第7話&第8話「あっという間に知らない世界 2 ―ケーキセット?―」
「絵に描いたような異世界モノ・・・・・」
そう呟き、天を仰ぐ後輩
その天すらどこまであるかわからない高さで全部白一色
「現状がそんなレベルだと
全部確認してたら切りがなさそうだね」
時間をかけても多分どうしようない現状に、少し戸惑う
でも、あれだけ”魔法があるファンタジー世界”に
喜んでいた後輩を楽しませないのも、可哀想だよね
現実を受け入れて楽しく過ごすためだ
そのためにもフォロー体制を追加確認しておこう
「サポートの3人で対処できないとか
回答が出ないものはあなたに直接聞けるように
できないでしょうかね?
って言うか管理者であるあなたを
なんと呼べばいいのでしょう?
やっぱり神様ですか?」
『君が思ってるJC、ってのでもいいよぉ』
JCがそう答えると、後輩が凄い顔でこちらに振り返った
「なんでJCなんです?」
「だってJCに見えたんだもの、最初に見た時にさ」
肩を竦めて、悪びれず返す
『ボクが若くて可愛く見えたんだよねぇ?』
うんうん
そういうことです、はい
なんか
横にいる後輩の視線が痛いんですけど?
『だからさ』
JCが何度目か、身体を向き直す
『君らがJCなり神様なりぃ、ボクのことを思い描いてぇ
強く念じてくれれば届くかもねぇ
ただぁ、届いても返事しないかもだからさぁ
あんまり当てにしないでくれよぉ?』
伝書鳩かい?ちゃんと対応してちょうだいよ!
『一応ねぇ、3人はこっちの【世界】のありったけの
知識と知恵と能力を持ってるからさぁ
それで創意工夫してねぇ』
その3人、挨拶すらまだなんだけど?
『ということでぇ、君らに育ててもらう【世界】に送るねぇ
そうそう、【世界】にも名前がないからさぁ
そのうち君らが考えてくれるとありがたいよぉ』
また手をかざす
少しずつ掌の前に、暖かい光が球状に広がっている
それが徐々に大きくなっている中、JCが続けざまに
『期間は3年だよぉ
ちゃんと住まいも用意したからさぁ
そこを拠点にしてぇ世界に変化を与えてほしいんだよぉ』
徐々に光が強くなる中、そのままこう続けた
『あとは体が資本だからさぁ、ちゃんと休みは取ってねぇ
そうそう、拠点をボクが用意しておいたからぁ
まずはそこで生活すれば安心だよぉ
でもぉ本当に困ったらぁ、ちゃあんとボクを呼ぶんだよぉ』
さっき返事しないかも、って自分で言ってたじゃん!!
『あ、これは大事なお願いだよぉ
以前、君らの世界でおねえさんに食べさせて貰った
【けーきせっと】ってやつを絶対に作って欲しいんだよぉ
これだけは!ボクからの切なる願いだからぁ』
「え?ケーキ?」
後輩がすぐ喰いついた
いや、大事なお願いがケーキセット作れってか?
・・・・・
もしかして警戒しなくてもいいくらい平和な世界なのか?
しかし、そもそもどんなケーキで
飲み物はなんが希望なんだよ!!
一括りでセットつってもいろんなのがあるっての!
言ったそばから、書面どころか
仕様も無いまま仕事を追加発注されたわけで
そうして、またまた光に包まれた
JCは言うだけ言って、白い世界から追い出しやがった
2回目とはいえ、やっぱり目が眩む
そして少しの間、記憶が途切れた
どれだけ時間が経ってからだったのか
気が付いたはいいのだが、やたらと身体が重い
瞼を漸く開くと白い空間とはうって変わって薄暗い
なんなら湿った匂いまでもしている
どこか土臭い気がするから、地上か?
目が慣れたのか、ようやく周囲が見え始めた
と思ったら急に影が差し
「大丈夫ですか?」
と、声をかけられた
正面をじっと見つめると、影の中に徐々に顔が見えてきた
そこには女性の顔が3つあり、こちらを覗き込んでいる
赤毛ロングの美女、金髪セミロングのマッチョ女子
そして藍色ウェーブのスリム女子?
