酒乱
酒場での和やかな食事が終わると、ヒロはすっかり酔っ払ってしまったリリアを家まで送り届けることになった。
夜風の吹く道を、ヒロは顔を真っ赤に染め上げながら、視線をひたすら真っ直ぐ前へと固定して歩く。
それも無理もないことだった。
ベロベロに酔っ払い、すっかり理性を失ったリリアが、ヒロの右腕に組み付いて、逃げられないほどしっかりと密着していたからだ。二十歳になったリリアの豊かな大人の柔らかさが腕へと伝わってくる。
十五歳のヒロにとってはあまりにも刺激が強すぎた。
「あはははっ、ヒロくん、顔真っ赤だよ〜?」
蕩けた甘い声で笑いながら、リリアはヒロを覗き込むように顔を近づけてくる。
ヒロは心臓が爆発しそうになりながら慌てて身を引こうとするが、ガッチリと抱えられた腕は微動だにしない。
「り、リリアさん、ちょっと離れてください! 近いです!」
「やだ! 離れたくないもん!」
ヒロは心の中で激しく自分の愚かさを後悔していた。
酒場で気まずい空気を少しでも和らげようと、なんの気なしにリリアにお酒を勧めてしまったのだ。いや、そもそも気づくべきだったのだ。リリアは、あの「女子会」以降、ぱったりとお酒を口にしなくなっていたというのに。
(……あの時のひどい二日酔いのせいじゃなくて、この酒癖の悪さで自分が何かしでかすかもしれないからお酒を断ってたんだね……!)
今さら気づいても、後の祭りだった。
そうこうしているうちに、ようやくリリアの自宅の玄関にたどり着いた。
「つ、着きましたよ。じゃあ、僕はこれで……」とそそくさと帰ろうとしたが、リリアに力任せにぐいっと引っ張られ、そのまま無理矢理部屋の中へと連れ込まれてしまう。
呆れながらも、足元がフラフラと心許ない様子を見捨てるわけにもいかず、ヒロは彼女の背中を支えながらベッドへと向かった。
しかし、ベッドの縁に辿り着いた瞬間――。
ふらりとバランスを崩したリリアの体重に押し切られる形で、ヒロはそのままベッドの上へと倒れ込んでしまった。
気がつけば、リリアがヒロの上にまたがるようにして覆い被さっている。
「もう……どこにも行かないでね?」
酔いを含んだ潤んだ瞳で見つめられ、二人の鼻先が触れ合うほどの至近距離で、リリアは甘くそう囁いたのだった。
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