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変わり者と妖精の木  作者: きょんしー
妖精使いへの一歩
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ディザの巣

クレアとカークは、直前までティアナとミランが立っていた場所に駆け寄る。

だが、そこには穴も何もなく、ほかの場所よりも砂が巻き起こった為か地面が柔らかくなっているだけだった。


「……ティナと…ミランは…?」


クレアが目を見開いてその地面を見つめた。

カークも訳がわからないといったように地面に手を当てる。

そんな二人に、小さな影は近づいていった。


「……探すのは諦めた方がいいよ。二人は砂のお化けの巣に連れていかれちゃったから」


そんな声がクレアの耳に届いた瞬間、クレアはキッと眉間にしわを寄せた。


「どういうことだ? 知ってることを全部話せ」


今まで、クレアのそんな本気の怒りを含んだ表情を見たことがなかったミスティは、少しだけたじろいだ。

今にも小さな少女相手に掴みかかりそうになっているクレアを、カークは慌てて止めた。


「クレア将軍、落ち着いて」


「今こうしてる間にもティナとミランが危険な目にあっているんだぞ」


クレアの静かな低い声は殺気すら放っていた。


「君はこういう事が起こると知っていたのか?」


「うん、知ってたよ。だけどそれが何処でどんな風に起こるのかはミスティだって知らなかったよ。」


「なら、巣というのはどういう事だ? 俺達に出来ることは?」


「そんないっぺんに聞かないでよ!」


ミスティはクレアの質問攻めにうんざりして、ふんっと顔を背ける。

そんなミスティの小さな手を掴んで、クレアは頼み込んだ。


「頼む。教えてくれ。ティナたちを助けないと…」


そんなクレアの切実な頼み方に、ミスティは嫌そうな表情をやめた。

そして、きっぱりと答える。


「ミスティたちに出来ることは何にもないよ」


そんなミスティの答えに、クレアは目を見開いた。


「砂のお化けの巣は地面のずーっと下の方にあるみたいで、そこまで砂の流れに乗せて人間を運ぶんだって、ヴィレムが言ってたの」


「…だから、そこに行く手段はないって言うのか」


カークは困り果てたようにそう呟いた。

そんなカークを他所に、クレアは槍を手にし、地面に突き刺し始めた。


「クレア将軍? 何するつもりですか」


「掘る」


「いくらなんでも無理でしょ!」


「けど、何もしないなんて、俺にはできない!」


必死にいうクレアに、カークは困惑する。

クレアがここまで取り乱すことなど、今までに無かったのだ。

ティアナと出会う前までのクレアは、冷静でかつ頭のいい将軍だった。

任務を成功させるために様々な策を立て、時には自身の命をもかえりみず、特攻を仕掛ける勇気を持っていた。

ティアナと出会ってからは、その中に大きな優しさが加わって、より安定した強さを持つ将軍となっていた。

そんなクレアがここまで取り乱すのは、やはり一番大切に思っているティアナが居ないからなのだろうか。

カークは、クレアとティアナの出会いを知らない。

だが、カークがティアナと出会ったのは、クレアがティアナと出会ってまもない頃だった。

その当初でも、クレアはティアナのことに異常なほど特別気を使っていた気がする。

カークには、三年間一緒にいてもクレアのティアナへの過保護っぷりの理由がわからなかった。


「そんなことしてる間に、砂のお化けが全滅するか二人が死んじゃうかで決着が着いちゃうよ! それより、ミスティたちは祭器の塔に向かおう」


そんなミスティの言葉に、クレアは土を掘り、かき分けていく作業の手を少し止めた。


「ティナたちが居ないのにか…?」


「うん。砂のお化けたちをもし全部倒せたら、祭器の塔の近くに出口を開けてくれるんだって。」


「……その情報は確かなのか?」


「うん。ヴィレムとイレブロスが一回入った事があるんだよ! ミスティは話を聞いただけだけど間違えないよ!」


「クレア将軍、そっちに行きましょう。姫様たちが出てきた時、怪我でもしてたらすぐに助けられるように」


そんなカークの言葉に、クレアは少し考えるような表情をしてから、首を縦に振った。


「…あぁ、すまない。取り乱して…」


クレアがいつもの調子に戻ったことに、カークは安堵した。

あのままでは、ミスティとクレアの仲が悪くなる一方だ。

ミスティもそんなクレアを一瞥すると、いつもの調子で勝手に歩き出した。

そしてクレアとカークの方を振り返ると、にこっと笑う。


「あのお姉ちゃんにはウンディーネっていう妖精さんがついてるから心配ないよ! 早く行くよー!」


そんなミスティの後にクレアとカークが続こうとした瞬間、二人の目は大きく見開かれた。

ミスティの背後に、砂が大きく盛り上がったのだ。

これ以上仲間を連れていかれては堪らないと、クレアとカークが駆け出した時だった。

ミスティは流れるように左手を腰に下げた袋へ伸ばし、そして鎖を取り出した。

その鎖を振り、よっ、と言いながらディザにぶつけると、鎖とディザは緑色に輝きだした。

ミスティの一撃は目を外れていて、


あれでは倒せない!


と、カークが思う。

だが次の瞬間、ディザは弾け飛ぶように消えた…ように見えた。

実際には、消えたわけではなく、ミスティの足元に、目玉だけが残っていたようだ。

ミスティはその目玉を躊躇することなく踏み潰すと、くるりとクレアたちの方を振り返った。


「さぁ、行こっか!」


そんなミスティの幼い笑顔と恐ろしい強さに、クレアとカークは一抹の恐怖をおぼえるのだった。


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