第20話 【最高の特効薬】
「……さっきは、ほんまにごめん」
凪は視線を落としたまま、低い声でそう言った。
「俺がもっと上手く立ち回れてたら、あんな嫌な思いをさせることはなかったはずやのに」
ナオは軽くかぶりを振る。
「凪くん、謝ることなかよ。和也くんがあんな調子やったし。
それに、あの状況で庇ってくれたこと、ちゃんと分かっとるけん」
ナオがそう言って笑ってみせたが、凪の視線はすぐに英理へと戻る。
「英理……大丈夫か?」
凪の声は低く、それだけにやけにまっすぐだった。
「今、俺にできることがあったら何でも言ってや。どんなことでもいいから」
英理はわずかに息を呑み、それから凪を見つめ返す。
「何でも、お願いしていいと?」
「ああ。俺にできることなら、何でもする」
「じゃあ……」
英理は震える指先で、凪の袖を小さく掴んだ。
「このまま、もう少しだけ一緒におってくれる? 誰の目も気にせず、ただの『凪くん』と『私』として」
凪はわずかに目を見張り、それから無愛想に頷いた。
「……そんなんでええんなら。気が済むまで、ずっと一緒におるよ。だから、もうそんな顔すんな」
英理の表情が、嘘のようにパッと明るくなった。
斜め向かいの席で、ナオはストローでグラスの氷を音を立ててかき混ぜる。
(――はいはい、お幸せにね)
(まあ、英理が元気になったんなら、それでよしとしますか)
ナオはテーブルに肘をつき、呆れたような、しかしどこか満足そうな笑みを浮かべる。
「……さて、と。いつまでそうやって見つめ合っとるつもり? さっきの騒ぎですっかり冷えちゃったけん、何か甘いものでも頼むよ。あんなところで捕まってるあいつの分までさ」




