再会
ガレスとヒロの誕生日の宴は、時間を追うごとに表情を変え、入れ替わり立ち替わり多くの人々が訪れては去っていった。
朝の時間は、常連の職人たちや冒険者たちが酒を酌み交わして賑やかに過ごした。
そして太陽が真上に差しかかり、それぞれが一度仕事へと向かっていくと、今度は朝の祈りを丁寧に済ませた教会の神官たちが静かに訪れ、続いて午前中の仕事をひと段落させた街の住人たちが次々とやってくる。
そんな人の波が少し落ち着いた頃、広場の端、少し離れた場所に、どこか居心地悪そうにじっと佇む一団の姿があった。
スラム街からやってきた人々だった。身なりを気にしているのか、賑やかな輪の中に一歩を踏み出せずにいる彼らに気づき、ガレスが迷うことなく大きく腕を広げる。
「おう、来たか!」
野太いガレスの声が広場に響き渡る。
彼は他人の身なりや立場など気にするそぶりすら見せず、大股で歩み寄ると、強引なほど気さくな態度で次々と彼らを席へと案内し、山盛りの料理と温かいスープを手渡していった。
「遠慮すんな、今日はいくらでもあるからな!」
ガレスの変わらない豪快さと優しさに、スラムの人々の緊張した顔が少しずつほぐれ、やがて笑顔で食事を口に運び始める。
その様子を少し離れた場所から眺めながら、ヒロは胸がいっぱいになるような、嬉しそうな、誇らしい笑みを浮かべるのだった。
そんな温かな光景を、少し離れた通りからじっと眺める一団があった。
王女アンと、その側近である執事にして剣聖のセバスだった。
本来であれば、王女がこうして街に姿を見せれば、瞬く間に人々が集まり、一帯は物々しいほどの喧騒と人だかりに包まれるはずだった。しかし、今日の王都はどこか違っていた。街行く人々はみな同じ方向へと足を向け、楽しげに笑い合っている。
「一体、この先で何が催されているのです……?」
不思議そうに首を傾げたアンは、護衛の近衛騎士たちを引き連れて、人の流れに沿って歩みを進めた。そうして辿り着いた先で彼女が目にしたのは、まるで小さなお祭りのような、あまりにも温かく賑やかな宴の光景だった。
そんな喧騒の中心地を見据えたセバスの双眸が、ふと優しく細められる。
(……大きくなりましたね)
静かな呟きに導かれるように、アンもまたその視線の先を辿った。
「――っ! あっ……!」
広場の中央で人々にもみくちゃにされながら笑っている二人を見つけ、アンは思わずパッと手を上げ、声をかけようと身を乗り出す。
しかし、その小さな挙動を逃さず、セバスはそっと静かに、しかし確かな力で彼女の手を押し下げた。
「今日は……あの二人が主役のようです」
アンはぷくっと両頬を可愛らしく膨らませて、露骨に不機嫌そうな顔をしてみせる。
「セバスのけちっ!」
子供らしく文句を垂れたその時だった。
セバスの視線の先で、黒髪の少年――ヒロがふとこちらに視線を向けていた。
隣にいた赤髪の少年――ガレスもまた、まるで獣のように鼻をひくつかせながら、鋭く、それでいてどこか不敵な笑みを浮かべてこちらを凝視する。
セバスは騒ぎを起こさぬよう、ほんの僅かに顎を引き、分かるか分からないか程度の絶妙な礼儀をもって腰を折った。
(……今日は、これにて)
老執事の無言の挨拶。その洗練された仕草に気づいたアンは、きょとんと目を丸くする。
「……なに? 今のセバスの動き?」
首をかしげたアンが慌てて振り返り、もう一度二人のほうを確認しようと目を凝らす。
しかし、その時にはすでに、ヒロもガレスも周囲の笑顔の輪に溶け込み、人々と言葉を交わしながら楽しそうに笑い合っていた。ふたりがこちらを見ていた痕跡など、どこにも残っていなかった。
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