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引っ越し先を見に行っただけなのに、女神が想像力皆無な世界に私と後輩を転移させて、現代知識で文明社会を創れ、それも3年間でって……それって厳しくないですか?【連載改稿版】  作者: 菜乃花 薫
引っ越し先を内見しただけなのに

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第3話「魔法と魔術がある世界?」

後輩のカミングアウトを受け、おねえさんが続けた


『お二人がいた世界では

そういったもので広まっているようですね

確かに【異世界転移】ではありますが

大げさに言えばあなた方にとって

これは「神からの使命」と言えるのですよ』


使命ねぇ

失敗したら、魂消されるとか

地獄に送られるとかデメリットあったら嫌だなぁ


『失敗した場合、後始末は明確です

異世界で過ごした3年間の記憶を抹消してから

あなた方の世界に戻して全て無かった事にするだけで

不達成のペナルティ、とかいうのはありません

こちらの都合で半ば無理矢理に指名して

使命を与えてるんですから

そこまでやるのはあくどすぎますよね』


それはそれで怖い気がしますけどね


流石に話が重過ぎるし

どうするかは後輩と話したほうがいいよね


おねえさんには、どうせ考えが筒抜けだし

その場で相談をすることにした


「ねえ、どう思う?」


「冒険みたいで面白そうですし

多分一生こういった機会はないですよね?

だったらもっと話を聞いてみたいです」


「確かにそうだけど、どういう世界で

あちらで私らがどういう能力や権限になるのか?

ほんとに命の危険はないのか

ペナルティ無いと言われたって無責任って訳にもいかないし

君の安全が担保されないんじゃ、まずいからね」


「あら、心配してくれてるんですね

だーいじょうぶですよぉ、おねえさんがああ言ってますし」

お気楽にそう言って、おねえさんを見遣る

流石に自称神が嘘ついたら

まさに神も仏も無い、ってなるものね


「もしも人の居ない紀元前とか

戦時中のような混乱期だったら困りますよね

未知の生物ばかりとか、空気が無いとか

価値観その他がまるっきり地球と違う星だったら嫌ですし」


「成程、異世界モノが好きだってのは本当みたいね

詳しい質問は君からして貰おうか?」


「いやいや、こういうのは先輩にお任せします」


そんなやり取りを聞いてかどうか

おねえさんが説明を始めた


『あなた方に担当して貰う予定なのは

こちらの世界で言えば()()()()()()の世界です』

おっと、まあまあ文化レベルが低そうだぞ?


後輩と顔を見合わせようとしたが

おねえさんは立て板に水の如く話を続けた


『そこは地球のような球体の惑星ではなく

端的に言えば【正四面体】形状の世界です

4面全てが別の世界になって居て

それぞれに管理者が存在しています』


レリーフで押し込んだところが、ここで効いてくるのか

つまり、正四面体の世界に「呼ばれた」ってことか

しかし、おねえさんの説明が本当なら

私の知識では理解できない、無茶苦茶な世界構造だ


隣の後輩が

「ファンタジー世界定番モノですね」

とこちらを見ながら呟く


『あなた方は、その内の1面に行ってもらいます』

追加説明を求めるより早く説明が続けられる


『物理法則や環境などは基本、地球と共通です

ただし地球にはなくて、あちらにしかないものや

その逆もあります

物質文明より精神文明が大幅に進んでいて

地球では無い【魔法】と【魔術】があります』


「魔法!魔術!

あちらでは、私達も使えるんですか?

凄いですよ、先輩!」

私の手を取り、ぶんぶんと上下に振りながら

後輩が興奮し始めた


―この娘、そんなキャラだったのか??

ファンタジー世界にすっかり行く気らしい後輩に

気後れしてしまいそう


魔法と魔術って本当にあるのか

知ってる限りだと専門の知識や修行をして会得できる技術

って設定が多いと思ってたけど

・・・・・使えるのか?


腕を振り終わっても未だ興奮冷めやらぬ後輩

それを横目に


「続きを」

とおねえさんは説明を進める


『魔法は今のままでは使えませんが

あちらの世界で使えるように調整させて貰います

産業革命以前とは言いましたが

今のままのあなた方からすれば

不便極まりない環境になりますからね』


そうだ

実際に今の技術レベルや生活レベルは、

”大昔の人からすればまるで魔法のようだろう”とは

よく例えて言うからね


ついでに言えば一緒に行く後輩は、女の子

やはり彼女が3年間、無事で過ごせるのかが一番気がかり


と言うか

【今のままでは使えない】【調整させて貰います】

って、なにをどうするんだ?

まさか改造されるとか、無いよね?


「ところで、現地の人の強さとか

危ない生物や環境的なモノも含め

なにかしら命の危険とかは無いものでしょうか?」


失敗しても、とは言っていたが

そもそも死んでも失敗で済むのか?

それとも、ほんとに人生ゲームオーバーなのか?

確実に確認しないと、間違いなく不味い


『まず生物についてですがこちらで言えば

白亜紀とかに居た生物に近いものがいたりしますね』


「白亜紀って、恐竜が跳梁跋扈してたあの?」

思わず言葉が止まる

いくらファンタジー世界だったとしても

恐竜なんて人が倒せるのか?


「それ、魔法や、魔術が使えたとしても対抗できるんですか?

これから行く世界の魔法とかって、そんなに強力なんですか?」

白亜紀と聞いて危機感を持ったのか

ちょっと前、あれほどはしゃいでいた後輩が

堅い表情で畳みかけるように尋ねる


『一応倒せますが、1対1では難しい生物もいますよ

例えば牛が大きくなった生物なんか

素手では一人じゃ無理ですよね?

