第6話 【運命の正体】
昼休み、賑やかす西山分校の教室。
和也は弁当箱を抱えたまま、どこか探るような目で凪の席へ歩み寄ってきた。
「なんや、和也。メシか?」
「いや……メシは後。なぁ凪、ちょっと真面目な話ある」
和也は向かいの椅子を引き寄せて座ると、周りに聞こえないよう声を潜めた。
「お前が今朝言っとった『坂でコケた』ってやつ。ほんとは事故りかけた女子ば庇ったとやろ?」
凪はパンの袋を開ける手を止め、わずかに眉をひそめた。
「大したことないって言ったやろ。なんでや」
「昨日の夜、うちの妹が制服泥だらけで泣きそうに帰ってきたとさ。
三原の坂で転びかけたのを、鳴滝の制服着た男が庇ってくれたって」
「……」
「そいつが腕怪我して、制服破けて血が出てたって。時間も場所も、傷の具合も、今朝のお前と完全に一緒やんか」
和也は身を乗り出し、凪の顔を覗き込んだ。
「なぁ凪……お前が助けたの、うちの英理やないと?」
「……は?」
凪の手が完全に止まった。見開かれた目が、和也の顔を真っ直ぐに捉える。
「い、妹……? あの子がお前の妹なん?」
「やっぱりお前やったんか! ガチで英理ば助けてくれたと?」
「待て、嘘やろ……」
凪の脳裏に、ツツジの中で顔を上げ、驚いたように自分を見つめていたあの少女の姿が浮かぶ。
(あの子が……いつも和也が『家におるとうるさい』って言ってた妹……?)
あからさまに動揺して言葉を詰まらせる凪を見て、和也はニッと意地の悪い笑みを浮かべた。
「なんやその顔。前から妹おるって言っとったやん。まさかお前、英理に惚れたと?」
「アホか! 違うわ!!」
(嘘やろ……あの子が、和也の家におるんか)
「英理も、お前に礼ば言いたがっとったぞ」




