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変わり者と妖精の木  作者: きょんしー
妖精使いへの一歩
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アルフヘイム②

「妖精の木の扉が開くのを止める方法はあるんですか?」


ティアナは、今までのイレブロスの話しを思い起こしながら、そう聞いた。

するとイレブロスは確かに首を縦に振った。


「うん、話は初めに戻るが、その扉が開くのを止めるために、私は君と、君の従者のクレア君の力を貸してほしいと言っている。」


「…私達に何か出来ると…?」


「妖精の木の扉が開かないようにするには、現在人間界に居る全ての妖精使いが妖精の力を妖精の木に打ち込まねばならない。一人でも欠ければ、それは無効らしい。そして、人数が多いほど、扉が開く時効は増えるのだよ。」


「そのために、私とクレアに、妖精の力を使ってほしいということですか。」


ティアナがそう言うと、イレブロスは曖昧に首を縦に振った。


「うん、だが、その前に一つ問題がある。」


「…それは…?」


「もし仮に妖精の木の扉が開いたとして、その扉からでて来る妖精達は、妖精使いのことを殺せないんだ。」


「それが、何か問題なんですか…?」


「そのせいで、フィーシアン唯一の妖精使い、ゾルが協力をしてくれないんだ。自身が死なぬなら、他の者がいくら死んでもいい、とね」


「そんな…」


ティアナは、イレブロスの言葉を聞いてまともに反応出来なかった。

一国の王ともあろう人が、自身の国の国民の命がどうでもよいと言っているのだ。


「だから、この先妖精の力を手に入れようとする者達のことは、ゾルのようにならないよう管理しなければならないんだよ。」


「でも…一人でも欠ければ無効なんですよね? それなら…扉が開くことを止められないのでは…?」


ティアナがそうイレブロスに聞くと、イレブロスは静かに微笑んだ。

その表情とは裏腹に、瞳は冷たい光を放つ。


「いや、手はある。例えばゾルを殺す…とかね。けど、彼女は強い。第二級の妖精を使役しているから。」


そんなイレブロスの言葉に、ティアナは驚いた。

穏やかで優しそうな人に見えるイレブロスの口から、さらりと殺すという言葉が出るとは。

それに、彼女、という単語から、フィーシアンの妖精使いであり、国王でもあるゾルという人物は女性であり、同時に女王だと言うことも読み取れた。

そんな思考を巡らすティアナの頭の中に、一つの疑問が浮かんだ。


「…第二級、というのは?」


そうティアナが聞くと、イレブロスはティアナから視線を外し、先ほど妖精がいる、と言っていた方向へ視線を向けた。


「妖精には、強さ順に階級が付けられているんだ。最も、その階級は人間の独断と偏見で歴代の妖精使いを参考につけたものだけどね。階級には、0から5までに分けられているんだ。」


「…それ、詳しく教えてもらえますか?」


そうティアナがイレブロスに言うと、イレブロスはもう一度ティアナに視線を向けた。


「うん、いいけど、君にはあまり参考にならないかもしれないよ。」


イレブロスはそう前置きしてから階級について話し始めた。


「まず、下の方の階級から。第五級はノーム。ノームは土を操る妖精とされているが、今までノームを使役したのはフィーシアンの三代国王のみで、その功績はあまり記録されていないようだ。第四級はシルフ。シルフは風を操る妖精で、現在はラミアが使役している妖精だよ。風を刃物のように扱うことが出来るだけでなく、自身を風で包み込んで壁のようにして、防御に使うことも出来る。第三級はサラマンダー。知っての通り、今はヴィレムの妖精だよ。炎を操ることが出来る妖精だ。それに、妖精の中では珍しく、サラマンダー自らも動き、攻撃することが出来るのだよ。」


そこまでイレブロスの説明を聞いて、ティアナはクレアとヴィレムが戦った時、急にクレアの胸に槍が突き刺さった光景を思い出した。

あれは、サラマンダーがクレアに攻撃したということなのだろう。

妖精の姿は、妖精使いにしか見えないため、その能力は凶器的だとティアナは思った。

そんなふうにティアナが思案している間にも、イレブロスは説明を続ける。


「そして、第二級がさっき話したゾルの妖精、ドワーフ。ドワーフは力の妖精と言われ、使役するものの身体能力を著しく増強させる。このドワーフを使役していた歴代の妖精使いは、いずれも強者だったようだよ。その上の、第一級がエルフ。エルフは光を操り、攻撃に長けた妖精だ。そして第ゼロ級がニンフェケーニヒ。ニンフェケーニヒは妖精王の名通り、強い力を擁しているようだが、今までの歴史でニンフェケーニヒを使役した人間が居なくてね。その力は未知数と言われている。」

「…あの、ウンディーネと、デュラハンは…?」


ティアナは、イレブロスの説明に疑問を浮かべた。

ティアナに力を貸してくれた妖精であるウンディーネと、ティアナの父、ヴァイゼアスの妖精であるデュラハンが階級の中に入っていなかったのだ。


「うん、これから説明する。まず、デュラハンは異級と言われ、大体第一級のエルフと同じかそれ以上の力を持つとされている。」


「…どうして普通の階級には含まれないのですか?」


「それは、デュラハンがニンフェケーニヒの配下の妖精ではないからだ。デュラハンは、ニンフェケーニヒの力の及ばない存在。今の人間界にいる唯一のニンフェケーニヒの敵の妖精というわけだ。まぁ、今はそのデュラハンのことも心配しなくていい。ヴァイゼアス殿はとても強い御方だからね。それから、君のそばに居るウンディーネだが、ウンディーネを使役した人物は、今までの歴史の中で一人もいない。故に、その強さや能力などがわからず階級に入らなかったというわけだ。」


