第2話 ~眼前の快楽~
風街通り「あり得ないな。」
瑛莉の提案を跳ね除けたのは、私だ。
風街通り「この配役は、15人7人外。村人陣営吊り村人陣営噛みが起これば、13人7人外。人外数が村人陣営の数を上回り、視覚的に村人陣営は不利に陥る。縄増えは期待できても、村人陣営を柱とするのは愚策だ。」
そこまで難しいことは話していない。だが、周りの沈黙が痛い。私の言っている事は正しいのか、それが分からないのが怖い。だが、続けるしか無い。
風街通り「この瑛莉の行動は、「柱をするのは村人陣営」という認識を逆手に取った、否定される事を前提とした柱COだ。仮に本当に吊られてしまっても、次は狼憑きにヘイトが寄せられる。死して尚、村人陣営を不利にする人狼陣営の策謀だ。」
言い切った。言い切ったからには、これから先の展開には耳を澄まさなければならない。
瑛莉「違います!そんなつもりは無いです!ただ、占い師と霊能者は2-2。残る騙り先は、狩人-猫又-役人の3つしか無いです。占い師-霊能者に人外は2で、残る人外は5。狼憑きを含む4だと、人外同士の潰し合いは1つの役職でしか発生しませんが、3つに絞る事で2つ、1つでも人外濃度の高い殴り合いを発生させれます!それに、狼憑きは残すと、呪殺して真占い師が確定し、その占いが人狼を見つけても、狼憑きと言われるリスクがあります。ここでの狼憑きCOは有力なはずです!」
瑛莉が反論する。当たり前だが、ここでの言い合いは水掛け論にしかならない。重要なのは周りの反応だ。
ア6「瑛莉のそれは人狼陣営の行動に依存してない?妖狐噛み告発や、猫又での1溶け、そもそもの占-霊の内訳などを考慮していないように見えるよ。」
よこよ「そうかな?数多のパターンこそあれど、結果的には瑛莉の進行は村利になると思ってるよ。だから、瑛莉は吊らなくて良いんじゃない?」
しょぴ「私もそう思う。そもそも、否定される事を前提とするなんてリスキーだし、自身の命と狼憑きの命を1-1交換するのは割に合っていないよ。」
ア6がこちら側についたが、よこよ-しょぴはあっち側。かなりアウェイだ。まあ、まだ時間はある。全員分の話を聞く余裕も...
???「投票時間まで、あと1時間です。」
風街通り「....は?」
想定外だ。時計を見る。確かに、時計の針は19:00を指している。だが、まだ議論は3分したかどうかだ。明らかにおかしい。これは、まさか....
めろ「時計の針が早く進んでる?」
そういうめろの表情には焦りが浮かんでいる。彼女を含む数人は、まだ1度も発言できていない。これは命の賭かったゲームであるにも関わらず、ではあるが、緊張もあるだろう。彼らの心情はお察しする。だが、これだと...
めろ「まずいね。めろは瑛莉側に賛同するけど、瑛莉吊りは敢行するべきだと思う。瑛莉を吊らずに、瑛莉の進行を遂行するのは半端だよ。」
めろの発言を皮切りに、他の寡黙達が一斉に騒ぎ始める。だが、その全ては他の寡黙達の雑言で掻き消される。まさにカオスが、眼前で繰り広げられている。ここは共有者が止めるべきであろうのだが、共有者は動かない。共有者は誰だか知らないが、共有者も寡黙達の1人なのか?だとして、共有者が思考を述べる義理は無いのだが...。まず、時計が早く進む仕様自体がワナだ。これにより、急に判断を迫られている。これは村側にとって苦しい展開だ。そもそも、どの程度で早く進んでいるのだろう。全員が集まる前から議論時間は始まっているのなら、全員が集まるまできっと議論は10分程度進んでいる。つまり、ルールに記載されている1時間は、1分になっているのだろうか。なら、投票時間は1分だし、夜時間は11分だ。1日は24分で終わる。恐らく7日程度で試合自体が終わるのだから、24×7で、ゲーム時間はおおよそ170分。3時間が経つ前にゲームは終わり、この中の少なからず半数程度は死に至るのかもしれない。...バカげている。それに、命の賭かった初日で、議論時間が数分しか無い、理不尽だ。主催者への怒りを募らせていると、無機質な声が響いた。
???「ただいまから投票時間となります。」
イスの目の前のテーブルに、参加者の名前が記されたボタンが円形に、参加者の座る席に対応する形で15個でてきた。これは冗談では無い事を認識する。今から1分後、この中から1人が死ぬ。その事実に緊張が走る中、瑛莉が勢いよく立ち上がる。
瑛莉「このままでは埓が明きません。私は風街通りさんを処刑する事を推します。」
(...!?)
まさか私が選ばれるとは。対立軸だからだろうか。自分が生きたいから、吊れる可能性の高い私を選んだ?何にせよ、それをされるなら瑛莉吊りをするしか無くなってしまう。皆が納得できる瑛莉吊り理論への言語化を進める最中、ホールに声が響いた。
しょぴ「うちが共有者です、瑛莉を吊ります!!」
声に焦りが見られるが、決意の決まった顔が見られる。彼女は本当に瑛莉を吊る気だ。それに安堵しつつも、マイノリティ側の意見に賛同するその理由は気になる。だが聞く間もなく、しょぴは話し始めた。
しょぴ「瑛莉は「自身を吊る代わりとして今後の狼憑き騙りを阻止する」という話をしていたはず。なのに、自身が生きたいからという理由で他者を吊りに差し出すのは変。怪しい。」
...「人狼ゲームはチームプレイ」と、昔誰かが言っていたのを思い出した。私はそれを否定したが、同じ言葉が彼女に掛けられたら、彼女はそれを肯定するだろう。しょぴの言い分としては、「あなたが吊られても村人陣営が勝てれば生き返れるんだしいいでしょ?」とかだろう。だが、瑛莉は違う。別に吊られて死んで、復活できる保証なんて無い。眼前の「生存」を冠した欲求を名乗る悪魔に唆された彼女を、私は村人陣営だと思った。だが、指定は指定。それに逆らう道理はない。私はテーブルに出てきた15のボタンから、瑛莉の名を選ぶ。最後に瑛莉を横目に見たが、彼女の顔面は青ざめて、目には涙が浮かばれていた。
???「投票をお済ませください。」
...私はボタンを押した。
???「全員の投票を受け付けました。内訳を公開します...」
???「最多得票者は、瑛莉さん。入れられた投票数は15票。その他得票者は、風街通りさん。1票です。」
それが告げられ、今から起こる事象に身構えていると、急に照明が落ちた。視界が真っ黒になる。何も見えなくなる。私は直ぐに耳を閉じた。
その直後、瑛莉のものと思われる絶叫が響き渡り、照明がついた。瑛莉の席には、誰も座っていない。
(...)
できるだけ、目の前の現実を認識しないよう気をつけながら、ホールに来た際に下った階段を上り、ドアを開け部屋に入る。そのまま、体内で暴れる恐怖を外に吐き出した。そしてそのまま、その時を待った。
...掃除をすませて、明日のことを考えると、無機質な声が響く。ゲーム内の夜は明けてしまった。
???「ただいまより、議論時間を開始します。1日目夜時間の犠牲者は、SCさん...」
???「と、電波さんです。」
〜第2話、終〜




