第3話「光、あれ」
どう考えても、こんなところにあるはずなかろう
庶民の家にあったらおかしいサイズの巨大レリーフ
それともここは私設の美術館かい?
奥行きだけでも5mは優に超え、高さも2mは超えてるのでは?
軽く叩くと冷たい感触に加え、薄い金属板を成形したモノ、っぽい硬質な反響音
ここまで常識外のサイズの物は、いくら美術品でも家にあると一種の恐怖を抱く
それが天井高があっても、普通の民家の部屋
しかも壁1面いっぱい
占有しているあまりの巨大さに
違和感、仕事しろ!
って言いたくなってしまう
部屋を見渡しても、やはりこの壁だけがおかしく、他の3面や床、天井も、レトロな純和風作りだ
何故、畳部屋の壁にこんなものがあるのか?
壁付けならば、横や後ろはどうなってる?
と、裏に回れないか後輩と見てみる
後ろは昔のセメントづくりに、タイル張りした流しがある土間だった
壁自体に奥行きもないから、壁の表面にレリーフ設置しているだけか
補強とか、アンカーは?
固定不良や強度不足なら、薄い金属製だとしたって倒れてきたら家壊れるんじゃない?
もしアルミ製だとしても、このサイズは数十キロで済まないと思うけど?
いやいや
住んだ後に倒れてきたら、大惨事かもしれない
業務上、安全管理は最優先事項なので余計に気になるわ
後輩になるべく近づかないよう、静かに伝える
一度家から出て、持ち主に電話をかけて貰い現状を伝えたが
「そんなものはなかったはず」
だと
数年前、荷物を置きに行った時、見たのが最後だけど普通の古民家で、壁も普通だった
そう言うばかり
誰か身内で出入りした人は?
リフォームしたりした人もいない?
と聞いても覚えはないらしい
スマホで写真を送ろうにも、家の固定電話だけの人だとかで、この場で証明が出来ないのはもどかしい
うーん、どういうことだ?
どこぞの収蔵品を隠す為、倉庫として使ってる、って可能性は
・・・・・ないよね
そもそもあんなでかいの、どうやって運び込んで設置するんだか
この調子じゃ、正体が判明しそうな気はしないし、持ち主は知らぬ存ぜぬだし
とりあえず、なにか仕掛けでもないか
ぺたぺた触ってみることにする
「ただ立てかけてあるとかだと、倒れてくるかもしれないから気を付けてね」
後輩は左、私は右をあちこちいじってみる
触った感じでは、特にずれたりもしそうに無い
すぐわかるような変な問題は、見た感じないな
少し離れて見てみると、レリーフとは言ったものの、シンプルな図形が半立体的になっている
つまり、壁に埋め込んだモニュメントぽいもの、のようだ
―と言うか、これ、もしかしたら正多面体か?
半分を補填したら、正四面体から始まって正二十面体の5種類、そして球体
正多面体って5つのはずだから、数はここに見えるものと一致してるし、当たってそうだけど・・・・・
一体何を表してるんだろ?
「これ、動かせそうですよ?」
後輩がそう答えて、端っこの三角形を触る
「堅いけど動きそうな気配、ありません?」
「確かに動きそうだけど、隙間ゼロだから押すか引くか、かな?でも、押し込んだら壁、貫通しちゃわないかな?」
言うより早く、後輩が一人で押していた
だが、びくともしない
「先輩も、一緒に押してみましょう!」
「はいはい、行くよ?もし動いたら、すぐ手を放して逃げよう」
後輩が素直に頷く
「「いっせーの、せ!」」
二人で息を合わせて思いっきり押し込んだら、ずるっと動いた
と思った瞬間、部屋が急激に明るくなった
後輩と顔を見合わせる
メーター取りされてるので、電気が来るわけがない
じゃあ、明るくなった原因はなんだ?
よく見ると、部屋の電灯や窓が光源ではなく、天井や壁など全てが、とんでもない光を放ってた
でも、何故かレリーフだけ光っていない
むしろそこにあるか?、って程
一面が漆黒の闇かと見まがうほどに、黒々としていた
そして光は強くなる一方
余りの眩しさに目を閉じ、それでも、瞼を透過してくる光
あまりにも眩しくて、手で目を覆ったが・・・・・




