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凪の坂道  作者: 凪葉
第一章 高校生編

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第46話 【親友の幸せと、少しの寂しさ】

「なぁ、ナオ。ちょっと気になったんだけど、神之浦さんって、誰か付き合っとる人とかおらんの?」


「え? 英理?」


突然の質問に、ナオは少し意表を突かれる。


「おう。もし 誰か特定の奴がおるんなら、その人と一緒にマックに来てもらえば、気兼ねなく4人で食べられるんじゃないかと思ってさ」


「あーなるほどね」


ナオは納得したように頷いたものの、すぐに思い出したように苦笑いを浮かべた。


「おるには、おるんとよ。周りから見たら完全に『付き合っとるやろ』って距離感なんだけど、実際はまだ付き合ってない、めちゃくちゃもどかしい関係なんよね」


「へぇ…そうなんだ」


長門はなるべく平静を装って相槌を打っが、その内心は穏やかではなかった。


(マジかよ。あの神之浦さんに、そんな特別な男がおったんか!)


長門にとって、そして三原高校の男子たちにとって、完全に初耳だった。


(これは…うちの学校の男たちに知られたら一大事だぞ。)


「あ、あのさ、ナオ。一応、確認なんだけど」


長門は少し声を潜め、探るようにナオの顔を覗き込む。


「っていうことは、現時点では、神之浦さんには『彼氏はいない』ってことで合っとるんよな?」


「うん、そうなるのかな…」


「そ、そうか。じゃあ、名実ともにフリーってことか」


「あ、じゃあさ!」


長門はポンと手を叩くと、名案を思いついたように目を輝かせた。


「俺の親友に、裕介」(ゆうすけ)ってやつがおるんだけど、あいつを呼んで、今回だけ神之浦さんと4人でマックに行くっていう案はどうかな?」


「裕介くん?」


ナオは少し驚いたように聞き返した。


「おう。裕介なら気さくなやつだし、神之浦さんともすぐ馴染めると思うんよ。それに、2対2なら神之浦さんも『カップルの邪魔をしとる』って気まずい思いをせんで済むやろ?


『裕介も新メニュー食べたいって言うけん、みんなで行こうや!』って誘えば、あいつの性格なら『行く行く!』ってなってくれんかね?」


「あー確かに! それなら英理も変に気を遣わんで、純粋にみんなで楽しくマックに行けそうやね!」


「やろ? 神之浦さん、今売店に行っとるんよな? 戻ってきたら、さっそく裕介を巻き込んで誘ってみようや」


「うん! 長門くん、ナイスアイデア!」


長門はさっそく席を立ち、「ちょっと裕介のクラス行ってくるわ!」とナオに告げて教室を飛び出して行った。


後ろの席で友達とくだらない話をしていた裕介の肩をガシッと掴む。


「裕介、ちょっとええか? 今日の放課後、お願いがあるんだけど一緒にマック来てくれん?」


「マック? ええけど急にどうしたんや。何か理由でもあるんか?」


長門は少し声を潜め、周囲に聞こえないように事情を説明する。


「実はちょっと訳ありでさ。ナオと、あと神之浦さんも来ることになって。人数合わせみたいな感じで、4人で来てほしいんよ」


その瞬間、ガタッと椅子が鳴るほどの勢いで身を乗り出してきた。


「えっ、神之浦さん!? マジで!? それってヤバすぎるやろ!!」


「声が大きいわ、お前!」


裕介興奮のあまり声を震わせながら、長門に詰め寄ってくる。


「ってことは何、俺、あの神之浦さんの彼氏みたいなポジションで一緒にマック行くってこと!?

行く、絶対行くわ!!! 今日の放課後な、絶対遅れんように校門の前で待っとるけん!!」


「おう、じゃあ放課後な。ナオにもそう伝えておくわ」


長門が自分の教室に戻ると、ナオが心配そうに待っていた。


「裕介くん、なんて言っとった?」


「めちゃくちゃ乗り気だったわ。快く(?)オッケーしてくれた」


「本当? 良かった~!」


ナオはホッして、よしこれで準備は整った。あとは売店から戻ってくる英理を、裕介も交えた『4人のてりたまパーティー』に自然な形で巻き込むだけだ。


しばらくして、売店で炭酸飲料を買った英理が、何事もなかったかのような笑顔を作って教室に戻ってきた。


「ただいまー! ふぅ、売店めちゃくちゃ混んどったばい!」


席に着こうとする英理に、ナオは、わざと困ったような顔をして声をかけた。


「あ、英理! おかえり。あのね、ちょっと困ったことになってさ」


「え? どうしたんと?」


英理はジュースのボトルを置きながら、不思議そうにナオを見る。


「さっきね、長門くんの親友の裕介くんが来てさ『今日放課後、一緒にマック行こうや! 新作のてりたま食べたい!』って、うちらの話を聞いて勝手に盛り上がっちゃって」


ナオは長門と目配せをしながら、芝居がかったトーンで続ける。


「うち、もう一人誘っちゃった形になってしまってさ。

長門くん、裕介くんと、うちの3人で行くのも何か変やろ? やけん、英理も絶対来て! 4人で行こうや!」


「えっ裕介くんも?」


英理は驚く!

自分が2人の邪魔をしてしまうと身を引いたはずが、なぜか男子がもう一人増えて4人で行く流れになっている。


…すかさず長門も。


「そうそう! お願い、神之浦さんも来てくれんと、俺、裕介とナオの3人でなんか妙な空気になってしまうけん!


「え、えぇ? 私が一緒でもええんなら、行くけど」


「やったー! ありがと、英理!」


英理は。

「じゃあ放課後、楽しみやね!」

と、今度は本当に嬉しそうに笑った。

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