6.警戒音
ビーッビーッ
突然、部屋の外から警戒音が鳴り響く。
「っ!? ここは……」
飛び起きて見慣れない景色に一瞬ここがどこかと呆然とする。
あぁ、そうか。ここはカナモリ家か。
広いベッドにお腹いっぱいの感覚。疲れはあるが、快適そのものの空間。
すごく運が良かったんだな。
しみじみと浸りたいが、なぜか部屋の外からはあいかわらず派手な音が鳴り響いている。
なんだ? この音は。火事? リヤードは大丈夫か? それに、赤ん坊がいるって言っていたけど。いや、僕も非常口なんて分からないぞ。
非常口どころか、リヤードの指の動きに合わせて反応するエレベーターなんて、どうやっても動かすなんて出来ない。ゾンは、このフロアから1人で出ることすら不可能だ。
「リヤード? この音は……」
心臓がはねるように速く動いているのが分かる。
焦ってはいけない。まずは冷静になるんだ。これだけの最新技術が詰め込まれた建物なら、きっと消化なんてわけないはずだ。
コンコンッ
頭では分かっていても、ドアをノックする手は焦る。
「ん~~、どうした?」
今この瞬間にも音は聞こえているというのに、リヤードはまるで気になっていない。
「リヤード、この音は一体?」
「ん~~?」
まだ寝ぼけているのか、目を閉じたまま立っている。だがすぐに目をかっぴらくと、焦った顔になる。
「たっ、大変だ」
「えっ、大変って、一体何の音だよ!?」
余裕のない様子にこちらまで焦る。
大変ってなんだよ。そこは大丈夫とかじゃないのか!?
きっと最新の設備がなんとかしてくれると期待していただけに、リヤードのこのリアクションに余計に焦る。
「母さんが……」
「お母さんっ!? そういえば帰ってくるって言ってたな? 何かあったのか!?」
「母さんが怒るぞ」
「えっ?」
冗談かと思ったが、リヤードは真っ青になる。
「姉さんがまた脱走したんだ」
「脱走って」
夕食のあと、リヤードの父親が言っていたことを思い出す。
たった1つのルール。
勝手にこの家を出ないこと。
「それで脱走したらどう大変なの?」
とりあえずは、火事ではないと分かりホッとする。だが、これだけ大事にするなんて。一体何があるのだろうか。
「姉さんが脱走したんだ!! 母さんが絶対怒る」
あいかわらず同じことしか答えないリヤードの両肩をつかむ。
「リヤード、落ち着いて。お姉さんがこの家を出たのは分かった。それで、僕たちは何かした方がいいの?」
この家にとって、家を出ることが何を意味するのかは分からないが、脱走なんて言い方、ふざけていないのは分かる。
何をすべきなのか。それとも、何もしないのが正解なのか、来たばかりの僕には判断できない。
「あっ、うん。いや、俺たちが出来るのは……そうだ、母さんより先に姉さんを見つけて、説得すればいい。戻って謝れば、母さんもきっと許してくれるはずだ」
「うん、分かった。君のお姉さんを探そう。それと、こんな大きな音が鳴っているけど、君の妹は大丈夫? まだ赤ん坊なんだろう?」
「あぁ。イリアなら大丈夫だ。父さんと同じ階だし、あの一帯だけは特別仕様で警戒音も鳴らない」
「そうか。分かった。僕に出来ることはある?」
リヤードは落ち着きを取り戻していた。
「俺と秘密の通路、一緒に来てくれるか?」
そっと壁にある換気口を外す。そこはいくつものパイプが通っており、風の通り道になっているようだった。そして、大人が通るには窮屈だが、まだ子どもの自分たちなら、通れるほどの隙間があった。




