第5話 【三原高校の美少女伝説】
翌日。
三原高校の校内では、一年生の一組にいる神之浦英理の話題でもちきりになっていた。
もともと入学当初から、その透き通るような肌と凛とした顔立ちで「かなりの美少女」と密かに注目を集めていた彼女だったが、ここ数日でその噂は一気に校内中へと広がっていた。
「ねえ、見た? 一組の神之浦さん……」
「見た見た! 朝の坂道で自転車事故に遭ったって聞いて心配しとったバッテン、怪我なくて良かったよね」
「っていうかさ……心配で遠目からチラッと見に行ったんだけど、マジで次元が違わん? 可愛すぎるやろ……」
廊下のあちこちから投げかけられる、熱を帯びた視線。
事故を心配して遠目から様子を伺いに来た男子生徒たちも、心配する気持ち以上に、その圧倒的な透明感とあまりの可愛さに息をのんで見惚れてしまっていた。
後に日本中を魅了することになるその輝きは、この時すでに、校内の視線を釘付けにするほど隠しきれないものになっていた。
しかし当の本人は、そんな周囲の狂乱や自分に向けられる視線には全く無自覚だった。
(制服、綺麗に洗濯してもらったけど…それに、凪さんの腕、大丈夫だったとかいな……)
そんな英理の隣に、親友のナオが呆れ顔で腰かけた。
「英理、あんたホントに自分の立場ば分かっとらんね。
周りの男子の視線、凄かとよ? あんたもう、三原高校の美少女伝説になりよるよ」
ナオが半ば誇らしげに、半ば呆れたように告げる。
「えっ? そんなことなかて。みんな、事故のこと心配してくれてるだけじゃないと?」
本気で不思議そうに首を傾げる英理。
「はぁ……その無自覚さが一番恐ろしかわ」
ナオは深く溜息をつきつつも、どこか嬉しそうに笑った。




