第49話 【最悪のエンカウント】
(な、なんで!? なんで二人がここにいるんと!?)
ナオの頭の中が真っ白になる。
この近くのマックに他校の生徒が来ること自体は何もおかしくない。
タイミングが悪すぎる。
ナオは慌てて自分たちのテーブルに視線を戻す。
今、この席はどう見ても「男女二人ずつのダブルデート」。
ナオと長門、そして英理の隣には、さっきから楽しそうに英理を笑わせている裕介が。
(うちと長門くんはいいとして…問題は英理よ!!)
ナオは冷や汗が止まらなくなってきた。
凪と英理は、もどかしい関係。
しかも、二人ともどこか天然で、お互いを大切に思うがあまり、一度こじれると斜め上の、わけのわからない方向へ突っ走ってしまうかもしれない…
凪がこの状況を見たら。
『あ…英理、今日マックに行こうって誘ってくれたメール、俺が断った。
俺に愛想つかして、そうやな、
英理は学校で人気あるみたいやし…
俺以外の男と楽しそうに。
俺が邪魔したら悪い、もう身を引かんといかん。英理の幸せを応援しよう』
とか、少女漫画のすれ違いみたいな勘違いを爆発させるに決まっている。
そして、それを見た英理が『凪くん、私のことどうでもええんと…』
と大ショックを受けて、また大パニックに逆戻りする未来が、ナオの脳裏に鮮明に浮かび上がった。
(ヤバい、ヤバすぎる…! あいつら、ここで鉢合わせたら今度こそ完全に修復不可能なレベルでこじれる!!)
「…っ!」
(お願い、気づかんといて! こっち見んといて!)
ナオは祈るような気持ちで、心の中で必死に念じ続ける。
(お願いやけん、あっちの奥の、一番遠い席に行って!! そこ、あそこ空いとるやろ!? そこに座って、頼むけん!!)
しかし、隣の英理は知る由もない。
「キャハハハ! 長門くん、中坊の時そんなことしよったんと!? お腹痛い、もう無理ー!」
よく通る可愛い笑い声は、間違いなく店内に響き渡った。
(英理、あんた声が大きい!! 頼むけん今はちょっと静かにしてーっ!!)
(あんた、今自分がどれだけヤバい状況におるか分かとる!? すぐそこに、凪くんがおるんよ!? もし今、この『裕介くんと楽しそうにダブルデートしとる現場』を見られたら、マジで取り返しのつかんことになるんやけんね!!)
♢
(よしっ! 神様ありがとう…!!)
ナオの必死の祈りが通じたのか、和也と凪は店のずーっと奥、4人の席から一番離れた窓際の席にカバンを置き、場所を確保した。
ここからなら、よほど注意して見ない限り、英理たちの姿が視界に入ることはない。
ナオが「ふぅーっ…」と、今日一番の長いため息をついて胸をなでおろした、まさにその瞬間。
「あー、やっぱりてりたま美味すぎるわ! 俺、もう一個おかわり注文してくるわ!」
裕介がパンと自分の膝を叩き、勢いよく立ち上がった。
「みんなは? 何かいるもんあったら、ついでに買ってくるけど」
まだ楽しさの余韻でテンションが上がっている英理が、パッと目を輝かせて裕介に続いた。
「あ、私も行く! ポテトもうちょっと食べたいし、マックフルーリーも気になっとったんとね!」
「お、マジで? じゃあ一緒に行こうや!」
二人は楽しそうに肩を並べ、レジカウンターの方へと歩き出す。
だが、奥の席にカバンを置き終えた和也と凪の二人も、そのまま注文をするためにレジカウンターへと向かって歩き出した。




