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我が名はヴィラン ~異世界でモンスターを売る武器商人~  作者: 東西南北


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第7話 影の支配者と、冷たい眼光

それから1時間後……


『これより開会式を行います。

全校生徒は速やかに体育館へ集合して下さい。繰り返します……』


「え?書記長が保健室に!?」


「ええ、ローズ会長に知らせてくれって……」


「そう……教えてくれてありがとう」


「どういたしまして!それでは失礼します!」


女子生徒が離れるとローズはふぅっと小さくため息を吐く。


「……大丈夫かしら、あいつ」


「なにが大丈夫なのだ?ローズよ!」


溜め息を吐いたローズの耳に、すかした足音と、それに群がるどこか浮ついた甲高い声が届く。

声の主は、ローズの兄であるアルク王子だった。

彼は隙なくセットされた艶のある黒い短髪を揺らし、いかにも自分を男前だと自覚しているような余裕の笑みを浮かべ、ゆったりと歩いてくる。精悍な顔立ちは確かに整っているものの、少し持ち上げられた眉根や見下すような瞳には、隠しきれない傲慢さと嫌みっぽさが滲み出ていた。

その両脇には、彼の上辺だけの甘い言葉にすっかり骨抜きにされた様子の女子生徒が二人。うっとりと鼻にかかった声を上げながらぴったりと身体を寄せており、アルクはそれを当然の権利とばかりに誇らしげに侍らせ、ローズへとなれなれしく視線を投げかけていた。


「アルクお兄様……どうしてこちらに?」


「フランクはどこだ?

あいつに頼みたいことがあってな……」


「……フランクでしたら、今、保健室におりますが……」


「なに? チィ!……あの無能め!

僕に徒労させるとは。開会式が終わったら僕の所に来るように伝えといてくれ」


「……承知いたしました」


そう言うと、アルクは二人の女子生徒を引き連れて踵を返した。だが、ふと思い出したように足を止め、肩越しにローズを振り返る。


「ああ……それと、遅くなったけど会長当選おめでとう!愚民共の胡麻すりがよほど上手だったんだなぁ」


「1つお聞きしてもよろしいですか?」


「ん?なにかな?……我が愛しき妹よ」


「フランクを信用していますか?」


「勿論だとも!なぜ、そんなことを聞く?」


「お兄様……率直に申します。

フランクをあまり信用しないほうがいい……

アレは……得体が知れません!」


「はははっ!あんな雑魚にビビってるのか!?はははっ!」


「……いや、別に恐れているわけでは!」


「心配はご無用だ!妹よ!

スキルも魔法も何も持たない……神に見放された無能如き……いつでも始末できる!

わかるかい?この意味が……わかるかい?」


「フフフフ!」


「きゃはは!」


「…………」


「あの無能が書記長になったおかげで、学園の莫大な金も、お前の動きも、すべて僕の思い通りだからな。……つまり、僕はこの神炎学園の影の支配者ってわけ!理解できるよな?ローズ」


「……はい」


「結構!早く体育館に来いよローズ!!

ふははははは!!」


そう捨て台詞を吐き、アルクたちは去って行った。


「……フランク」


ポツリとこぼれた名前とともに、ローズの背筋を冷たいものが走る。


(思い返せば、一年前までは彼の存在すら気にしたことがなかった……)


魔法もスキルもないフランクは、いつもいじめっ子たちに都合よくこき使われている存在。

ローズにとっても可哀想な無能力者程度の認識でしかなかった。

転機は、ダンジョンの実習授業で初めて同じ班になったときだ。

理不尽な嫌がらさせを受け、危険な雑用を押し付けられても、フランクは嫌な顔ひとつせず穏やかに微笑んでいた。


『大丈夫だよ、ありがとう』


その姿を見て、ローズは心が広くて優しい人なんだなと思い、すぐに意気投合……友達になった。


そんなある日……ローズとフランクは別の班になった。

フランクの班にいたのは、日頃から彼を無能力者と見下し、都合よくこき使っていたいじめっ子たちだった。

尻を蹴飛ばされて荷物を背負うフランクを心配げに見送った数時間後……事件が起こる。

突如としてダンジョン内で発生した異変。

いじめっ子たちは全員、凄惨な形で命を落とした。

生き残ったのは、フランクただ一人。

彼は血まみれになりながら、救援隊のもとへ狂ったように駆け込んできたのだ。

切り落とされたいじめっ子の生首を、まるで愛おしい宝物のように強く、強く抱きしめながら。


『助けて……っ!助けて下さい!

まだ奥にみんなが……っ! 彼は僕を庇ってくれて……グスッ!』


自分の無力さを責め、涙と鼻水にまみれて絶叫するフランク。

誰もが彼を惨劇の被害者として同情し、哀れんだ。

……ローズもその1人だった。

涙でぐしゃぐしゃになったフランクに声をかけようとしたその時、ローズは見てしまった。

その瞳の奥に、ほんの一瞬だけ浮かんだ……ゾッとするほど冷たく、澄み切った暗い光を。


(彼は……本当に『被害者』だったの……?)


払いのけられない胸騒ぎを振り払うように一呼吸置くと、ローズは静かに体育館へと歩き出した。


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