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我が名はヴィラン ~異世界でモンスターを売る武器商人~  作者: 東西南北


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第5話 その名はフランク

……翌日。


――神炎学園――


神炎帝国に1つしかない学園。

選りすぐりのエリートや、誇り高き貴族のご令息、ご令嬢たちが集う、実にきらびやかな学び舎だ。表向きはね。


(我が名はヴィラン……お前たちの敵だよ)


「おはよう、フランク!」


「おはよう、フロイライン。

今日も相変わらずお美しい」


「あらやだ!相変わらず口が上手なんだから!」


「ははは……!」


「やあ、フランク!おはよう!」


「おはようございます先輩。

鍛練、頑張ってください!」


「おう!エルフ共に負けるかよ!

次の試合、楽しみにしてな!」


「はい!勉強させて頂きます!」


「おはよう、書記長」


「おはようございます、校長先生」


「……例の書類は?」


「できております」


俺は鞄の中から束になった書類を出した。

太一の首が入っていることはもちろん内緒だ。


「ふむ……ありがとうフランク。

これなら、今日の議題で報告できそうだ」


「……言われた通りに数値の改竄を致しましたが……こういうのはよろしくないのでは?」


「もっと声を落として言いなさい!!

誰かにでも聞かれたらどうする!?」


「……っ!?……申し訳ございません」


俺は怯えたフリをしながら肩を震わせ、深く頭を下げた。


「……全く。不用心だぞ!!

それに……君がそんな事を心配する必要はありません!!君は魔法もスキルもない無能なのだから、黙って私の言う通りに数字を合わせていればいいのです!」


「……はい。肝に銘じます、校長先生。

ああ、それと……ヴィランという方がコレをあなたにと……」


俺は懐から黒い本をだす。


「なっ!?ヴィランだと!?」


そう言って校長は慌てた様子で俺から本を奪い取る。


「そのヴィランというのは……不気味なドクロの仮面を被った男だったか?」


「は……はい」


「……中身を見たか?」


じろりと殺気を込めて睨み付ける校長に対し、俺はどう答えるのがベストか……


(答えは決まっている)


「い、いえ……いえ!見ておりません!!」


おどおどしながら答える

……これがベストな解だ。


「あの……校長先生?大丈夫ですか?

酷い顔です。1度……保健室で診てもらったほうが……」


「……大丈夫だ。

それと、今回のことは忘れなさい!

この本も、ヴィランという男も!

……良いな?」


「……承知しました」


「……勉学に励みなさい。

神に愛されぬ者の人生は険しいのだからね!」


そう言って校長は去って行った。


「……フンッ!小心者め!」


仕込みは上々だ。

襟を軽く整えると、俺はその足で次なる目的地……生徒会室へと向かった。


……コンコン


『どうぞ』


扉を開けると、美しい黒髪を窓からの風になびかせながら、一人の少女が優雅に紅茶を嗜んでいた。


「おはよう、フランク」


「おはようございます、ローズ会長」


彼女の名前はローズ

神炎帝国第一王女である。

とんでもなく優秀で勇敢な才女だ。

しかも、この世界の神ミカエルから愛されている。

富、名声、美、力……望めばさらになんでも手に入れられる……ふふ!全く、度しがたい!


そして……


(俺のことを凄まじく嫌っている。

なぜかはわかっているつもりだ。

しかし……このひりつくような空間……

俺の身を心を引き締めてくれる。

なんと心地よい。

彼女もそう思ってくれているだろうか?

そう思ってくれていると嬉しいのだが……)


「……校長となにを喋っていたの?」


「他愛のない世間話ですよ」


そう言って机に座り、引き出しから書類を出す。


「……書類を改竄した?」


「ええ、もちろん」


「ふふ!そう!」


「怒らないので?」


「まさか!

