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凪の坂道  作者: 凪葉
第一章 高校生編

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第36話 【フタバブックス】

ナオの力強い申し出に、英理はハッとした。


(ナオがいてくれたら、凪くんとナオに話してもらっている間、私がタカミくんを説得すれば…)


英理はふっと息を吐き、少しだけ表情を落ち着かせると、タカミを真っ直ぐに見つめた。


「…わかった。じゃあ、来て。その代わり、私の用事を優先させてもらうからね」


「もちろん。英理の用事なら、俺も大事にするけん」


タカミは満面の笑みでそう答えたが、英理はその言葉の裏にある執着の重さに背筋が寒くなった。



ミライモールのフタバブックスに到着し、整然と並ぶ書棚の間を抜けてカフェコーナーへと足を進める。


タカミは周囲を見回しながら、わざとらしいほど呆れたような溜息をついた。


「なんだ、用事って本を買いに来ただけなん? それが今日の『大事な用事』やったんかよ」


英理は焦りとともに首を横に振る。


「違う、そうじゃないんと。本が目的じゃないから」


その時、視線の先に凪の姿が見えた。カフェコーナーの席で、待っている彼の背中を見つけ、英理は胸がキュッと締め付けられた。


ナオは英理の横で状況を的確に把握する。


彼女は英理の背中をポンと押し、力強い眼差しを向け。


「英理、私に任せて。凪くんには私から事情を話して、先に話し相手になっとくから。

その代わり、英理はタカミさんの話を早く切り上げて、絶対こっちに来るんよ。いい?」


ナオはタカミを牽制するようにチラリと一瞥をくれると、タカミの反応を待たずにスタスタとカフェコーナーへ歩き出した。


「ちょ、おい…!」


タカミがナオを追いかけようと一歩踏み出した瞬間、英理は勇気を振り絞ってタカミの前に立ち塞がった。


「タカミくん! 私が話したいのはここじゃないんと。…本以外の、もっと大事な話なんよ」


(一方、ナオと凪)

「そうか。英理、タカミと一緒なのか」


凪の落ち着いた反応に、ナオは少し驚きつつも続けた。


「うん。英理も困っとるみたいだし。ごめんね、せっかく二人で会う約束だったのに、またこんな形で迷惑かけて」


凪は首を横に振った。


「謝らなくていいよ。ナオ、気遣ってくれてありがとう。

俺も、学校でタカミから色々聞いてるし、事情は分かってるから。

まあ、そういうこと。じゃあ、英理の用事が終わるまで、ナオと二人で話そうか」


凪が淡々と言った言葉に、ナオは目を丸くした。


「えっ凪くん、事情知っとるの? タカミさんと直接話したの?」


ナオの問いかけに、凪は静かに首を横に振った。


「いや、あいつとは直接話してないよ。全部、和也から聞いたんだ」


凪は少し自嘲気味に笑う。


「あいつ、俺のこと目の敵にしてるからな。

和也にも『凪とはとにかく揉めるな、お前が火種になるな』って、何度も口酸っぱく念を押されてるんだ。

まあ、和也もハラハラしてるんだろうな」


その言葉に、ナオは深く納得したように頷いた。


「なるほどね。和也くんも、二人を止めるのに必死なんだね」



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