第99話「長もなりたい龍神族」
全員におおざっぱな説明をする
ニールが帰って来るのを待って試して
予想通りなら間違いなく龍神族のみ認証するドア
ってことになる
そう考えるとここは元々龍神族が居た町なのだろう
だからサイズも人間サイズの建物になっている、ってことか
「そういえばわしの娘が龍神族になったと言っておったが
人化とは違うのか?」
長に一通り龍神族のことを伝える
「ふむ、先祖返りか
大昔は人と同じなりをしていたので
人化が出来たのかもしれぬの
ところでどうやったら先祖返りできたのじゃ?」
「【命名】したら結果こうなっただけなんだけどね」
「それではわしにも【命名】をしてくれぬか?」
あっさりとした申し出に思わず訊き返した。
「なんですと?」
「長く生きておると退屈での
人化してもいいのじゃが
新しい力を貰えるならそれも楽しそうじゃしの
そもそもわしの娘がその強さじゃと
このままでは子のほうが強いかもしれぬし」
「そりゃそうだけど、そんな安易に良いわけ?」
「いいのじゃいいのじゃ
今回の騒ぎがなければ普段はどうせ寝てるだけじゃしの」
「ニールに確認しては?」
「あ奴に聞く必要なかろう」
左様ですか
「大変失礼ですが長の性別は?」
「人がドラゴンを見ても雄雌がわからんのか
やれやれ、少し待っておれ」
そう言うと目を閉じた
徐々に体が縮んでいき、シルエットが人のサイズになった
「とりあえず」
私は言った
「誰か予備のメイド服持ってきてくれるかな?」
長は女性だった
メイド隊2名が走って装甲車に向かったので
その間、長に背中を向けたのだが
「なんで明後日を見ておる?」
不思議そうに長に聞かれる
「一糸纏わぬ妙齢の女性を見つめるのも如何なものかと」
「ぬ?
わしらは普段からなにも身に着けておらぬぞ
ドラゴンの裸はよくて人化での裸はだめというのは
おかしかろう?」
「ごもっともでございますがね、年齢問わず女性が裸じゃ目を逸らすよ」
一応大人で自称ジェントルマンですから
しかし、言うことが母娘共々一緒ってのは種族の違いかねぇ
「旦那様はアヤノに怒られるのが嫌なのじゃよ」
ルカが自説を説明する
「わしの娘以外にも番が居るのかや?」
ちょっと怖そうな真顔でこっちを見てる
「いや、番ではありませんが?」
クールに否定をするも
「じゃが、おぬしの周りはおなごばかりなのじゃろ?」
「たまたま女性が多すぎるだけで、ハーレムじゃないよ」
「「「はーれむ?」」」
みんな一斉に聞き返す
「そこに食いつくんじゃありません!」
「まあ、強き雄ならばどれだけ番がおっても問題なかろう
それが群れを率いる者じゃ」
現代地球の人間社会ではごく限られた
一部の話だと思いますけど?
「で、じゃ
わしに【命名】はしてくれぬのか?」
うぅむ
人型からドラゴンへ戻れなくなることは間違いないが
それ以外にデメリットがないかは
全部検証してるわけじゃないことも伝える
二人とも龍神族化して2、3日程度
なにか弊害があってもおかしくはない
伝えると長はかんらかんらと笑いながら手を振る
「なに、わしらはそうそう死ぬこともなければ
多少痛いことがあっても時間が過ぎれば元に戻る
それより長き生で見ることがなかった
龍神族になれるのじゃったらそちらのほうが面白そうじゃ」
!!!
「あのさ、デメリットかもしれないことに
今更だけど気が付いた」
「なんじゃ?」
長とシャールカーニ、交互に見て話す
「ドラゴンは長命、それこそ何万年単位で生きて
寿命があるかもわからないって言ってたよね?」
「そうじゃ、長もその先代もそのまた先代も
探せば生きておるかもしれぬのじゃ」
「まあ、わしらの長い生じゃと人の世は
あっという間じゃの」
やっぱりね
「だとすればさ、龍神族が今現在
一人も居ないのってどうよ?」
「「あっ!」」
二人が声を上げる
「この建物、さっきルカにだけ反応して開いた
少なくともこれを作った時にはここに龍神族が居て
使う立場にあったということだよね、多分」
二人とも頷きながら聞いている
「ドラゴンは龍神族が世代を重ねて今の姿になった
人化はその名残という
なのに今はドラゴンですら見たこともない
口伝でも伝わってない、そうだよね?」
「そうじゃの、少なくともわしは聴いたことがないの」
長の言葉にルカも肯定する。
「ドラゴンが主流になってある程度増える以前には
居なくなっていたってことだろうね
ということは、龍神族には個としての寿命、
もしくは種としての限界がある可能性が
否定できないってことになるんだよ」
ルカに向き直り
「すまない
名前をつけることで
君の寿命を作ってしまったかもしれない」
頭を下げる
「なーにを言っておるのじゃ、旦那様!」
背中をばしばし叩かれる
「我は旦那様たちに逢っていなかったら
こんな面白いことをしておらなんだのじゃ
終わりがなく、毎日ただ好き勝手に無法に暴れているより
終わりがあっても新しいことをして
楽しい方がいいに決まってるのじゃ」
ギザ歯丸見えの満面の笑みでそう言ってくれる
「ありがとう」
「こちらこそなのじゃ」
「わしの娘、いやシャールカーニか
龍神族になって楽しいのかや?」
長がそう聞くが
「まだ数日じゃがいろんな事ばかり起きておるのじゃ
此度の話も旦那様が居なかったら
里に戻っておらぬじゃろうし
龍神族のことも知らぬままだったのじゃ
楽しくないわけがないのじゃ」
胸の下で腕を組む
「わしの娘の旦那様
改めて【命名】していただきたいのだが頼めるかの?」
「いいのか?」
「もう何十万年、それこそいつから生きているのかさえ
微かな記憶にしか残っておらぬ
それだけ見て来てもこんな出来事はなかったし、わしの娘が生まれて数千年
人化もできぬ未熟者じゃったがそれが今や龍神族となり
あのような笑い顔をして楽しいという」
ふと周りを見渡し
「わしの娘が継がずともわしらの里はそうそう困らぬ
他の里もそうじゃが、むしろわしらもいろいろ
新しいことをしてもいいのではないかのう
此度の襲撃もいい機会じゃ
龍神族になりわしらが強くなってそれでもかなわぬば
ドラゴン族の終わりも近いということじゃろうしの」
「はい?
“わしらが強くなって”ってあっさりおっしゃいました?」




