2.天才君とはじめまして
潜水艦とは思えないソファ席にリヤードと父親と向かい合うように腰かける。
なんだ? このふかふかなソファは。それに、飲み物まで出されているぞ。
目の前では、リヤードは勢いよくジュースを飲み終える。
何も飲まないというのも失礼だと、思い切って一口だけ口に含む。
「なぁ、同い年ってことは、モンスターブンの対戦。あとでやろうぜ」
「えっ? あぁ。僕はゲームはやらなくて……」
思わず本音で答えてしまった。
まずい。こんな水の中じゃ逃げようがないのに、相手を不快にさせることを……息子に失礼な態度を取ったと、怒るんじゃないのか?
ちらりと背の高い父親の方を見る。
「はぁ」
ため息に、生きた心地がしない。
「リヤード。ゲームは当分禁止だと言っただろう」
意外にも、その少しいさめるような口調は息子の方に向けられた。
「いや、ハハ。ゾンがどうしてもしたいならいいかなって。ほら、おもてなしってやつだよ」
「明らかにお前がしたそうだっただろう。それに、彼にはまずは家の案内からしなさい」
「分かってるって!!」
とりあえず、機嫌を損ねたわけではない様子に安心するも、いつになったらその家に着くのか、内心穏やかではいられなかった。
ガコンッ
機械の止まるような音とともに、先ほどまで壁だったところにドアが現れる。
「さぁ、着いた。ようこそ我が家へ。まずは荷物を置いてきなさい」
「はっ、はい」
「俺が案内するよ。行こう」
リヤードは勢いよく立ち上がると、半ば強引に手を引くようにその扉を進んでいく。ろうかのような場所の先にはもう一つのドアがあり、そこを開けると更に広い空間に思わず驚いた。
「船がこんなに……」
まるで船着場のようなその場所は、室内だとは思えないほど広く、いくつもの種類の船が停まっている。
「あぁ、父さんと母さんの船だよ。勝手に乗ると怒られるから気をつけろ?」
「……」
リヤードの説明に頷くが、先ほどから混乱したままだった。
どうなっているんだ? 家、なのか?
「ほら、ここが俺の部屋!!」
リヤードがエレベーターに乗って案内した場所は、部屋というより、フロアだった。
いくつもの部屋があるその階は、人の気配がまるでない。
「ええと、ここが運動する部屋だろう。シャワーは向こうで、あっ、ここは俺のコレクション部屋だ。本当はゲームする部屋もあるんだけど、今はロックされてて入れないんだ。あぁ、そこは寝るとこだ」
自動ドアで部屋が開いたと思うと、手をかざしただけでまた何もない壁からドアが現れる。
「……」
「どうした? 疲れたか?」
「いや、大丈夫……です。他の家族はどこにいるのかなって思って」
「上には行くなよ? 姉さんはいつも機嫌が悪いからな」
僕は頷きながら、何階建てか分からない天井を仰ぎ見る。
上って、どこまであるんだ。
「あとは、父さんと母さんは別の階にいるんだけど、今は妹の面倒見るからってよくそっちに行ってるかな。まだ赤ん坊だ。なんでも触るし、よく泣くからそっちにも近づかない方が賢明だぞ」
リヤードは本当に困ったというように、ため息をつく。
父親の方は厳しそうな雰囲気だが、リヤードは感情がすぐ顔に出るタイプだ。
「おっと、早く荷物を置いて父さんのところに行かないとまた怒られるや。ここが君の部屋だよ」
1番奥を指差す。そこは、リヤードが寝る部屋だと行った隣にある。
「ここを1人で?」
部屋を案内された途中から、なんとなく予想出来たが、まさか本当に1人だけの部屋が用意されていることに驚く。
中は1番広く、ベッドに机、テレビまで用意されていた。
自分の部屋なんて持ったことがなく、どこに荷物を置こうか迷う。
「どうしたんだ?」
「いや、ええと。ありがとうございます」
思わず、頭を下げ、練習してきた姿勢でお礼を伝える。
「なんだよ。俺たちもう友達だろう? そんなお礼の仕方、まるで他人みたいじゃないか」
「えっ」
「えっ?」
先ほどからはしゃぐように接するリヤードに、親近感を持たれているとは思っていたが、さすがに居候の身で友達と言われても悩む。だが、あまりにも驚いたリアクションをされては、他人行儀も失礼な気がする。
「ええと、うん」
ゾンの返事に、ニカっと笑い満足そうに肩を叩く。




