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凪の坂道  作者: 凪葉
第一章 高校生編

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第6話 【運命の正体】

一方、鳴滝高校西山分校。

 

昼休み、賑やかさを増す教室の中で、和也はどこか確信めいた、けれど信じられないといった表情で凪の席へと歩み寄った。

 

「なんや、和也。メシか?」


「いや……メシは後や。なぁ凪、お前に真面目な話があるっちゃん」

 

和也は椅子を引き寄せて向かい側に座ると、周囲に聞こえないよう声を潜め、真剣な目で凪を直視した。

 

「お前、昨日言っとった『坂でコケた』ってやつ。本当は事故に遭いそうになった女の子ば庇ったっちゃろ?」

 

凪はわずかに眉をひそめた。

 

「別に、大したことやないって言ったやろ。なんでそんなこと」

 

「その女の子な、昨日家でボロボロの制服着て泣きそうな顔しとったとよ。三原の坂道で自転車の後輪がパンクして、ツツジに突っ込んで…それを、青い学年章をつけた男の人が身を挺して受け止めてくれたって」

 

「……!」

凪の身体がピクリと強張る。

 

「その人が腕ば激しく怪我して、制服もビリビリに破れて血が出てたって。時間も場所も、傷の具合も、お前と完全に一致すると」

 

和也は身を乗り出し、探るように凪の顔を覗き込んだ。

 

「なぁ凪…お前が助けたその子、うちの妹の『英理』やないと?」

「えっ!?」

 

その瞬間。


凪はガバッと立ち上がりかけた勢いに任せ、目を見開いたまま和也の顔を凝視した。

凪の喉から漏れ出る。

 

「い、妹…!? あの子が…お前の妹なん!?」

 

「お、おう! やっぱりお前やったとか! ガチで英理ば助けてくれたんやな!」

 

「待て、嘘やろ!?」

 

凪の頭の中で、昨日見た光景。

ツツジの中で自分を見上げ、息を飲んでいたあの吸い込まれそうな瞳の少女。

 

(あの子が、いつも和也が「家におるとうるさい」って言ってた、あの妹!?)


「お、お前、あんな…あんな妹がおったんか!?」

 

動揺のあまり声が裏返り、珍しく言葉を詰まらせる凪を見て、和也はぽかんとした後、ニタッと意地の悪い笑みを浮かべた。

 

「なんや凪、そんなに驚くことかい? 前から妹おるって言っとったやん。…まさか、英理に惚れたとか?」

 

「アホか! 違うわ!!」

 

凪は柄にもなく大声を上げて怒鳴り返し、慌てて手で顔を覆った。


右腕の激しい痛みなぞ完全に吹き飛んでしまっていた。


(嘘やろ。あの子が、和也の家におるんか?)

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