第1話 ~集う十五の空蝉~
私の人生は、端から見れば汚く惨めて滑稽なものだが、私はこの人生をとても美しいものだと思っている。
「ネット」の効果は素晴らしい。現実での友達は2人や3人だが、ネットには20人...いや、30人は超える友人関係を持っている。私の人生は、ネットのおかげでようやく人並みの幸せを感じているようなものだろう。
今日から、高校の夏休みに入ってから1週間が経つ。夏休みに入ってからは、ネットに集中できてとても気分が良い。やはりネットという文化のある時代に生まれた私は幸せ者だな、と思う。
そろそろ課題にも手を付けなきゃな、と思いつつ、私は自分の部屋の布団に横になった。
...夜が明けて...
ああ、もう朝か....そうやって目を開けようとした所で、違和感に気づいた。
まず、服装が高校の制服だ。それに、寝ている場所が布団ではなくベッドだ、材質も違う。これは夢か?とも思うが、目が覚めた所から始まる夢などあるのだろうか、そりゃ夢ならあるのかもしれないが....
現実か夢か分からないまま、目を開けると、そこには自分の部屋とは全く違う部屋が広がっていた。第一に目に入ったのは、外へと続く扉と、そこに書かれている張り紙。次いで、ベッドの正面には教室で使われるような机が置いてあった。そして、その上には高校で言う所の放送を流す機材?がある、これの名前は分からない。
ほっぺたをつねっても、ただ痛いだけだ。これはきっと現実で間違いないのだろう。まさか誘拐?私のような身を誘拐して、犯人はどうするのだろうか。私のハピハピ人生を他人に破壊されるのだけは許せない。
そんな事を考えていると、放送を流す機材から声が聞こえた。
???「皆さん、起きたようですね。」
無機質な声だ、人間のものではない。機械音声、というやつだろう。それに、「皆さん」という事は、誘拐されたのは私だけではないらしい。他にも2人か3人ぐらいはいるんだろう。
(誘拐って犯罪だしリスキーなものだと思うけど、この犯人って大胆なんだな...)
???「それでは、皆さんには今から、【人狼ゲーム】をして貰います。ルール及び配役は部屋にある机の中に、あなたの役職はドアに貼られている張り紙に書かれています。ドアを開けてすぐに見える階段を降りた先のホールで待っています。」
ずいぶんと急な展開だ。やはりこれは夢?でも、さっき現実で間違いないと判断したはず。やはり、ほっぺたをつねった程度で夢か現実か判断できないのだろうか...。だが、これは私に有利だ。私はネットで人狼ゲームを良くやっている。他の人に比べれば、ノウハウも分かる。初心者狩りができる、夢なら夢で楽しめるな。そう思いつつ、ドアの張り紙に目を向ける。
【あなたの名前は「雪凪」です。そしてあなたの役職は「 」です。】
「...!!」
私は驚きを隠しきれない。なんで、人狼ゲームで使っている名前が?犯人はなぜこれを知っている?それに、なぜ現実の名前ではなく、ネットの名前である必要がある?...だが、今考えても答えは出ない。私は役職を覚え、次は机の中を覗き込んだ。そこには封筒が入っており、それを開けると、そこには「ルール」と書かれた紙があった。
【ルール】
①この人狼ゲームの参加者は、「電波」「めろ」「絶滅勇者」「SC」「eggchan」「しょぴ」「よこよ」「ぐしゃ」「ア6」「Roria」「雪凪」「風街通り」「ペルニ世」「瑛莉」「国王桃」の15名を指す。
※これ以外の人間、及び生物はこの施設に存在しない。
②この人狼ゲームの配役は人狼-人狼-人狼--狂信者-黒猫-妖狐-背徳者-狼憑き-占い師-霊能者-狩人-猫又-共有者-共有者--役人である。分からない役職に関しては別紙参考。
③この施設内では、時間が定められている。8:00~20:00は議論時間。20:00~21:00は投票時間。21:00~8:00は夜時間とする。
※時間が切り替わる際にアナウンスが入る。そのアナウンス終了の3分以内に、議論時間の場合はホールへ、夜時間は自部屋へ移動しなければならない。
※投票時間以内に参加者は、各々が今日の処刑先を選び、投票する。そして、生存者の全員が投票を終了した時点で、最も多く投票された参加者は全て死亡する。
※投票時間中に席を離れては行けない。
※議論時間開始時、一度席に座った場合、投票時間終了まで席を離れては行けない。
※夜時間中、占い師→狩人→人狼の順で能力を実行する。3:00までに占い師と狩人は能力を実行しなければならない。
※施設内での時間はホールに飾られている時計を基準とする。
④人狼の人数が村人陣営の数と同数、あるいはそれ以上となった時点で人狼陣営の勝利となる。
※人狼が全員吊られた時点で、村人陣営の勝利となる。
※妖狐は、自身が生存した状態で他陣営が勝利した時点で、横取り勝利となる。
※村人と人狼が同時に勝利条件を満たした場合、村人陣営の勝利となる。
