3.大事な話
「部屋では休めたかい?」
あのあと、大量に置かれている書庫から、おすすめの漫画を紹介されたり、突然出てきたAI、ロボットに当たり前のようにお菓子や飲み物を頼むリヤードに驚かされっぱなしで、長旅を休む暇などなかった。
しまった。という顔でこちらを見るリヤードと目が合う。
「はい。部屋を案内してもらってからは、疲れを取らさせてもらいました」
ゾンの返事に、父親は感心したように頷く。
「そうか。それなら良かった。お腹も空いているだろう。とりあえず、食事をしながら少し話がしたいのだがいいかな?」
実はお菓子でお腹がいっぱいとはとても言えないが、当然それは秘密だ。リヤードの表情を見るからに、食事前の間食は知られたくないのだろう。
「はい。いただきます」
目の前には、ロボット達が様々な料理を運んでくる。テーブル机ですら、椅子と動き、見晴らしの良い窓まで持ち上がる。
「わっ」
思わず小さな悲鳴をもらす。これでは、椅子から落ちたら危ないなんてもんじゃない。
まさか、逃げられないように?
だが、横に座るリヤードはいつものことだといわんばかりに平然としている。
「大丈夫かい? もしかして、高いのは苦手だろうか?」
「あっ、いえ。大丈夫です」
「大丈夫だぞ。ゾンっ!! ここから落ちても、ムーブフロアが受け止めてくれる」
「ムーブフロア?」
「私の発明品の1つだ。そうだな、例えば、フォークを落としてみよう」
手からわざとフォークを落とす。すると、床のパネルが瞬時に浮かび、衝撃音もなくそれを受け止める。更にどこからともなくドローンのような小さな飛行体が近づくと、消毒スプレーをかけ殺菌まで行っている。そのまま新しいフォークと落ちたフォークの両方がテーブル席まで運ばれ、新しい方を選ぶとまるで何事もなかったかのように全て元通りになる。
「すごい」
「だろぉ!? 父さんは世界一の発明家だからな」
嬉しそうに話すリヤードを本気で羨ましく思う。
「ごほんっ。それで、君には聞きたいことがいくつかあるんだが、良いかな?」
「はい」
当然、僕の父親の話をされるのだろう。ネットゲームで知り合った、それも子ども相手に我が子を預けるなんて、どう考えても非難されるのは分かっている。
「まず、この度は私の管理不足で君をこんなところまで連れてきてしまったことをお詫びする。すまなかった」
「ごめんなさい」
「えっ?」
リヤードとともに、頭を下げられる。
「ネットで大人と通信するなど、私の教育不足、いや、そもそもリヤードに通信制限を解除されていることすら気づかなかったのは私の力不足だ」
「いえ、それは……」
それは僕の父親の方に非がある。良い大人が、相手を確かめもせず子どもの世話を頼む方がおかしい。
「それは、僕の父親のせいですから」
思わず小さな声になる。
「そうか、そうだな。だがそれは、君が反省することではない」
想像以上に穏やかな声に顔をあげる。
「なにか理由があるのだろう? 最初は、君も大人のフリをした家出かと保護したが、どうやらそうでもないようだ」
君も、と強調したところに、リヤードを見る。
「いや、俺は……大人だとは言っていないよ。ただ、同い年の君の預かり先に困っているっいうから家に来たらいいよって言っただけで……」
「大人のフリで登録しただろう? その話はあとで2人でしよう。いいな?」
「はい」
リヤードは口ごもり、静かになる。
「父は……」
さぁ、どこから話すべきだろうか。




