第10話「私と後輩、3人娘で自己紹介」
サポートシステムがつぶやく
『実際は、こちらの【世界】の言葉を話しています
具体的に説明しますが、ご主人様達には
耳や振動を含め【現地語で身体に入力されたもの】を
私が日本語に変換した上で脳に伝えています
注意してみると、口の動きや発声との
【ずれ】がありますが、お気になさらず』
テレビのディレイ、みたいなもんだと思えばいいか
『ちなみにお二方が話す場合
発話する際に現地語に変換して口から発声されています
それらも脳に入る際、同じロジックで処理済みですので
ご自身の会話にも違和感が出ていません
更に音の違和感を無くす為
骨伝導などの振動も変換しています』
そこまで細かく調整してるのか
しかし同時通訳とはサポートシステム、すげぇな
こんなのがあったら外国語ペラペラだろ
『ありがとうございます』
読むな読むな、手放しの賞賛を脳内で
なんか『むふぅー』って
鼻息が聞こえそうな位のイントネーションだったぞ?
『そんなそんな』
謙遜までするのかよ
すげぇな、サポートシステム
『ちなみに』
気をよくしたのか、得意気に説明補足を始めた
『女神様は全ての生物に通じる言語で話されていました』
全ての生物共通?凄いなそれ
・・・・・まあ、神様だものね
なるほど、と納得してから自己紹介に入る
「まずは私から」
3人娘は自己紹介経験すら危ういし
年下の後輩から挨拶ってのもねぇ
―そう考えて手を上げて話し始める
「私は芳井蛍路
今後、私のことはケイ、と呼んでください
年齢は29歳
別の世界から来たのでこちらのことは全く知りません
他に必要なことがあれば、その都度聞いてください
以上」
後輩は顔を近づけ、耳元で囁いた
「え?それで終わりですか?他は??
ほら、趣味とか学歴とか好きな食べ物とかは?」
静かに返す
「こっちの【世界】がどういうものか判らないのに
一方的に喋ったって、伝わらないと思うんだよね
とりあえず、呼び方だけ教えれば十分じゃないかな」
『それでいいと思います』
サポートシステムも賛同してるし、大丈夫だよね?
「あ、私のサポートシステムも賛成してますね
では私も先輩に倣って簡潔に挨拶しますね」
後輩が続ける
「私は阿部綾乃、23歳です
ケイ先輩からは【阿部ちゃん】と呼ばれていますが
みなさんは【アヤノ】と呼んでください
よろしくお願いします」
そう言うと、軽く頭を下げた
あれ?
私も、アヤノちゃんって呼んだほうがいいのかな?
見抜かれたのか、おおげさにしかめっ面をする
ちょっとだけ舌を出して
「名前呼びは早いですよー」
だそうだ
なんでわかったんだよ?
でも、そんな顔でも可愛いじゃねーか
それはさておき、問題がある
3美女に加え、それぞれのサポートシステムについてだ
サポートシステムからは【美女賢者と3人で相互補完】
とか言われたけど、当面は、脳内に別人格があると
知られない方がよさそうじゃないかな?
そう思った途端、サポートシステムから声がかかった
『お考え通り、当面は秘匿されることをオススメします
理由ですが【世界書庫】には
この【世界】の生物は、例え賢者ですらアクセスできません
何かの拍子で悪意あるものに存在を知られると
ご主人様達を確保して使うことを強要したり
魔術で精神操作したりされる恐れが生じるかもしれません
アヤノちゃんさんもですが
お二人ともに秘匿されることを強くお勧めします』
だってさ、怖い怖い
で?
サポートシステムさんは「アヤノちゃんさん」呼びですか?
『付き合いの長いご主人様がダメ出しされたので
私がアヤノちゃんさんと呼んでみるのははどうでしょう
そう思いまして」
気遣いの人?ですねぇ
阿部ちゃんを手招き伝える
「サポートシステムのことは隠しとけってさ」
少々考えた顔をしてから
「こちらでも言われました」
とのこと
サポートシステムにはいろいろ聞きたいこともあるし
後程改めてお話ししようね
『楽しみにしています』
マジで人格あるんだね
サービス口調が過ぎる
さて、仕切り直すか
「君たち3人のことも知りたいから
自己紹介してもらえるかな?」
こういう時って、大抵賢者がすぐ動くよね
「私は賢者で、見てのとおり長耳種です」
ん?
