第55話 【ただ寄り添う距離で】
三原高校の教室。
ナオは英理の隣で、いつも通りに過ごしていた。
休み時間、ナオは何気ない調子で口を開いた。
「あ、そういえば昨日……凪くんも叔母さんの体調が悪くて学校休んどったみたいよ」
「……叔母さんの体調?」
「そう。凪くんも、来れなかったんだ」
「……そっか」
英理は、それ以上凪の名前を口にしなかった。
窓の外を眺める横顔は、どこか考え込んでいるようだった。
♢
一方、鳴滝高校の教室でも、和也は凪と以前と変わらない距離感で接していた。
凪は登校を再開したものの、ここ数日はどこか上の空だった。
和也も、あえて「英理はどうだ」などと訊ねることはしなかった。
ナオも和也も、今は二人のことに口を出さず、ただいつも通り友人として接していた。
そんな中、今日は朝から少しだけ凪の様子が違った。
「和也、この前貸してくれた『モンスターハンターポータブル 2』、やっと最後の緊急クエストクリアできたぞ!」
凪が目を輝かせながら、カバンからPSPを取り出した。
和也は少し驚いて凪の方を向いた。
久しぶりに見る凪の明るい顔に、和也は少しだけ安心した。
「お、マジか! あそこ、ソロやとかなり苦戦するはずやろ。お前、ようクリアしたな」
凪は照れくさそうに頭をかいた。
「いや、かなり時間かかったよ。でも、やってる間は何もかも忘れて熱中できたから……なんか、久しぶりに心から楽しかった気がする」
「そうか。それは良かった」
和也はそう言って笑った。
凪はPSPの画面を覗き込みながら、久しぶりに友人との他愛ない会話を楽しんでいた。




