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第17話「文明格差がエグくない?」

数十秒の沈黙が落ちた後、阿部ちゃんが静かに唱えた

製作:(クリエイト:)長椅子(ソファー)


空気が揺れ、純和風の部屋には似つかわしくない

3人掛けの布張りソファーが現れた


3人娘の表情が、一斉に驚愕へと変わる


「3人とも、座ってみてください」


現実を飲み込めていない3人に阿部ちゃんが優しく促す


私らの魔術を何度か見ているからか

長命種さんが最初に我に返り、恐る恐る腰を下ろした


「これは・・・・・椅子とはまるで違います

お尻も背中も、浮いているようです!」


そりゃあ、クッションとスプリングを使ってるからね

賢者の作った椅子と比べたら

柔らかさの次元が違ってしかるべき


残る2人も恐る恐る座り、すぐに目を丸くした


「まるで膝枕みたい・・・・・!」

「これは・・・・・

まるで空を飛んでいるようですわ!」


座る人座る人、驚きが新鮮


ところで最後の人?

空、飛べるの?


それはさておき、3人それぞれが楽しそうに

お尻と背中をソファーに預けて楽しんでいる


驚きが覚める前にベッドでさらに度肝を抜こう


「では、こっちにもどうぞ」

ベッドを指さした


しかし、掛け布団の存在が逆に“未知の物体”に見えるのか

3人とも腰が引けている


「阿部ちゃん、寝てみてくれる?」


私のようなおっさんが寝た布団より

阿部ちゃんの寝た後の方が絶対にマシだろう

なんとも言えない悲しい気配り


アラサーの自覚はあるけど、美女美少女に

【おっさん臭い】と言われたら立ち直れない自信がある


阿部ちゃんは布団をめくり、横たわって

そっと布団をかぶって見せた

「こうやって寝るんですよ

良かったら横にどうぞ」


もちろん、誘っている相手は私ではない


長命種さんがまた最初に動いた

「失礼します」


布団を持ち上げた瞬間の驚き

腰を下ろして、さらに驚き

横になり、布団をかけて、ぽつり


「これで寝るのですか?

嘘ですよね?」


「どうしたの?」


「魔術で作った寝床は堅く、寒いのが普通でした

でもこれは・・・・・

先程の【そふぁー】とやらと同じく

浮いているように寝られて、しかも暖かい

こんなものがあるなんて、思いもしませんでした」


あのベッドフレームに直寝してたの?

敷き布団も、掛け布団も無しで?

そりゃあ寝づらいに決まってる


この短時間でも、技術的格差の大きさに驚くどころか

ちょっと引くくらいのレベル差が垣間見える

・・・・・

これ、本気で一からモノづくりを教えないとダメなのでは?


『それでしたら

魔術で、ご主人様(マスター)の世界の

技術関連資料を作り出してはいかがでしょう?』

弥生さんが提案してきた


見本を作って分解、組み立て作業を見せる

・・・・・そんな感じということ?


『それ以前の問題です

長命種がこのベッドを見て覚え「製作:(クリエイト:)寝台(ベッド)」を唱えても

見た目は似せられますが細部や特徴、特性までは

再現出来ません』


どうして?


『スプリングや羽毛など

“この世界に存在しない素材や工作物”を知らず

”加工の概念も理解していない”ためです


例えば布団なら布を縫う、羽毛を採取して清潔にする

そう言った工程を知らない以上

同じ性能を魔術で再現できません』


なるほど

理解していないものは再現できない、と言うことか


『追加しますと

現在ご主人様(マスター)が作られたものを手本とした場合

ベッドフレームのような

【ねじ】や【勘合】で構成されている部位は

それぞれが単結晶製であっても

工具があれば分解可能です』


機械的に結合してるものは、構造そのものは変わらないのか


『ですが』

弥生さんが続ける


『縫製品については逆に

掛け布団の縫い目を切ってほどく

接着された場合は剝がすといった等が不可能です

その為に構造を見せることが適いません』


なるほど

じゃあ、素材をポリエステル糸とか絹糸にして

制作:(クリエイト:)出来ないの?


『可能です

ただしその場合、こちらの【世界】の住人が

魔術行使して再現しようとすると


糸を作り、布を織り、針を作り、縫製する――

これらの工程を全て理解した上で

魔術を行使する必要があります


それを行うには、あまりにも人的にも時間的にも

教育するだけの時間や教育者(リソース)不足が否めません』


あっちの世界なら問題ないけど、こっちでは糸も針もない

そこから教えるのは、さすがに骨が折れる


弥生さんの言い方だと、布団を元々の素材で作るのは

私には可能、とも聞こえるけど?


『可能ですが単結晶として再現しても

元の素材の機能や風合いが同じですから

破壊や経年劣化、汚損も無い単結晶構造で

作成する方が理に適っています』


ん?

なにげに重要なこと、さらっと言ってないか?


『そこで提案ですが

――【世界書庫】を使って動画を作ってはどうでしょう?』


・・・・・動画?

動画、魔術主体のこの【世界】で作る方法あるの?


『考えがあります』

自信ありげな返事が来た


『動画なら素材の説明から加工、製品の完成まで示し

繰り返し見てもらうことで学習が可能でしょう


そうすれば【ものづくり】という

概念そのものを理解できるようになるかもしれません


それが出来れば、簡単なモノづくりなら

魔術として再現できるようになる可能性はあります』


なるほど

ただ、それってどうやって作るの?


『私にお任せいただけますか?』

弥生さんは何か企んでいるらしい

私の体で勝手に動き回らなければ、どうぞ


そう言って、任せることにした

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