167/176
第166話 【一生、よろしくね】
ひかりが生まれて数ヶ月が経った頃。
英理と凪は、二人にとっての「最大の恩人」であるナオを、長崎の海を一望できる静かな料亭に招待した。
「なによ、改まって。ひかりが生まれた時だって、ちゃんとお祝いしてあげたでしょ?」
照れ隠しに笑いながら、ナオは席に着いた。目の前の二人は、真剣な表情を浮かべていた。
「ナオ。お前がおらんかったら、俺はあのまま暗闇で腐っとった。お前がいてくれたから、俺はもう一度、英理と歩くことができた。……そして今、俺のこの手に、この子を抱くことができたんや。ほんまに、ありがとうな」
英理もまた、ナオの手を強く握りしめた。
「ナオ。……あんたは、うちが『女優の英理』として迷子になっとる時も、『友達の英理』として叱ってくれた。あんたがうちの帰る場所を守ってくれとったけん、うちは独りじゃなかったんよ。……ほんまに、ありがとう」
凪と英理、それぞれからの手紙が、テーブルの上に並べられていた。
「……バカやね、あんたら。うちは、二人が笑っとるのを見るのが、一番の報酬だったんよ……」
ナオは二人からの手紙を胸に抱き、声をあげて泣いた。
「ナオ。これからも、うちら家族の特等席には、あんたがおらんと困るけん。一生、よろしくね」
「当たり前やろ! ひかりの反抗期はうちが相談に乗るんやから、覚悟しときんさいよ!」




