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第18話「イメージ、時々悲劇」

その間にこっちはこっちで、話を進めよう


まだ、ベッドの上で飛んだり跳ねたりしている3人娘

―子供かな?


それを眺めている阿部ちゃんも含め、みんなに声をかける


「お楽しみの最中だけど

名前を付けるって話を進めていいかな?」


ピタッ、と動きが止まる


3人娘はベッドの端に寄り、足を下ろして座り直した

阿部ちゃんは空いた真ん中に横座りして、こちらを見る


「さっき、阿部ちゃんと考えてたんだけどさ」


3人娘を見回しながら続ける


「長命種さんはフレイア

妖精種さんはアウラム

有角種さんはカホル

髪や目の色から取った名前だけど、どうだろう?」


3人は順に自分の名前を口にした


「フレイア・・・・・」

「アウラム・・・・・」

「カホル・・・・・」


そう言い終わって少しの間の後

3人がゆっくりと後ろに倒れ、天を仰ぐ


倒れた・・・・・3人とも倒れた?

え、何が起こったの?


同じベッドに座っていた阿部ちゃんと共に覗き込むと

3人とも目を見開いたまま天を仰いでいる


見開いた眼はぐるぐる回っているが

肩を叩いても反応はない


呼吸はしている

全員が同じ状態だ


弥生さん、緊急事態!

最優先で3人の状況を把握してくれる?


『バイタルサインに異常はありません

脳波パターンは睡眠時と同じですので

恐らく気絶しています』


命に別状が無いのを確認できて、ひとまずは安心


弥生さんが続ける

『原因についてですが、魔素量が

気絶直前の10倍に増加していますので

これが主要因ではないかと推測します』


魔素量が10倍?

名前が付いただけで?

凄すぎない?

急激な魔素量増加で気絶するものなの?


思わず、立て続けに質問してしまった


『このような事例が、この【世界】で発生した記録は

【世界書庫】にもありませんので私見になりますが

本来の成長速度を大幅に超えた

【急激な魔素量増大】によって

魔力体がショック状態になり

その反動で防御反応として

気絶したと考えます』


とりあえず、体に問題は無いんだね?


『3人娘の肉体や精神に対して生じた

【急激な魔素量変化との相性】が解からない以上

大丈夫とは言い切れません』


名前を付けただけで、こんなことになるとは


『この【世界】で初の現象、と言うことは間違いありません

現に【世界書庫】に【命名】と言う項目が

新しくできています』


世界書庫に項目追加・・・・・そんなことあるんだ

むしろ、命名程度でそこまで変化するなんて


―この【世界】、奥が深すぎる―


数分経っても起きる気配がないので

弥生さんにモニタリングを任せつつ、阿部ちゃんと相談する


「3人は命名が原因で気絶したらしいけど

ほんとに気絶だけらしいから

起きるまでこの後のことを考えようか」


「葉月さんも同じことを言ってましたね

この後のこと、ですか?」


小首をかしげる阿部ちゃん

そう、まさにそこが問題なのよね


家――と言うか城が出来ちゃったけど

住むには設備がまったくない


「食料、水、外の世界の情報

その上で今度は外出準備とか

やるべきことが山のようにあるかな


まずは住環境を整えるのが、最優先だよね

トイレもキッチンも風呂も無いし

このままでは、ね」


「お風呂や食料も問題ですが

流石にトイレが無いのは困りますねぇ

この洞窟、隠れるところないですし」


外で用を足すのは問題ないのか、この娘

・・・・・いや、聞かないでおこう、うん


「まずは魔術で設備を作れるか試そうか

住むには最優先で水、無いとまずいよね?」


水源、浄水、貯水、排水、その他いろいろ

一口に”水”と言っても考えることって、山ほどある


それら全て、魔術でクリア出来るのかしら?


「先輩、詳しいですか?」


「工場やDIYで水配管はやったけど

工業用水だったり、既存配管の入れ替えだったりと

今回とは根本的に条件が違うんだよね」


1から作って、飲料水として安全に出来るかはわからん

水源どうするかって話にもなるし


「とりあえず、3人が起きるまで

試しに外で水場を作ってみようか?」


階段を下りて外へ出る


のぼりがきつく感じた城の階段

下りだと更に怖く感じる

攻め上がられないようにしてると言うが

逆バリアフリーだよね


城の前は回廊まで十メートルほどで、そこまで広くはない


とりあえず水場として小さいプールを作って

水が生成できるか試そう


製作(クリエイト:)で出来るとして、水場って英語で何て言うんだ?


池?ポンド?

いや、もっと小さいバケツとかから始めるべきか?


阿部ちゃんに相談すると

「大は小を兼ねるって言いますし

思い切って大きいの作っちゃえばいいんじゃないですか?

プールくらいあれば、飲用できなくても

いろいろ使えますよね」


確かに


そうは言っても、生活用水って

1人1ヶ月で5トンあれば多すぎるし

大量にあっても流れが無いと、水って腐るし・・・・・


しばし思案の後、思いつく


「流れるプールならどうだろう?」


動力さえどうにかなれば、人が入るわけじゃないし問題ない

水が流れれば腐りにくくなるし、よさそうでは?


「いいんじゃないですかね」


賛同を得られた


イメージ・・・・・イメージ・・・・・


製作:(クリエイト:)遊泳場(プール)


唱えた瞬間

目の前に巨大なプールが出現した


「・・・・・先輩、どこのプール思い浮かべたんですか?」


阿部ちゃんが、頤を少し上げて

まつげ越しにそれはそれは寒々とした

氷点下何度?

そんな冷たい瞳でこちらを見ている


少々怒り交じりの侮蔑が感じられるぞ

ここは心を強く持とう


「え?

去年行ったプールだけど?

流れるプールだし」

しれっと返す


「確かに去年一緒に行きましたけど・・・・・

これ、いくつもプールが分かれて

ウォータースライダーもあって

波のプールもありますね


脱衣所も売店も、監視台もあって、って

・・・・・ここまで詳細に再現する必要、ありました?」


「いやいや、別に大きく作ろうと思ったわけじゃないよ

”プール”を想像して頭に浮かんだのが

これだっただけなんだよ」


なのに細部まで再現されて

屋外の更衣室まで出来ている


しかも

全てのプールには水が満ち

ウォータースライダーは水が流れ

しっかり波まで起きている


すっかり「なんとかサマーランド」とじゃないか

動力、どうなってるの?


『魔素を使った機構で再現していますよ』


・・・・・理不尽極まりない


・・・・・待てよ

なんか景色に違和感あるんだけど?


「回廊、無くなっちゃってますねえ」


プールができた場所は、阿部城の回廊があった所

外構の壁と門は残っているけど

そこから城の前までが全てプールに置き換わっていた


そりゃあ、阿部ちゃんが

【絶対零度の視線】を向けてくるわけだよね

初めて作った建物を私の魔術で消し飛ばされたんだから


「本当に申し訳ない」


もう、謝るしかない


ため息をついた阿部ちゃんが

「・・・・・後で直してくださいよ?」

と一言


よかった、ご機嫌悪くはなってないようだ


とはいえ

できちゃったこの巨大プール、どう処理すればいいの?

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