イレブロスはそう説明しながら、ふと、記憶を呼び起こすかのように顎に手を当てた。


「君が力を使ったのを見る限りでは、治癒の能力があるようだけど…あのヴィレムのサラマンダーの能力をかき消したようだし…なんとも興味深いね。早く使いこなせるようになってゾルを打ち倒してほしいものだ。」


イレブロスがそう言い終えてにこりと笑った。

その瞬間、一つしかない入口の扉が開く。

そこから入ってきたのは、先程まで広場で稽古をしていたはずのクレアだった。


「やぁ、クレア君。君は、ノックというものを知らないのかい?」


そう、イレブロスが苦笑いしながらクレアに言うと、クレアはつっけんどんに言い放つ。


「ティナに、人殺しの依頼をするのはやめていただきたい。」

「…この部屋の話が筒抜けなのは何故かな?…まぁ、いい。君の大切なお姫様には、大体の説明はしたから、もう君に返すよ。」


イレブロスはそう言いながら片手をひらりと振った。


「…人に頼まなくとも、あなたならゾルという人を殺せるのでは? 第一級エルフの妖精使い、イレブロスさん」


そう、クレアは表情を緩めずに言った。

その言葉に、ティアナは驚いてイレブロスの顔を見た。


「…ラミアに聞いたのかい? 随分と情報が早いことだね。でも、私は落ちこぼれの部類でね。ヴィレムにもラミアにも、一度も勝てたことはないのだよ。私では、ゾルは殺せない。」


その言葉にクレアはイレブロスと視線を合わせて問いかけた。


「あなたは、今までに本気で誰かと戦ったことはお有りか?」


「…さぁ。」


クレアの問いかけに、はぐらかす様にしてイレブロスは口元に小さく笑みを浮かべた。


「あ、そうそう、ティアナちゃん。君には一つ、課題だよ。一日に一時間ほどでいい。ウンディーネに語りかけてみなさい。君ほどの才能ならば、すぐに妖精と対話ができるようになると思うよ。それから、ヴィレムの事だが、ヴィレムはカトランガの新しい祭器の塔を探しに行っているから、数週間は戻ってこない。それまで、この城の中に居ること、だそうだ。」


立ち上がり、クレアの横にいたティアナは、ヴィレムの名を聞いた途端に少し不機嫌になる。


「…祭器はお預けということですね」


「うん、そういうこと。」


「というか、オルゼビアの皇帝様は、勝手にカトランガに入っていいとでも思っているのですか?」


そうティアナが少し頬を膨らませながら聞くと、イレブロスは愉快そうに笑ってから答えた。


「ヴィレムは、ヴァイゼアス王から直々に入国許可証を貰っているよ。流石に不法入国は、皇帝たるものがする訳ないだろう。」


「…父上が…?」


ティアナは驚いたようにそう呟くが、自分が城にいた頃から、あまり何を考えているかわからなかったヴァイゼアス王のことを思い出して口をつぐんだ。


「そう。さぁ、もう行った行った。私はこれから少し、やる事があるのでね。」


そう言いながら、イレブロスは再び片手をふらふらと振った。

それを見て、ティアナとクレアは小さく頭を下げてから部屋から出た。


ふたりが出て行ってから数秒後、イレブロスはにっと口角を上げた。


「皆して、盗み聞きは良くないな。」


そうイレブロスが言うと、白い髪の、左目の下にほくろのある女性と、水色の髪を上の方で一纏めにした女性が屋根裏から飛び出し、イレブロスの目の前に着地した。


「…全く…人の国の人の城の屋根を改造するとは…。後でヴィレムに怒られても、私は知らないからね。ラミア、シュティレ。」


イレブロスはため息をつきながらそう二人の女性に言った。

すると、シュティレと呼ばれた水色の髪の女性が首を横にふるふると振った。


「…改造をしたのは、ラミアさん」


そう静かな声で言いながら、自分は関係がないというように首を横に振り続ける。


「まぁ、そうだろうと思っていたけどね。シュティレ、ミランくんの調子はどうだい?」


「…もう、ほとんど祭器の扱いは教えました。使いこなせるようになってきています…。」


「そうか。流石だね。シュティレはもう少しミランくんの祭器の扱いを指導してやってくれ。」


イレブロスがそう言うと、シュティレはこくりと首を縦に振ってから、飛び上がって屋根裏に姿を消した。


「それから…ラミア。ヴァイゼアス王の具合はどうだい」


イレブロスの表情からは笑みが消えて、深刻そうな面持ちでラミアに尋ねる。


「まだ、大丈夫ですが…。そろそろ、イレブロス様のお力が必要になるかと。」


「…わかった。」


イレブロスはそう短く返事をしながら、窓の外に視線を向けた。


「…なかなか、残された時間は少ないようだ。」


そんなイレブロスの呟きに、ラミアは静かに目を伏せた。

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