それくらいの危険はあります』


「いや、普通の牛だって大きいと

500キロとかゆうに超えますよね?

それだけで既に危険ってものじゃないのに

それより大きくなった生物?

素手で倒せるわけないですよね?」


『今のあなた方ではそうかもしれませんね』

おねえさんは含みを持たせたような物言いをした


「じゃあ、病気とかどうですか?

昔だと、衛生観念の問題とかで起きる感染症とか

よくあったみたいですけど?

それと、医療水準もやっぱり時代相応ですか?」

後輩ちゃん、それは大事だね


『一応、病気や感染症とかは

あなたたちの免疫システムのほうが強いんだけど

絶対大丈夫って断言はできないわ


医療や衛生観念については

中世ヨーロッパどころかそれ以前

と思っておいた方がいいでしょうね』


異世界物の、お約束って言えばお約束だよね、これって

中世以前、ってことは

ペストだとか魔女狩りだとかの

暗黒時代って可能性もあるのか?


『いろいろと、不安なことはあるでしょうけど

指南書代わりに()()()チュートリアルシステムを

用意してありますから、安心して貰えるかしら?


一応、衣食住に困らないような拠点を作ってくれる筈よ

現地での行動はあちらの管理者との折衝内容次第ですが

基本的にあなたたちの自主性に任せることになると思うわ』


「チュートリアルと拠点って

ロールプレイングゲームみたいですね」

後輩が的確な表現を持ち出した


まあ、天の声によるガイダンスと衣食住安定は

確かに異世界では有れば安心だろう


「業務内容や最終的な達成目標と

そこまでの経路と達成方法は現地で確認

って言うことですか」

一応、責務としてやるべきことだろうから

もう一度、端的にまとめて念押しをする


『そうなりますね

最終的に出来上がるのが

希望にあふれる世界ならと期待したいの


巡り巡って()()()()()()()()()

()()()()を与えてくれますし』


今更ながら結構大風呂敷な重大任務、じゃないのか?

しかも、巡り巡って今の世界に良い影響?


あっちでやらかしたら、地球が無くなってるとかだったらやだよ?


『流石にそれはありませんが

無関係ではないことだけは覚えておいてくださいね』


ってことは、逆に結果が反映されるってことじゃないの?

寧ろそっちのほうが怖いんだけど


これ、責任重大じゃない?

後輩と今日何度目か、顔を見合わせる


後輩はこう言った

「作業する【世界】での経過時間は3年だけど

こっちでの実経過時間は3時間なんですよね?

いろいろやって失敗してもペナルティなしの

半日バイトじゃないですか?

おねえさんの言からすれば

ちゃんとやれば寧ろ今の世界に悪影響ないんでしょうし」


成程、そういう捉え方も出来るか

この娘、私が思ってる以上に

話の理解度と解像度が高いのかな


「お気楽だね、君

まあ、そう考えるのもありだけどさ」


おねえさんに向き直って


「本っ当に危険はないんですかぁ??」


まじまじと顔を覗き込む


『当然よね、そう思うのは

あなた方の世界で言う【シミュレーション仮説】

それに相当すると思ってもらえればいいかしらね』


「それって確か、自分らの世界も

シミュレーションかも知れないんですよね?」


『その辺は詳しくは言えないのよね、ごめんなさい』


残念ながら、そこまでは教えて貰えないのか

まあ、仮に知ったとしても現実問題としては

どうにもできないとは思うけどね


「あのー、シミュレーション仮説ってなんですか?」

後輩が聞いてくる


「こういう映画あったでしょ?」

それっぽくポーズを取ろうと身体を反らしたが

図らずしもふざけたラジオ体操みたいになってしまった


よたよたした私を見て笑ってるよ

後輩だけでなくおねえさんまでも


「成程、理解できました」

まだ目が笑ってるよ、目が


『デジタルデータ上のような世界と言う

大雑把な考え方で良いと思うけど

実際には生きている空間が違うだけで

きちんとした生命体ではあるの』


自分らの命も大事だけど、相手も生命体だと言うなら

お互い命のやり取りをせずに済む業務にして欲しいものだけど

どうだろう?


『その辺は自己管理になるかしらね

あちらの管理者には安全に関しての念押しをしておくわ

あなた方が無事に帰ってこられないと

それはそれで問題ですからね』


まあ、管理下から2名行方知れずになったら流石に放置

・・・・・しないよね?


『そうですね

詳細は言えませんが、管理者としては困りますから』


ん?

今、若干目を逸らし気味にも見えたけれど

・・・・・気のせいか?


『さて、まだいろいろ聞きたいこともあるでしょうが

ここでの時間は有限です』


おねえさんが話法でいう所のクロージングを切り出した

なるほど

そろそろ担当する【世界】へと移動させられるのか


『いいえ、まずはあちらの世界で管理者がいる所に送ります

そこで初期チュートリアルとかあるはずなの

細かいあちらのことは私では解からない事が多いから

確認して下さいね


あ、あとメリットについては()()()()()()()()()()()

いくつか選ばせて付与させて貰っておくわ』


え?もうちょっと待って!

質疑応答の時間も貰えずに、配属先の世界に送るの??


強烈な光が差し込み始めた

最初と同じ眩しさに目を細め

隣にいる後輩の腕を取り引き寄せようとした瞬間

一気に視界が白く染まった


お~い、おねえさん~

まだ聞きたいこと、あるんだってば~


その声は白い空間にむなしく吸い込まれていった

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