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魔王が復活しそうなので慣例に従って勇者を召喚したらチートすぎた上に個性が強かった  作者:


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カミーユの場合(後編)

 カミーユはオーブの言葉に従って、とりあえず図書館へ向かった。


 石造りの建物の中心にある木で作られた重厚な扉を開くと、満面の笑みを浮かべた女性が優雅にお茶を飲んでいる姿が目に入った。


「昼食をお持ちしました」


 その場にいる全員の視線がカミーユの持っている皿に集まる。


「オーブは一緒ではないのですか?」


 紫依の質問にカミーユが皿を置きながら答える。


「夕食の下ごしらえでしばらく手が離せないそうです」


 カミーユの説明にオレールが不満を口にする。


「従者が勇者様の側を離れてどうする?」


「これを持っていってくれって頼まれたんです。ものすごく気合をいれて料理をしていましたから、側にいてはかえって邪魔になると思ったんですよ」


 それを聞いて女性が嬉しそうに微笑む。


「それは夕食が楽しみね。あなたがカミーユ?紫依から話は聞いたわ。私は蘭雪よ」


 蘭雪が手を出してくる。その手をカミーユが笑顔で握った。


「カミーユ・ビオです。よろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしく。さ、みんなで食べましょう」


 蘭雪がパンを口に入れる。紫依が胸の前で両手を合わせて合掌をした。


「いただきます」


 紫依はパンを一口食べて、どことなく嬉しそうに言った。


「やっぱりオーブが作る料理は美味しいですね」


 先の二人と同じようにパンを口に入れたカミーユが素直に感想を言う。


「召喚したときにエプロン姿で現れたのは目を疑いましたが、この料理の腕なら納得ですね」


 蘭雪は手を出そうとしないオレールに声をかけた。


「食べたら?美味しいわよ」


「しかし……」


「オーブはあなたの分も入っていると言っていました。食べないほうが失礼になると思いますよ」


 カミーユの言葉にオレールはゆっくりとパンを手に取って一口食べた。


「美味しいでしょう?」


 紫依の確認にオレールが無言で頷く。


「これで女性でしたら、将来良い奥さんになれますよって言うんですけどね」


 カミーユの言葉に蘭雪が笑う。


「自分が大事なら、その言葉は本人の前では言わないことね」


「はい。僕も自分の命は惜しいですから」


「いい心がけね。ところで紫依。これを食べたら、この本を見てほしいんだけど」


 蘭雪が本の山を指差す。その本の中には神官長でさえも閲覧禁止という重要な本も入っていたが、幸か不幸かそのことを知っている人はこの場にはいなかった。


「見るだけでいいのですか?」


「ええ。見るだけでいいわ。読まなくても大丈夫よ」


「わかりました」


 二人の会話にカミーユが首を傾げながら質問をした。


「何故、読むのではなく見るのですか?」


 蘭雪が二個目のパンを頬張りながら説明した。


「紫依は意識して見たものをそのまま覚えることが出来るのよ。読んでも覚えているけど、それだと文字を見て理解しないといけないから、そのぶん時間がかかるでしょ?でも見るだけなら、それだけでいいから時間が短くてすむのよ」


 言葉の内容にパンを食べていたオレールの手が驚きで止まる。

 カミーユは表情を変えずに声色だけで感嘆を表した。


「すごい特技をお持ちですね。今まで、そんな勇者様はいませんでしたよ」


「過去の文献を読んだけど、みんな普通の人だったみたいだからね」


 カミーユが苦笑いをする。


「召喚術では数多くある世界の中から特に勇者様としてふさわしい強い魔力を持っている四人が召喚されます。歴代の勇者様たちは選ばれただけあって、皆すごい人ばかりだったのですが、あなた方から見れば、その人たちでさえも普通の人なのでしょうね」


 蘭雪は魅惑的な微笑をカミーユに向けた。


「理解力と適応力がある人は嫌いじゃないわ」


「褒め言葉として受け取っておきます」


 ニッコリと微笑むカミーユにオレールは盛大なため息を吐くだけで言いたかったことを全て飲み込んだ。



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