見ての通り?
いわゆる笹耳とかじゃないけど、エルフなの?
疑問を口に出すより早く、彼女は続けた
「生前の年齢は300歳から先は数えていませんでした
長い間、【奥の森】で研究に没頭していましたので・・・
そんな日々を過ごしていて気が付いたら
女神様の元に魂が戻っていました」
300歳?【奥の森】?魂が戻る?
・・・・・一人目から
未知の情報てんこもりすぎじゃない?
隣の後輩も首を傾げている
特に年齢、私らの常識と違いすぎる
「こんなところでしょうか
ケイ様、アヤノ様
これからお二方のために尽くしますので
よろしくお願いいたします」
「う、うん、ありがとう
次の人、お願いします」
隣のマッチョ美少女、優雅に胸の前に手をあて
膝を軽く曲げ、優雅に会釈する
「同じように、自己紹介させていただきますわ
私のことを妖精王だと女神様がお二方にご紹介されましたが
実際には数世代前の妖精王候補、でしたわ
種族としては妖精種
年齢は130歳ちょっと
同じく、女神様よりお二方の為になってと言われましたわ
よろしくお願いします、ですわ」
妖精って30cmの小さいイメージがあるけど
普通の人サイズなんだね
まあ、彼女の見た目は彼女の筋肉質な体のおかげで
妖精というよりドワーフっぽいんだけどさ
てか、この子で130歳オーバー??
この世界、長命ばっかりか?
「では最後に私めが」
執事美女が自ら声を上げる
右手を臍あたりに添え、腰を折る
「私は魔角種です
年齢は分かりかねます
気が付いたら、この【世界】に居ました
女神様からお二人の役に立つようお話を頂いて
今ここにおります
お二方を主として、魂が滅ぶまで
お供させていただきたく存じます」
重い、なんか重すぎるよ
「とりあえず、3人ともありがとう
細かいところは、おいおい教えてもらうとして
3人を呼ぶのに種族名?を呼ぶのは不便だからさ
私らのように、君ら一人一人に名前を付けさせて
貰えればと思うんだけど、なにか問題あるかな?」
「ナマエ、というのは
ケイ様
アヤノ様
と呼んでとおっしゃったもの、ですか?」
賢者が口を開く
「そうそう、そういうの
と言うより、名前の概念がないのに
【様】って敬称は理解してるって
どういうことかな?」
素直に疑問を口にしてみた
「【女神】に様をつけて【女神様】、と呼んでおります
お二方は、その女神様から選ばれたと伺っておりますので
私達より上の存在と認識しています
ですのでケイ様、アヤノ様と呼ばせて頂いてます」
整った顔がすっと私達2人を見つめる
他の2人も大きく頷いていた
自分より上と思えば様付け、ですか
阿部ちゃんを見ると、なんかもじもじしてる
「君、様付けとかされたい?」
「いりませんよ~
職場でさん付けですら、むずむずするのに」
私もいらないねぇ
3人に向き直り
「偉くないし、むしろ3人には教えを乞う立場だし
呼ばれ慣れてないしなので、様付けはいりません
ケイ、アヤノ、でいいです」
そう言うと今度は執事美女が
「拝見したところお二方の魔素量はそれこそ
私どもとは桁違いのものをお持ちでいらっしゃいます
一般的には魔素量が大きい程、立場が強いのです
見たところ、お二方とも魔角種の長よりも魔素量が上
他の2人の種族も、多少差はあれ同じようなものかと
どうかケイ様、アヤノ様と呼ぶことを
お許しいただけないでしょうか?」
美女が3人とも頷き、こちらをじっと見つめている
「そういうのがある世界、っていうなら無理強いはしないよ
でも、別に偉いとかなんとかないし
そもそも3人とも私らよりよっぽど長生きしてるし
尊敬に値するんじゃないかな?」
その言葉に阿部ちゃんも頷く
「年功序列で言ったら、多分私が一番下ですよー」
いくら若いとは言え女性の年齢はいじらないに限るから
華麗にスルーしておく
ところで魔素量ってなんだ?
疑問はさておき、本題に戻す
「で、なにはともあれ、名前を付けていいのかな?」