改めて見ると3人すべて、とんでもない美人なのに気がつく
どアップでこの美貌、どこぞの美女勢ぞろいアニメ顔負けだ
さっき声をかけたのは、執事と紹介された彼女らしい
そっか
JCのところで創造されたサポートの3人か?
あっちでは表情が全く無かったから分からなかったけど
こうして見れば見るほど美女?美少女?なのには
ため息しか出ない
3人ともしゃがんで、こちらの顔を覗き込んでいる
そうか、私は地べたに寝ているのか
まだ動きが重いが、ゆっくり上半身を起こし周囲を確認する
さっきまでいた白い世界とは全く違う
ごつごつした岩肌で囲まれた空間にいるようだ
天井は高く、広さは予想すらできない
青空が見えてないけど、なんで明るいのだろう?
そこでようやく、大事なことに気が付いた
3度目だけど、後輩はどこだ?
慌てて辺りを見回すと、彼女は私のすぐ隣に横たわっていた
じっと見ると、胸が上下しているから
生きてはいるようで、またもほっとした
「ごめん、彼女を起こして貰えるかな?」
と、目の前に居た執事タイプの女性に頼んでみる
「ご自身で起こされないのですか?」
「いやー、親しい友人とはいえ会社の同僚だからねぇ
女の子にむやみに触ると【セクハラ!】って言われる恐れが
・・・・・って伝わるのかな?」
しばし悩んだような表情をしていた彼女だったが
「つまり、ご自身で起こそうとすれば
あまりよろしくない状況になるかも、ということですね?
それでは、私が起こさせていただきます」
納得したように、彼女は後輩の肩を優しく揺らした
「大丈夫でしょうか?」
何度か声掛けしながら揺すり、ようやく後輩が起きた
「はぁ~い、ってあれ?」
見慣れない女性に起こされキョトンとしている
キョロキョロしてこっちを見て頭を下げた
「おはようございます」
「おはよう、って私もさっき起きたばっかりなんだけどね」
目覚めてすぐ挨拶をしてくるのは、後輩の育ちの良さかな
彼女の無事も確認できたことだし、次は現状把握だな
そもそもここはどこ?
3人娘はどんな人なんだろう?
そこから確認し始めるか
ちゃんと起きて話をしよう
そう思って立ち上がろうとしたら
よろけて転んだ
「大丈夫ですか?
こちらの【世界】はお二方の世界と違うようで
なにか【変換】後に送るとお聞きしました
その影響で、身体の感覚が少し異なるのかもしれません
お二人ともすこしお休みになられてた方がよいでしょう」
賢者はそう言うと手を前にかざして
空中に何かを書くようなしぐさをし始めた
何かの文様か文字のようなものが
指の軌跡をなぞるように宙に現れ
同時に彼女の前腕にも浮かび上がった後
こう唱えた
【製作:寝台】
「よろしければこれをお使いください」
そう告げた彼女の目の前にベッドが出現していた
後輩とやっぱり顔を見合わせる
「【クリエイト:ベッド】って聞こえたよね?」
「聞こえました」
「で、出来たのは」
「なんか・・・・・DIYのベッドフレーム
それも仕上げ途中、みたいなやつですねぇ」
後輩の感想は正しい
ベッドと言うが、粗い丸太を削って並べて組んだだけだった
しかも足もヘッドボードもなにもついていない
それどころかマットレスも布団も無いではないか
JCが言ってたモノづくりの話を思い出す
そもそも布団、いや寝る時に掛けるもの
という概念すらも無いのかもしれない
いや、それも大事だが先に確認しておきたいことがあった
「3人とも、名前を教えてくれるかな?」
賢者、マッチョ、執事
3人がそろってキョトンとした
「ナマエ、ってなんでしょう?」
思わず頭を抱えてしまった
名前が無い?
自分の常識との違いがありすぎるよ
やっぱり現状の仕様書貰っておくべきだったな
まさか個人の名前、って概念まで無い世界だとは
「名前、ないんですねー」
惚けたように呟いた後輩と
今日何度目か
顔を見合わせる
7話と8話を統合して再構成しました




