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神華牡丹学園物語  作者: 瑞目叶夢
1章華人の不安と仇の顔
41/62

清家の血筋

千李が目覚めたのはその5時間後だった。

曲癒の診断は怒りによっての精神的ストレスでの失神だった。

血圧が上がって頭に血が登り鼻血が出てしまったのだろうと言うことだった。

翌日、2つの話題が学園新聞に載った。

一つはもちろん個人戦トーナメント

トーナメント表には

1回戦豹炎、千李

2回戦白雅、ライラック

3回戦脈羅、瑙銀

となっていた。



そしてもう1つは楊都後降との会話のことだった。

千李が無効化を持っている事、

無効術を発明したのが李薇であること、

そしてどう調べたのか李薇の信徒達の名前もある、

破天荒カルテットは、反発していたがライバル関係だったそうだ、

そんな大勢の思いを裏切り藤の会に入った理由も明かされていた。


「玄武のシルバープリンスと虹の女王の大戦争だなんて大げさな見出しね」


藤狐と青龍の寮の談話室で美羽が呆れたように言っていた。


原因は藤狐寮のある純血主義の生徒が起こした事件で華無生まれから重傷者が出て、その純血主義の生徒を叙樹達がイジメたことで起きた。

叙樹と李薇の喧嘩らしい、映像もあった。


黒髪の生徒の前に立って李薇が言う


「お前は本当に、自分の正義に忠実で浅はかな人間ね」


「黙れよ!そいつは純血主義だぞ!君も狙われてたじゃないか!!それにどんなに正当化しようとこいつの罪は変わらない!藤狐の生徒は危険分子って事実は変わらないだよ!」


「そうね、だからって人を悪者として嫌い、イジメるのは違うんじゃない?多勢に無勢でイジメて、私達の罪と何が違うの?それでヒーローの僕にシェリーニが振り向いてくれるって?カッコ悪い男」


「なにを!だいたい君がかばう意味がわからない!!そいつをかばっても君の人殺しの罪は消えなっ!っ!」


叙樹は慌てて口をふさぐ


「それがあんたの本音?はっ!どうでもいいわ、私の罪なんてどうでもいい、

でももうあんたの顔なんて見たくない、どこかに行って、今すぐ」


「く、わかったよ!もうしない!君にもそいつにも近づかない!でも僕は謝らないぞ!!そいつはシェリーニを殺そうとしたんだからな!!」


叙樹が立ち去ろうとする


「叙樹、正義の剣で傷つける事は本当に正義?」


叙樹は、一度振り返って李薇を見るが、すぐに踵を返してどこかに行く、

そして周りの取り巻き達も着いていく


「おいで、坊、傷を見せてごらん」


叙樹達が去ったあと、後ろに庇っていた。

生徒に声をかける、藤狐の生徒は恐る恐る李薇に近づく、

そして李薇は、その生徒の傷をなおしてやっている所で映像が切れたのだった。


友人のシェリーニを殺そうとした生徒をかばった李薇に記事では、

都後降が言っていた残酷で優しいとはこの事なのか?

友人であるシェリーニ・オーズィラを殺そうとした純血主義をかばう虹の女帝は、

純血に強い憧れが?その為に藤の会に入ったのか?


などと書かれていた。


「なんで虹の女王はこの生徒をかばったのかしら」


流れ続ける映像を見ながら影姫が言う


「うーん、ていうかこの生徒は何で監視対象の藤狐なのに大事件を起こせたのかなぁ?」


癒澄は神華人に頼んで持ってきてもらった古い記事をくまなく確認する美羽の隣でつぶやく、それに真望が頷く


「藤狐の中でも危険な子は制御アクセサリーをつけるのが義務だ、能力の使い方の練習以外では外せない・・・・と言うか大人の手が無ければ外せないはずだ」


「真望くん、よ、よく知ってるね」


「藤狐にも挨拶に行ったからね気の良い子が割りといたよ☆」


岸雄にウィンクして返事をする真望に癒澄がキュンキュンとしている

今はこの二人の会話が緩和剤(だんわざい)になっている


「あ~この子ねぇ途中編入の子だよなぁ」


高天がけだるそうに言うのに甲泉が頷く


「あぁ、確か乱歩家(らんぽけ)の子だろうあそこは呪われた家って言われてるからな」


「呪われた家ですか?」


真望が甲泉に聞く


「乱歩家には藤の神華しか生まれないんだ、そしてその危険さからか、発現も遅い、

この子は確か周囲を爛れさせる妖気をだす男の子だったはずだ」


甲泉の言葉に続いて高天が言う

「乱歩家はぁ、その危険さからぁ閉鎖的でぇ発現しない限りはぁ自分達の領地から出ないんだよねぇ、たぁしか楠のどっかの島が丸々乱歩家なはずだよぉ」


高天はそう言いながら窓を開けて入って来た妖精の声を聞く

そして甲泉と目配せをして頷き、寮の外に出た。


「まぁこの子に関してはそれだけじゃなくて、清家の血が入ってるって噂もあるんだよ」


「清家の血ですか?」


影姫が甲泉に聞いた。


「まぁ噂だけどね」


千李はじっと学園新聞の少年を見る

遠目でよくは、わからないが、どこか既視感のある男の子年は13頃か?

