第5話 【坂道の向こうにいる君】
翌日
三原高校の校内では、一年一組の神之浦英理の話題が、あちこちで聞こえていた。
入学してから、彼女の容姿はすでに密かに注目を集めていた。
それが、昨日の事故をきっかけに一気に広がったらしい。
「ねえ、見た? 一組の神之浦さん……」
「見た見た! 朝の坂道で自転車事故に遭ったって聞いて心配しとったバッテン、怪我なくて良かったよね」
「っていうかさ……心配で遠目からチラッと見に行ったんだけど、マジで次元が違わん? 可愛すぎるやろ……」
廊下のあちこちから投げかけられる、熱を帯びた視線。
事故を心配して遠目から様子を伺いに来た男子生徒たちも、心配する気持ち以上に、その圧倒的な透明感とあまりの可愛さに息をのんで見惚れてしまっていた。
周囲が勝手に色めき立っていることなど、本人は露ほども知らなかった。
(制服、綺麗に洗濯してもらったけど……それに、凪さんの腕、大丈夫だったとかいな……)
そんな英理の隣に、親友のナオが呆れ顔で腰かけた。
「英理、あんたホントに自分の立場ば分かっとらんね。
周りの男子の視線、凄かとよ? あんたもう、三原高校の美少女伝説になりよるよ」
ナオが半ば誇らしげに、半ば呆れたように告げる。
「えっ? そんなことなかて。みんな、事故のこと心配してくれてるだけじゃないと?」
本気で不思議そうに首を傾げる英理。
「はぁ……その無自覚さが一番恐ろしかわ」




