第6話 【運命の正体】
一方、鳴滝高校西山分校。
昼休み、賑やかさを増す教室の中で、和也はどこか確信めいた、けれど信じられないといった表情で凪の席へと歩み寄った。
「なんや、和也。メシか?」
「いや……メシは後や。なぁ凪、お前に真面目な話があるっちゃん」
和也は椅子を引き寄せて向かい側に座ると、周囲に聞こえないよう声を潜め、真剣な目で凪を直視した。
「お前、昨日言っとった『坂でコケた』ってやつ。本当は事故に遭いそうになった女の子ば庇ったっちゃろ?」
凪はわずかに眉をひそめた。
「別に、大したことやないって言ったやろ。なんでそんなこと」
「その女の子な、昨日家でボロボロの制服着て泣きそうな顔しとったとよ。三原の坂道で自転車の後輪がパンクして、ツツジに突っ込んで…それを、青い学年章をつけた男の人が身を挺して受け止めてくれたって」
「……!」
凪の身体がピクリと強張る。
「その人が腕ば激しく怪我して、制服もビリビリに破れて血が出てたって。時間も場所も、傷の具合も、お前と完全に一致すると」
和也は身を乗り出し、探るように凪の顔を覗き込んだ。
「なぁ凪…お前が助けたその子、うちの妹の『英理』やないと?」
「えっ!?」
その瞬間。
凪はガバッと立ち上がりかけた勢いに任せ、目を見開いたまま和也の顔を凝視した。
凪の喉から漏れ出る。
「い、妹…!? あの子が…お前の妹なん!?」
「お、おう! やっぱりお前やったとか! ガチで英理ば助けてくれたんやな!」
「待て、嘘やろ!?」
凪の頭の中で、昨日見た光景。
ツツジの中で自分を見上げ、息を飲んでいたあの吸い込まれそうな瞳の少女。
(あの子が、いつも和也が「家におるとうるさい」って言ってた、あの妹!?)
「お、お前、あんな…あんな妹がおったんか!?」
動揺のあまり声が裏返り、珍しく言葉を詰まらせる凪を見て、和也はぽかんとした後、ニタッと意地の悪い笑みを浮かべた。
「なんや凪、そんなに驚くことかい? 前から妹おるって言っとったやん。…まさか、英理に惚れたとか?」
「アホか! 違うわ!!」
凪は柄にもなく大声を上げて怒鳴り返し、慌てて手で顔を覆った。
右腕の激しい痛みなぞ完全に吹き飛んでしまっていた。
(嘘やろ。あの子が、和也の家におるんか?)




