8.イリア0才、天才児
「とりあえずどこに向かっているの?」
全ての出入り口が封鎖されているなら、まさかずっとここを通るのかと疑問に思う。リヤードの様子を見るからに、そんなに長く持つとは思えない。
「あと10mほどで次の換気口があるはずだから、そこから出る」
「ここを通ったことがあるの?」
「まさか、ただ、空気の循環システムを作るなら、各ポイントに点検エリアが必要になるだろう。建物の構造を考えれば壁の補強材のない適切なポイントは次の西棟をつなぐ壁だろうって思ったんだ」
汗をぬぐい、手をプルプルと震わせながらも当たり前のように話す。
そんなこと、建物の間取りが分かっていても僕には考えつかない。
父親がセキュリティを見直すって言っていたけど、あの親が設定したゲームの設定を一度は解除したってことだよね。実はリヤードも凄い頭いいんじゃ。
「はぁっ、もう足がつりそうだ。ゾン、コーラとか持ってない? 喉が渇いて」
「あるわけないよ」
そのあとは少し休憩をはさみ、黙々と突き進む。リヤードの予想通り、10mほど進むと中通路の場所へ抜け出すことが出来た。
「あーーっ、疲れた。足が震えているぜ」
「大丈夫?」
コーラはないが、いつもポケットに入れているハンカチを差し出す。
「ありがとう。ゾンは汗あんまりかかないんだな?」
「僕は暑いのも足場の悪いところも慣れているから」
「そうか。とりあえず、ここからは妹のいる西棟だから、ロックはかかっていない。姉さんもたぶん、ここを通っていくはずだ」
「音だけを消すとかじゃないんだ」
「?」
リヤードはゾンの言っている意味を考えているようだった。
あれ? そんなに変なこと言ったかな。
「ほら、赤ちゃんを起こさない為にスイッチを切ってるんだろう?」
「あぁ、俺の時はそうしていたと思うぞ」
「?」
「イリアは特別なんだ。起こさない為でもあるんだけど、あいつはなんていうか。赤ん坊のくせに天才なんだ」
「天才? もう喋れるとか?」
たまに近所の人がご飯を食べさせてくれるお礼に、小さい子の子守を手伝うことがあった。だから、赤ん坊ならせいぜい立つのが人より早いとか、喋れるようになるだけでも周りは凄いと褒め騒ぐのを知っている。
「まさか、まだ あーーとかうーーとかしか言ってない」
「じゃあよく笑うとか?」
笑顔の多い赤ん坊は、賢いと言われていたなと思い出す。
「笑う? そうだな。あれは確実に俺を馬鹿にしているだろうな」
リヤードの表情は暗い。
「イリアは……妹は父さんや母さんの作ったセキュリティを全部解除するんだ」
「解除?」
「それも、全部。だから、西の塔は完全に他の塔のセキュリティと干渉しないよう、完全に分けて作られているんだ。それも、絶対に触れないよう通路でわざわざ建物を離してる」
「??????」
説明されても分からない。
赤ん坊が!? リヤードより賢いだって? まだ喋れないのに!?
「はぁ。とりあえず、妹は父さんが面倒を見ているはずだし、この時間は寝ているだろうから大丈夫だろうけど、絶対に気づかれないように行こう」




