第四将軍クレア
「……。」
ティアナは、軽々と大きな扉を持ち上げて、その下敷きになっていた赤髪の男の人をまじまじと見る。
…赤い髪に、薄茶色のような、橙色のような明るい色の瞳と、左腕に大きな傷跡。
この人は…もしかしなくとも、第四将軍クレアだろう。と、ティアナは判断した。
そもそも、瞳の色や腕の傷から判断せずとも、赤い髪を持つ人物など、この城にはそうそう居るはずも無いのだ。
元々赤い髪を持つ人々は、カトランガの東方辺境に住む、狩猟能力に優れた少数民族の民であったが、100年ほど前のリザナス王国との戦争の際、その少数民族が住む土地は根こそぎ侵略されてしまったのだ。
そのため、その民族の民はカトランガ国内にはもう数人しか残っていないという。
その残りわずかな民族の代表的な人物こそ、第四将軍クレアなのであった。
彼は16歳にして年長者しかいない将軍の中にくい込むだけでなく、七大将軍のなかの第四位である、第四将軍にまで上り詰めた人物で、彼の槍術に切り裂けないものは無いとすら言われている。
そしてどんなに過酷な戦況をも打ち破り、無傷で帰還する事から敵軍の将が恐れて付けた彼の二つ名は、少しありきたりなようだが、不死身のクレアである。
「……。」
私が持っている『第四将軍クレア』に関しての情報を頭の中から全て引っ張り出しても、どうしても目の前にいる、少したれ目な優しげな青年がその人だとは思えなかった。
…別人…なのかしら。
腕の傷も、瞳の色も、知っている情報と一致しているのだけれど。
ティアナは赤髪の青年をじっと見つめながらそんなことを考えた。




