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12.御者、銀狼と再会する


 アンディ達は旅立って一週間ちょっとで食糧が尽きてしまった。そこで近くの森や川で狩りをしていた。人間の領であれば、森や山、川も誰かの持ち物、縄張りで見つかろうものなら村人や兵士に追い回されるのだが、魔物の領であればその心配もなかった。


 そんな時に行き倒れた商人の少女ミネヴァを拾ったのだ。本当は見捨てようという意見もあったが、心までも堕ちたつもりはないと助けようという意見が多勢を占めた。


 気が付いたミネヴァは自らをしがない旅商人と名乗り、彼らの境遇を知り、根無し草の彼らに是非ついていきたいと無理やりついて来たのだ。


 それどころか、奴隷たちの格好はどこかの誰かに見られたらまずかろう、衣装や食料、白翼竜への贈り物を用意しようと言い出し、様々な要求をしだした。


 それらについて一々語れないが、ともかくそのせいで奴隷馬車の者たちはましな服、ましな食料を十分携えて、白翼竜の遺跡へと向かうことが出来たのだ。最も到着は予定よりも半月ほど遅れたのだが。



「おい、ミネヴァ!

 この弓の連射速度早すぎて矢の装填が追い付かないぞぉ!?」


「ふむふむ、なるほど、矢だと装填が難しい、と」


「くっそ!」


 その結果がこれだ。白翼竜は待っていてくれず、今、アンディ達は魔物に追われながら、遺跡へと走っていく。


「アンディさん、そろそろ馬が限界だ!」


「そうは言ってもぉ、魔物は増えるばかりだ!」


 アンディが剣で猿の魔物を切り裂く。その代わりに猿の持っていたこん棒が背中を強打していった。


「・・・ふぅっ!」


 息を吐きながら、次の猿を切り裂く。さすが魔物の巣と言うべきか、統制はされていなくとも次から次へと襲われては体力ももたない。


「grrrrrrr!!」


「次は狼かい!?」


 数匹の狼が道から外れた木の乱立する坂の上から降りてくる。その先頭は銀色の巨狼だ。


「はっ!いい加減にしてくれぇ!」


 アンディは飛び込んでくる、先頭の狼に槍を刺し出した。が。


「なぁ!?」


 なんということだろうか。狼はその穂先を蹴り飛ばし、馬車の荷台に飛び乗ったではないか。


 その衝撃で荷台が大きく揺れる。


「うぉぉ!?」


(さすがに、これは終わったかぁ?)


 目の前の巨大な狼の顎を見ながらアンディは自身の死を覚悟した。狼の湿っぽい鼻息が彼の髭面を濡らす。


 だが、いつまでたっても牙はアンディにかみつかない。


「・・・??」


 それどころか、狼はこちらの匂いを嗅いで首をかしげている。


「・・・ッ!

 ■■■・・・ッ!!」


 何かに気が付いた狼が咆哮を上げる。耳を塞ぐ余裕もなかったアンディはその耳を麻痺させてしまった。


「な、なんだぁ・・・!?」


 ふらふらとする頭で、アンディは狼を見る。


「はっ・・・はっ・・・」


 狼はそれ以上、何もせず、舌を出している。いや、それどころか。


「全く、匂いが変わったから一瞬分からなかったですよ。

 匂いが同じなら攻撃させなかったのに」


「ん、その声は?」


 いきなり人語で喋り出した狼の言葉を聞いて、アンディは思い出す。その声は確かに一ヶ月前に聞いていた。


「ハティちゃんじゃない!」


「ちゃん、付けはやめてください!」


 そう言うと、狼は縮みだし、その背中から銀髪の少女が顕れた。


「お久しぶりですね、ええっと」


「あぁ、あのときは名乗ってなかったなぁ、アンディだ」


「ええ、お久しぶりですね、アンディ」


「他の馬車も攻撃されていると思うんだが」


「ああ、先ほどの咆哮で配下に彼らを守らせていますから、大丈夫ですよ」


「あぁ、そうか。そりゃぁ」


 それでアンディは緊張の糸が切れた。血を流しすぎたのか、全身がふわふわしているようだ。筋肉も痙攣を始めている。


「そりゃ?」


「安心した」


 と、同時にアンディは倒れ伏す。


「あ、アンディさん!?」


 ハティの声も、アンディには遠くに聞こえた。


―――


 アンディが目が醒めたとき、そこは薄暗い石で出来た部屋だった。彼はその背中に硬い感覚を覚えた。彼が寝かされていたのは石の台である。


「ふぅ・・・くそぉ、石のベッドじゃあ冷てえし息苦しくて寝れねえやぁ」


 そう言って、アンディは自分の体を確認する。彼の身体はあちらこちら布で巻かれ、そこからわずかに血が滲んでいた。どうやら簡単な治癒魔術や縫合などを受けていたらしい。


「あぁ、アンディさん、大丈夫ですか!?」


 そこに入ってきたのは、ハティである。後ろから金の髪の少女、スコルも入ってきた。


「あ~生き返ってる。死んだら食べてあげようと思ったのに~」


「姉さん、不吉なこと言わないで。

 アンディさん、どこか痛む場所とかはありませんか?」


「・・・ツッ!

 まあ・・・あっちこっちが痛えなぁ。

 だがぁ、命に別状はなさそうだ。それに治療が良かったみたいだからな」


「そう~?人間用の治癒魔術使える人いないし、いや、いるけどわざと失敗しそうなのしかいないけど~。

 それに医師もいなかったし~、結構大変だったんだよ~?」


「あぁ、さっきよりはましさ。

 それより他の奴らは」


「今、ヴェル様と話をされています。

 今後についてです。それで」


「なんか~、さっき声が聞こえてきたけど商人が出てきて~、ちょっと話がこんがらがってたみたい~」


「く、またミネヴァか・・・!」


「あ、アンディさん、起き上がっては!」


 アンディは石台から起きようとするが、ハティに抑え込まれる。さすがにこの状態では、アンディも起き上がれない。


(くそ、あいつ変なことしていないといいが)


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