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第35話 【空気読まなさすぎじゃない】

放課後の三原高校前。


英理と友人のナオは並んで歩いていた。


先日、凪が家に遊びに来てくれたことや、そこへ「タカミ」が突然押しかけてきたことを英理から聞いたナオは、少し呆れたように言った。


「ふぅん……そのタカミくんって人、なんか面倒くさいね。人の家に押しかけて勝手に熱くなるとか、ちょっと引くわ」


「……う、うん。タカミくんは昔からの幼馴染なんだけど、私の態度が曖昧だったのも良くなかったけん」


英理は苦笑いを浮かべながら、ぎゅっと鞄の紐を握った。


「……でね、今日この後、凪くんとミライモールのフタバブックスで待ち合わせしとるとよ。ちょっと大事な話があるけん」


「大事な話って、そのタカミくんとのことも含めて?」


「うん。お母さんからも『幼馴染だからこそ、自分の気持ちを曖昧にせず答えを出しなさい』って言われて……。だから今日、凪くんとちゃんと話して、自分の気持ちを伝えるつもり。タカミくんにも、近いうちにちゃんとお断りする……」


「そっか。英理がそこまで覚悟決めとるなら、私は応援するよ! 凪くんと、しっかり話しておいでね」


「ありがとう、ナオ」


ナオの言葉に背中を押され、英理は小さく、けれど力強く頷いた。


♢


二人が校門を出ようとしたところで、門の脇に立っていたタカミが歩み寄ってきた。


「英理」


驚いて顔を上げると、そこにはタカミが立っていた。


「タカミくん? え、なんでここに?」


英理が困ったように尋ねると、ナオが英理の袖を軽く引いた。


「ねえ英理、この人誰? タカミくんって……あの幼馴染の人?」


「英理、ちょっといいか? 今から話がしたいんよ。昨日のことの続き、ちゃんとせんと気が済まんとよ」


英理は困ったように首を振った。


「タカミくん、ごめんね。今から本当に大事な用事があるんと。やから、また別の機会に」


「用事? 大丈夫、わかっとるよ。俺も一緒に行くけん。英理の用事なら、俺も手伝ってやりたいしな」


タカミが当たり前のように英理との距離を詰める。


ナオは眉をひそめた。

(えっ、なにこの人。ちょっと空気読まなすぎじゃない?)


英理は焦った。

今から凪と会うのに、タカミまでついてきたら困る。

凪にだけは、嫌な思いをさせたくなかった。


英理は声を少し強めた。

「タカミくん、本当に用事なんよ。二人で大事な話をせんといかんの。だから、本当に無理なん!」


「二人で大事な話? 誰とだよ。まさか、凪か? まあいいやん、俺も一緒におってやればいいだけやろ」


英理は思わず息を呑んだ。


「分かった。少しなら時間あるから、どんな話?」


英理が折れると、タカミは待ってましたとばかりに笑った。


「そうか! 良かった。ほな、今から近くのファミレスに行こう。ゆっくり話したいんよ」


「えっ、ファミレス? ごめん、そこまでは時間取れんと。立ち話くらいなら、と思ったんよ」


「じゃあ、英理の用事に付き合うから。そこで話せばいいだろ?」


「……っ」


英理は言葉を失った。

このまま凪との待ち合わせ場所にタカミを連れて行くなんて、絶対にできない。


そのとき、ナオが英理の腕をグイッと引き寄せた。

「ねえ、ちょっと。このまま放っておくの?」


ナオは英理の耳元で小声で尋ねた。

「ねえ、もしかして、あのタカミさんって人のこと、凪くんは知ってるの?」


「……うん、同じクラスだし、和也もよく知ってる人なんよ」


「分かった。それなら、私も一緒について行く。英理一人じゃ心配やけん!」


英理は驚いてナオを見た。

「ナオ……」


「大丈夫。凪くんにも、ちゃんと事情を説明すればいいやろ?」


ナオはそう言って、英理の手をぎゅっと握った。

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