剣聖
セバスは王城までの地下道を駆けながら、自らの不甲斐なさを噛み締めていた。
この世に生を受けてから、人生のすべてを王家へ捧げてきた。
王家の剣として生きる。
それだけを胸に、幼き日から剣を振るい続けた。
現国王とは幼い頃より共に育ち、王女アンが生まれた日には、自分のことのように喜んだ。
国王陛下に王女専属執事を任じられた時、あの日流した涙を、今でも忘れてはいない。
それほどまでに誇らしかった。
それほどまでに、この命を王家へ捧げる覚悟を決めていた。
それなのに。
何が剣聖か。
何が王国最強か。
王女は、まんまと誘拐された。
自分は敵の策へ見事に釣り出され、その隙に、王宮までも危険へ晒した。
そして。
救われた。
またしても、あの二人によって。
セバスは強く拳を握り締める。
掌から血が滲んだ。
その痛みすら、自分への戒めには足りない。
「……不甲斐ない。」
小さく漏れたその一言は、夜の地下道へ静かに消えていく。
脳裏へ浮かぶのは、地下道で見た青年の姿。
完全詠唱。
あれほどの強化魔法を、迷うことなく自分へ掛けた。
己の力ではなく、他者の力を信じた青年。
「恩に着ます。」
セバスは静かに前を向く。
今、この瞬間だけは。
全盛期を超える。
王家へ仇なす者どもを。
一人残らず駆逐するために。
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