↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
108/176

第3章 第107話 【孤独な愛の結末】

2016年、12月24日。


冷たい朝。

英理は撮影現場へ向かうロケ車の中で、何度もスマホを確認していた。


凪に送った『ありがとう』のメッセージ。その横には、一晩経っても「既読」の文字は現れなかった。


(……凪くん、怒っとるんかな。それとも、もう……)


胸元で、服の下に隠したネックレスが冷たく肌に触れる。


♢


その夜、テレビのニュースは、昨夜のマンション火災での「奇跡の救出劇」を繰り返し報じていた。


「幼い少女を救い出したレスキュー隊員は、現在も意識不明の重体です」


そのニュースを、棟方との食事中に目にした英理は、言いようのない胸騒ぎに襲われた。


画面に映し出された、焼け焦げたオレンジ色の救助服。その背中越しに見える、不器用で強靭な肩のライン。


「……勇気あるね、この隊員。でも、まあ僕たちとは住む世界が違うからね。家族もいないのかな」


棟方の何気ない、どこか他人事のような言葉。それが、今の英理には耐えがたいほど冷酷に響いた。


♢


一方、救急病院のICU(集中治療室)には、重苦しい機械音だけが響いていた。


凪は人工呼吸器に繋がれたまま、一度も指先さえ動かさない。


医師の見解は厳しいものだった。


「……火傷や外傷などの身体的な損傷もさることながら、意識が戻るかどうかは全く予断を許しません。深刻な酸素欠乏による影響もあり、このまま深い眠りから覚めない可能性もあります」


そして、凪には東京で連絡を取れる家族がいなかった。


万が一の緊急連絡先は長崎の祖母の家。

だが祖母は他界しており、空き家の状態で、連絡を取れる者はいなかった。


英理への影響を恐れ、親しい友人の連絡先も、彼のロッカーのどこにも記されていなかった。


「……あいつ、家族はおらんのか?」


署の仲間たちは、現場で回収された黒焦げになったスマホと、灰になりかけた財布を前に途方に暮れていた。


誰にも連絡先を残さず、誰にも知らせることなく、凪は病院のベッドで眠り続けていた。


♢


一方、撮影現場へ向かうロケ車の中。


英理はスマホの「未読」の画面をじっと見つめていた。


(……凪くん、どこにおるん? なんで、何も教えてくれんの……?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。