第9話「魔法と魔術、のちサポートシステム」
「名前が無いと、いろいろ不便ですよね?」
後輩がそう聞いてきた
「仕事で名前を知らない人と話をすることはあるけどさ
概念そのものが無いなんてお互い未経験だよね?」
それを聞いて彼女は大きく頷いた
「君らは普段、他の人を呼ぶ時はどうしていたのかな?」
3人の顔を見回して聞いてみる
「あのー、とか声を掛けたり、肩を叩いたりとかで・・・・・」
ああ・・・・・私もつい、天を仰いでしまった
「私は賢者様、と呼ばれていました」
肩書くらいしか、個を表す呼び方が無いのか
そういえば・・・・・
「ちなみに、この【世界】には呼び方があるのかな?」
やっぱり3人はキョトンとしている
「やっぱり、無いの?」
恐る恐る、聞いてみた
賢者が答えた
「セカイ、と言うのは、女神様が管理している土地
と言うことでしょうか?」
「海とか空とか、地中とか含めて全部で【世界】と言うんだ
私ら二人が居たところは【地球】という呼び名の世界
というか土地だったんだよね」
「なるほど
おっしゃる全てをまとめて表す呼び方は特にありませんね」
「さっきベッドを作ってくれたけど
そういった品物の【名前】、ってのはあるんだよね?」
「ベッド、とは?」
賢者は不思議そうに首を捻った
「これの名前、なんだけどね」
そう言いつつベッドを軽く叩いてみせる
少し間を置いて、はたと気が付いたような表情になり
彼女はこう答えた
「魔術は創りたいものや、やりたいことを思い浮かべると
頭に降りてくる魔術構文を唱えているだけで
内容までは理解できていないのです」
おぅ、そういうパターンか
「魔術と魔法、って違うものなの?」
「魔法は・・・・・そうですね
例えるなら息を吸う、歩くのと同じ感じで
魔素を使って火を熾したり風を送ったりすることです」
「へぇ~、使えたら家事とかに、とても役立ちそうですね」
後輩がこちらを見て同意を求める
確かに便利そう
「特定の手順を取ったり魔術陣に魔素を込めることで
魔法の大規模なものや特定の奇跡を起こすのが魔術です」
「なるほど、直感的に使う魔法と
考えたり技術が必要な魔術、って感じですかね?」
流石に魔法少女を目指してたからか、後輩は理解が早い
「ちなみに、私の使った先程のは魔術になります
女神様に、私の使える範囲の魔術陣を予め
体に刻んでいただいたので、詠唱短縮はしていますが」
詠唱を短縮する方法もあるとは、流石ファンタジー世界
「特定のポーズと魔術陣で
サブルーチンを呼び出して
実行、それに魔素を込めると
魔術が起動するって感じかな」
後輩に負けじと、私も自分の考えを確認しようと尋ねた
「さぶるーちん、と言うのは良く解かりませんが
おおむねそう考えていただいて結構です」
そうだよね、流石にプログラムあるわけないよな
それでも流石賢者様
全く知識がない私達にも
一発でわかるほど簡単に説明してくれる
サポートを頼んでなければ
こんなスムーズに理解できただろうか
『理解が難しければ、追加説明させていただきますが?』
唐突に声が聞こえてきた
いや、正確には聞こえたと言うより
脳が理解した、と言うべきか
隣にいる後輩はなにも反応していないから
彼女には聞こえてないようだ
どこの誰だ?
視界内には私以外後輩を含む4人しかいない
ただ、この声は女性、しかも聞いたことが無い声だ
『驚かせて申し訳ありません』
律儀に詫びられた
『お二方のためにと女神様がご主人様専用に創った
【サポートシステム】です』
JCが言ってたサポートシステムだよな?
話までできるのかよ
「はい
ご主人様の脳の未使用領域にインストールされています
また、女神様からのご配慮で、全ての事象が書かれている
【世界書庫】が使えますが
運用はサポートと同時に私に命じられました』
アカシック・レコードって全部書かれてる、ってあれか?
・・・・・だったら私ら、要らなくないか?
『ようやく定着し、ご主人様とパスが繋がりましたので
遅ればせながら、ご挨拶させて頂きました
以後、よろしくお願いします』
よく考えたら世界書庫って奴
使えるなら知識を教えるためにつけてもらった
【賢者】と役割、かぶってない?
『ご説明いたします
この後、更に別の人格がご主人様の言う「後輩」さんにも
インストールされ運用開始されます』
そうだよね
私だけだと不公平と言うか、困ることも多いだろうし
『賢者と私、そして後輩さんのサポートシステムの3者で
各々意見や考えを持っての討議と検討が可能となります』
どこぞの三賢者様システムかよ、と思わずツッコみたくなる
『重要事案や想定外にも出来る限り女神様に頼らず
対処可能になるようにとのことです』
それって
JCが「返事しないかも」って言ってた代わりってことか
視線を感じて横を見ると、後輩がこっち見て微笑んでる
「先輩も聞きました?【世界書庫】!
脳内にサポートシステムですって!
魔法少女どころか、まるっきり賢者ですよ賢者!」
わぁ~!と声を上げて走り回り始める
まるっきり子供じゃないか
余程嬉しいらしい
3美女に脳内の会話は聞こえて無いのだろう
頭に大きな?マークが浮かんでいそうな顔をしながら
立ち尽くしている
『3人ともご主人様方
お二方の詳細を知らされていないのでいろいろと知りたい
でも、お二人の会話に割り込んで主に聞くのは失礼
そう思ってずっと待っているようですよ』
主ってなんだよ、主って
後輩に手招きをすると
彼女も同じように言われたみたいだった
「せっかくですし、自己紹介しておきますか?」
「そうだね」
でも世界観が違うから、どこまで通じるのか?
いや、それ以前に今、気付いたけど
3美女、めっちゃ【日本語】で喋ってるよね??
一体何がどうなってるんだ?




