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第38話 【不器用すぎる、思いの伝え方】

「……ハッ、随分と偉そうな口きくようになったな。最近、英理と仲がいいからって調子乗っとるんやないか? お前に英理の何がわかるんや」


タカミは吐き捨てるように言い、それから英理の方へ向き直って笑みを貼り付けた。


「英理、よくわかったやろ? 結局こいつは、こんな風に外の女といちゃついてるような奴なんよ。俺のほうが、ずっと前から……」


「……英理。もう、隠さんでええけん」


タカミは声を震わせ、懇願するように英理を見つめた。


「俺、ずっと前から英理を見てきた。ただの幼馴染なんかで終わらせる気はなか。

あんな奴に、他のどの男にだって、お前ば渡したくなかよ! お前は俺にとって特別な存在やけん……代わりなんか、どこ探したっておるわけなかろ!」


「英理、俺がお前ば絶対に幸せにするけん、誰にも渡さんけん……っ。俺、お前のことが好きなんよ」


ナオは絶句したまま、信じられないものを見る目でタカミを見つめている。


「和也から聞いた。まだあいつと付き合ってないんやろ? だったらチャンスはあるってことや。

英理、俺と付き合ってくれ。あんな奴より、ずっと昔からお前のことを知っとる俺のほうが、絶対にお前を幸せにできる」


凪は、タカミの独りよがりな言葉に眉をひそめつつも、まっすぐ英理を見つめた。


その瞳に宿る毅然とした意志を確認し、凪は静かに、小さく一度だけ頷く。


(お前が自分で決めることや。俺はそれを信じて待っとるから)


その無言のメッセージを汲み取り、英理は息を整えてタカミに向き直った。


「タカミくん。今の話、ちゃんと聞いたよ。でも、ここで話すことやなか。ちゃんと外に出て話そう」


英理は心配そうに見守るナオと凪に軽く視線を送り、タカミを促して店の外へと歩き出した。


♢


──ミライモールの外。夕闇が迫り、冷たい風が吹き抜ける。


「英理、お願いやけん。俺を見てくれ。凪なんかより、ずっと昔から隣におった俺を見てよ」


タカミは英理の腕を掴もうと一歩踏み出し、英理がわずかに身を引いたことで空を切った。

彼は焦りを隠さないまま、さらにまくし立てる。


「俺がどれだけ英理を大切に思っとるか、お前だって分かるはずやろ。

あんな奴より、俺のほうがずっとお前のこと分かってるし、大事にできる。それを証明させてくれ」


英理は黙ってタカミを見つめ返した。


その冷めた視線に追い詰められたように、タカミは険しい顔で呟く。


「……俺、このままじゃ自分がどうなるか分からんとよ。

凪の奴が視界に入るだけで、何をしてしまうか自分でも怖いくらいなんや。英理……」


「……タカミくん。それが、私を大切にするっていうやり方なん?」


英理は一度言葉を切り、タカミの目を真っ直ぐに見据えた。


「タカミくんとは昔からずっと一緒やったし、私のことを誰よりも知ってくれているのは本当やし、感謝しとる。

気心も知れとるし、一番安心できる相手やった。それは嘘やなかよ」


「タカミくんが今、私に求めとる『付き合ってほしい』っていう関係は、これまで私たちが積み重ねてきたものとは別のものやけん


「私の今の返事は、凪くんがどうこうとか、そういうのは関係ない。

私がタカミくんのことをちゃんと考えて出した答えやけん、最後まで聞いて」


「私は……タカミくんと付き合うことはできんよ」


「大切にしてくれるって言ってくれた気持ちは嬉しい。

でも、私がタカミくんに対して持っとるのは、幼馴染としての情とか、家族に近い大切な存在っていう気持ちであって……」


「恋愛として相手を見る気持ちは、私にはなかよ」


「気持ちに応えられなくて、本当にごめん」


英理の言葉に飾り気はなかった。


「これが私の正直な気持ち。

タカミくんのことは大切やけど、それは男女として付き合うっていう意味の好きとは違うんと」

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