※勝利しなかった陣営、つまり敗北した陣営の参加者は全て死亡する。
※勝利条件を満たした、かつ死亡した参加者は、生き返る。
【禁止事項】
・参加者へ悪意のある危害を加えようとする行為。
・この施設からの脱走、あるいはそれを試みる行為。
・この施設内の設備の破壊、ゲームの阻害となるような物に対する工作や移動。
・アナウンスの指示に対する反逆行為。
・投票時間中・議論時間中に席を立つ行為。
※これらの禁止事項を破った参加者は、その時点で死亡する。
「...!?」
参加者の面々の全員に見覚えがある。これは私がやっている、人狼ゲームのサイトで、よく一緒にゲームをしている人達だ。まさか、彼らも巻き込まれているとは。それに、誘拐にしては人数が多すぎる。犯人の意図が読めない。
私は自身に与えられた役職を覚えた後、ホールへと降りた。そこには、既に2人の参加者が席に付いていた。そのどちらも、顔立ちの整った2人の女の子で、二人ともどこかの制服を着ている。
雪凪「えー、早いね!お名前聞いてもいいかな?私の名前は雪凪!よろしくね!」
めろ「え!雪凪ちゃんだ!私の名前はめろ!よろしく!」
eggchan「こんにちは。私の名前はeggchanです。よろしくね。」
めろとeggchan。二人の喋り方は、ネットの喋り方と一致していた。eggchanは、冷静でクールな感じがして、めろは誰にでもフラットな感じがする。皆そんな感じなのかなーと思っていると、階段から足音がした。
「おーおー、やってるじゃん。」
「なんだなんだ、とてもネットで人狼ゲームをしてるとは思えない美貌の集団じゃねーの。」
降りてきたのは、二人の男子。どちらも制服を着ている。もう、参加者全員の服装は制服で固定なのだろうか。
めろ「お名前なーに?私の名前はめろ!よろしくね!」
風街通り「おー、そうなの。俺の名前は風街通りな、よろしく。」
ア6「ほい。俺の名前ア6、自己紹介を促すやつは人外というジンクス、よろしく。」
めろ「え!?酷い!!(泣)」
eggchan「まだ議論始まってないですよ。ほら、続々と来ました。」
この2人を皮切りに、ゾロゾロと参加者が集まってきた。そしてその参加者は、自身のネームプレートが置かれた椅子に座った。雪凪も、次いで、階段から降りてきた目の前にある、自身の名前が記された席に座る。
一同「...」
誰もが黙り込む。それはしょうがないのかもしれない。これから始まるのは、命を賭けた人狼ゲーム。今まで生半可な思いで、適当に言葉を連ねてきたネットとは、その心とは、おさらばしなければならない。
???「それでは、議論を開始してください。」
無機質な音声がホールに響く。それでも、誰も何も喋らない。数十秒の沈黙の上、一人の参加者が口を開いた。
よこよ「負けたら死ぬって....本当なの?」
eggchan「いえ、そんな事は無いと思います。」
ア6「マジか?そんな事あると思ってたわ。」
eggchan「簡単な話、ルールが変です。「※勝利条件を満たした、かつ死亡した参加者は、生き返る。
」だなんて。今までのは現実的に可能でも、死者が生き返るだなんてあり得ない。」
ぐしゃ「いや、そうじゃなくね?吊られたり襲われた段階で死ぬだなんて書かれていない。処刑や襲撃では、気絶とかそんなんで済ませて、敗北処理の時に殺されるんじゃないの?」
eggchan「なら、死亡するのは禁止事項を破った場合のみですね。」
風街通り「まあ、禁止事項破る奴なんざいないと思うが。そういう点で俺達を信用してるって事か?」
めろ「そうなのかもねー...。そこら辺は、気にしなくて良いんじゃない?勝てば良いんだから。じゃあ、議論する?」
しょぴ「うん、そうだね。始めよっか、議論。」
緊張感が走る。また、静寂が挟まると思った。が、直ぐに行動する参加者がいた。
電波「じゃ、占い師は右手、霊能者は左手挙げてな。ハイ!挙げな!」
(...!!)
唐突な強制だ。だが、参加者は直ぐに反応した。絶滅勇者、SCが右手を挙げて、eggchanと国王桃が左手を挙げている。しかし、彼らの顔には猜疑心が宿っている。
国王桃「...右手と左手、どっちを挙げるか分かりにくい、という良い訳が通じてしまう。人外の後出しCOを正当化させる行動。」
ペルニ世「そうでもなくねーか。そもそも、他にRCOさせる案なんて無いだろ。結果論で他人を責めるのは良くない。」
eggchan「それに、どっちを挙げるか分かりにくいなんて左右盲をケアするなんてバカげています。」
雪凪「まあ良いじゃん、共有者は?」
瑛莉「待って。今日、私を吊ってよ。」
(...?)
私を、吊ってよ?この人は、何を言っているのだろう...。思考を巡らせる前に、彼女の言葉が挟まる。
瑛莉「私、狼憑きだから。私を吊って。その代わり、次からの狼憑きCOは全て真を切って。」
私は恐らく察知した。ここの選択が、後に大きく響く事になると....。
〜第一話、終〜




