カミーユの場合(前編)
中途半端に長くなったので無理やり前後編にしました。
短くて、すみません。
一人で神官長に到着の報告をしたカミーユは自分が担当している勇者がいるであろう厨房がある部屋へと歩いていった。
「失礼します。ここに勇者様が……」
そう言いながらドアを開けたところでカミーユは動きを止めてしまった。
目の前の台では買い込んだ大量の食材をプロ顔負けの動きで捌いているオーブの姿がある。そして、その光景をここの主であるはずの料理人たちが遠巻きに眺めていた。
「おう、カミーユ。いいところに来てくれた。これ紫依たちのところに持って行ってくれないか?たぶん図書館とか本がたくさんある部屋にいると思うから」
オーブが指差した先にはパンに野菜やチーズ、ハムを挟んだ軽食が乗っている皿がある。
「女性二人分にしては量が多くありませんか?」
カミーユの質問にオーブは手を止めることなく答える。
「お前とオレールの分もあるから。オレは夕食の下ごしらえでしばらく手が離せないって伝えといてくれ」
「わかりました」
カミーユが皿を持って出ていこうとしたら、オーブが呼び止めた。
「あ、そうだ。それと紫依について注意事項を一つ言っとくわ」
「注意事項……ですか?」
「あぁ。紫依はあんな外見で感情が希薄だから対応がわかりにくいだろうから。注意する点は一つ。敵意を持たないこと」
「それは当然のことではないですか?」
「紫依の場合、加減とか遠慮とか知らないから厄介なんだ。相手の姿が見えない場所からの追跡や尾行でも敵意を見せたら即叩きのめすからな」
そんなことをするつもりはないがカミーユは念のため聞いてみた。
「……ちなみに尾行はどれぐらいの距離で気付かれますか?」
「オレが召喚された街の神殿から街の入口まで離れていれも気付くぐらいだ」
その距離では尾行どころか追跡も出来ない距離だ。
カミーユはオーブからの注意事項を警告と受け取り、紫依への対応は慎重に行うことを決めた。
「覚えておきます」
そう言ってドアまで歩いて振り返ると、料理人たちから助けを求めるような視線が送られてきた。
カミーユは中性的な顔立ちを活かしてにっこりと微笑んで言った。
「勇者様の気が済むまで使わせてさしあげて下さい。機嫌を損ねられたら大変ですから」
その言葉に料理人たちはガックリと肩を落とす。
カミーユはそんな料理人たちに同情するような微笑みを向けると、さっさと厨房から出て行った。




