずっと思ってましたし、今でも思っています。だから、俺はそんなセンパイが――」

「篠原くん」


 月夜は一歩前に踏み出した。大樹のすぐ目の前まで近づいた月夜は彼の耳元に囁いた。ちゃんと、大樹が聞き間違えないように。はっきりと、自分の気持ちを言葉にして余すことなく伝えるために。


「バドミントンが楽しいと思ったことは、ただの一度もなかったよ」



「夜分遅くに失礼します。藍咲学園の朝日月夜です」

『おおっ、朝日さんか! まさか本当に電話が来るなんて!』


 電話の相手は六花学園で女子バドミントン部のコーチをしている男だ。六花学園はバドミントン以外にも多種多様なスポーツで実績を残している学校であるが、さして興味を抱いたわけではなかった。それなのに今こうして言葉を交わしているのだから、世の中は不思議なものだ。連絡先は前に会ったときの名刺に書かれていた。


『例の件、考えてくれたかな? 今夏休みだし、転入するなら丁度いい時期だと思うけど!』

「いえ、それは流石に……そこまでは出来ないんですけど」

『そっかー、残念だなー。でも藍咲さんは頭いいもんな! 言っちゃなんだがウチは馬鹿高校出し! ガッハッハ!』


 さっきから妙にテンション高いのが癇に障る。ささくれた感情が爆発しそうだ。

 月夜は咳払いをして、少し高めの声音でその願いを口にした。


「それで急な話ではありますが、もしご迷惑でなければそちらの学校の練習に私も参加させて頂けませんか? 六花の選手と対戦したくて」

『ええっ!? ほんとに!? いいよ! むしろこっちから頼みたいくらいだし、きっとウチの部員も皆喜ぶよ! これはあれかな? この合同練習の結果次第ではウチに入ってくれたり――みたいな展開!?』

「さあ、どうでしょう。考えてみますけど、とりあえず六花には――」


 月夜はそこで歪な笑みを浮かべた。


「憂さ晴らしに付き合ってもらいます」


これにて、夏休み編を終了します! いやあ(期間的な意味で)長かったなあ……。

更新は間隔あけちゃ駄目ですね。次回から文化祭編をやる予定です。

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