校長に逆らえるわけがないでしょ?」


そう言ってローズは爽やかな笑みを浮かべる。


「紅茶、飲む?」


「ええ……ぜひ」


ローズは立ち上がり、ポットに湯を淹れる。


「本心を言うとね。私は……あなたや大人たちが不正を働こうがなにしようが興味がないの。

……だけどね、フランク」


ローズはドボドボと、お世辞にも上品とは言えない音を立ててカップに熱湯を注ぐ。茶葉が激しく暴れ、見るからに渋そうな色が一気に広がっていく。


(うわあ……相変わらずまずそうに淹れるなぁ)


「私を信じて応援してくれた人たちや、私の大切な友達……彼らを傷つけることだけは、誰であっても絶対に許さない。たとえそれが、兄さまたちや校長……あなたでもね!」


強い意志の宿った瞳でまっすぐ俺を見つめながら、彼女は言い続ける。

俺は黙ってソレを聞いた。


「…………」


ローズは渋みの出きった紅茶のカップを、俺の前にトン、と少し手荒に置いた。


「私は……この学園で、みんなと普通に青春を謳歌したいだけ!それだけよ!?

あなたみたいな守銭奴にはわからないでしょうけどね!」


「…………」


俺は一気に紅茶を飲み干し、にこやかにこう言った。


「……進歩がないですね」


「え?」


「今度は私が紅茶を淹れて差し上げよう。

さぁ、座って!」


俺がさっきまで座っていた席にローズを座らせる。そして、会長席に置いてあるティーカップに入ってあった紅茶を水流し場に流す。


「ち、ちょっと!?」


「我慢もほどほどにね。

こんなマズいものをうまそうに飲むなんて……紅茶に対して失礼というものです」


俺は心を込めて優しく丁寧に、新しい茶葉へと湯を注ぐ。

じっくりと、彼女が背負い込んでいる張り詰めた心を解きほぐすように、適切な温度で、時間をかけて。

部屋の中に、先ほどとは全く違う、上品でどこか甘い香りがふわりと立ち上っていく。


「……なによそれ。無能のくせに、生意気ね」


ローズは頬をわずかに赤くしながら、ぷいっと窓の外へ視線を逸らした。口では俺を嫌っていると言いながら、大人しく俺の席に座って、その不器用な背中を丸めている。


「はい、どうぞ」


黄金色に透き通った、完璧な一杯を彼女の前に差し出す。

ローズはおずおずとカップを取り、小さく息を吹きかけながら、その唇を潤した。


「……っ」


あまりの美味しさと温かさに、彼女の切れ長な瞳が、ほんの一瞬だけ、子供のように丸くなる。


「……生意気。でも……悪くないわ」


「それは光栄です。それとね……ローズ?

紅茶は心で淹れるものだ。

そんな風に荒げて淹れるものではないよ。

これも……青春と言えるのではないかな?」


「うっ!?……そうね。

でも、次は負けないわよ!!」


「は、はははは……」


(勝ち負けではないと思うのだが……まぁ、練習していればいつか気付くだろう)


その瞬間、扉が乱暴に開け放たれる。


「フランクという男はいるか!!」


筋肉ムキムキで高圧的な女が部屋に入ってくる。

その体躯は並の男よりも一回り大きく、制服の上からでも分かるほど強靭な筋肉が躍動していた。鋭い眼光はまるで獲物を狙う肉食獣のようで、入ってきただけで生徒会室の優雅な香気が一瞬で吹き飛ぶ。


「いきなりなんです!?何者ですか!!

名を名乗りなさい!!」


(風体から冒険者のように見えるが……ん?)


彼女の腕に彫られたタトゥー……見覚えがある。


「あなたは……毒蛇の牙のメンバーの方ですね?」


「え!?ど、どくじゃって、まさか!?」


「そうだ!!今すぐ、私と一緒に応接室にこい!!」


「……かしこまりました」


まだ、マッシュたちの為の歓迎の準備を終えていないが、まぁいい。

久しぶりの再会に心が踊るよ。

お前らもそうだろう?

お前らが無残に殺した男に……俺に早く逢いたいよな?

俺はここにいる。お前たちもここにいる。

この世界に……ユートピアに。

ボビー……レイラ……マッシュ……。

どんな顔をして俺を見るのか……楽しみだ。

本当に……本当に楽しみだ。

最後までお読みいただきありがとうございます!

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