少し天然の入った黒い髪、どこかで見たことある顔

自分に似ている?

清家の血が入っているならあながち間違いでもないだろう

それよりも狗炎に・・・・


「あ!」


突然美羽が大きな声を出して震える


「どうしたの?みわわ」


癒澄が美羽に聞く

美羽は、ゆっくりと新聞を持ち上げる

その大見出しには魔王樂巖と藤の会の面々が載っている


「それがどうしたの?」


影姫が聞くが千李はバンと机を叩いて立ち上がり、その見出しを食い入るように見る


「せ、千李君?」


岸雄の声に震えながら千李が言う


「この、李薇に、守られてる子、樂巖に、そっくりだ・・・!」


そう言って千李が新聞を真ん中に広げる、それを全員が美羽の手のものと見比べる


樂巖はストレートだが黒髪とその顔はとてもそっくりだった。


千李は今始めて樂巖の顔を見た。

狗炎と似ている気もする


どういうことだ?


あの学園新聞の翌日、楊都後降が今まで発表した中でほとんどの術が李薇の発明だった事を明かし、李薇と共同研究をしていたことも明かした事で警察に連行されて行ったのだった。


そんな事件が続いているのに、千頭は、大会中止も延期もしないようで

刀激戦第一試合は予定通りパーティーの翌週に行われた。


「あのハゲダヌキぃ、なぁに考えてんだろぉねぇ」



第一試合、

千李と豹炎の試合、千李は、集中したい所だが都後降の見せた映像、新聞に乗っていた映像、その2つを見て李薇という人物がわからなくなった。

本当は優しかった?あの女が?

ニタニタと笑う虹色の目を思い出す

毎日夢を見る、それは心優しい少女が悪魔のごとく邪悪な存在になる夢


正義の剣で傷つける事は正義?



わからない、もう千李には何もわからない

誰が正しくて何が間違っててどうして両親が死ななければならなかったのか

神の力でなぜ樂巖を抑え込めなかったのか

どうして狗炎と樂巖が似ているのか

どうして?なぜ?


ずっと考えていた。みんなが深瑠の事を調べている時に李薇の事を調べた。

けど校長から聞いた以上の情報はなかった。

村一つを壊滅させるような大事件を起こした割には情報が少なすぎると言う事しかわからなかった。


学生時代の事も故意に隠されるように李薇と樂巖の情報だけは何もなかった。

むしろ樂巖という生徒は在籍していなかった。


おかしい、新聞紙部は、どうやってあの映像を手に入れたのだろう、そもそもあの映像は誰が撮っていたんだ?


大人たちがわからない、過去がわからない、深瑠の事件には李薇が関わっている、ここを解き明かさなければいけないそんな気がするのに!

明らかに情報が足りなすぎる


何も分からないまま

混乱する頭のまま


千李は豹炎の前に立つ


ゴーンというドラの音と共に豹炎が切りかかってくる

それをたやすく千李は避けた。

豹炎の剣撃を避けながら考える


豹炎の父親、猫炎は藤の会に居た可能性がある、

猫炎は、叙樹を恨んでいた。

もし猫炎が李薇をそそのかしていたら?

もし、理事会の権限で故意に李薇との情報を隠していたら?

新聞紙部の映像はもしかしたら理事会が?

何故この危ない時に外部の者も入れる大会を強行することがある?

まさか理事会は



李薇と


繋・が・っ・て・い・る?


「千李!!!!!!!俺を見ろ!!!!!!」


炎を纏った木刀が目の前に迫る


寸前で受け流すが勢いが殺しきれず吹き飛ばされる、

武術の授業の時とは比べ物にならないくらい豹炎は、強くなっていたようだ


「どこ見てる!!!誰と戦ってる!!!」


すごい気迫で豹炎が追撃をしてくる、何匹もの小さな火の鳥達も千李の心代玉を狙ってくるのを断ち切る


「心ここにあらずで俺をあしらうな!!不愉快だ!!!」


豹炎の言葉にカッと意識が覚醒する、そして飛び跳ね大きく後ろに下がる


「あーごめん豹炎、ありがとう、そうだよな、ウジウジ考えても僕馬鹿だし、

わかるわけないのに、大好きな刀激戦を蔑ろにするなんて僕らしくなかった。

ごめん、安心してよ、今から本気出すから」


そう言って、千李は目にも止まらぬ速さで豹炎との間合いを詰めるが、

豹炎は、それに即座に反応して胸を狙った一撃を弾き飛ばし首を狙う

だが、男とは思えないほどの身体の柔らかさで仰け反る千李に避けられ

次いで飛んできた足蹴りに木刀を持って行かれた。

豹炎がその木刀を拾う間もなく、千李の木刀が豹炎の額の心代玉を捉えた




その木刀は空振った


バチバチという音がして千李の体を貫いた。


そのまま千李は倒れた。

豹炎の術ではない確実に外野の術で千李は、倒れた。


「千李!!!」


豹炎が悲壮な顔をして肩を掴む


身体を走る電流は死ぬ程ではないが動かす事ができない


騒然となる会場


大きな声で男が叫ぶ

「混血が調子に乗るな!!!混じり物は滅ぶべし!純血万歳!!清家万歳!!真の王!炎狐様の血を尊べ!!」


そう言いながら男は首を刀でかききったのだった。



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