選定の門
二回戦のライラックの試合はライラックの圧勝だった。
誰もが彼女を狙ったが、まるで踊るように楽しそうに切り捨てていた
こうして刀激戦個人戦の初日が終わった。
放課後、千李達は世界図書館に来ている
岸雄は試合に参加せずにそれに付き合って影姫も試合を見ずに世界図書館で、今も樂巖の隠された洞窟の手がかりを探している
世界図書館の闇術の書棚は低学年は許可制だ、千李達は岸雄の事もあり、校長に許可を貰っている、もちろん大人達も、深瑠を探しているが、岸雄を止めることが岸雄のだめにはならないだろうと、許可をくれたのだ
山積みの本の中に岸雄と影姫は居た。
本を呪術で高い所に何札か直していた影姫がこちらに気がつく
「あら?もう試合は終わり?そんなに時間が立っていたのね」
影姫は腕時計を見てため息をつく、その様子を見れば、今日も収穫はなかったのだろう、闇術の本は持ち帰りができない、危ない呪いを封じ込めているものもあるからだ。
一方岸雄は穴が空くほど1冊の本に食い入るように見ている、何気なく美羽もそのページを覗く
「これは……」
美羽が渋い顔をする
千李も覗くと紫色の不気味な門の絵が描かれている
「この絵がどうかしたの?」
それを聞いて、美羽は、呆れた顔をする
「もう、千李は、」
美羽は千李に呆れて岸雄の肩に手を置く
「岸雄君、これ、皆にも見せていい?」
美羽の言葉に岸雄は、その本を机に広げる太文字で選定門と書かれたその門の絵は真ん中に八芒星が書かれていて狐のモチーフなどがあしらわれ呪文のようなものが書かれている
その絵に鉛筆で指し示して美羽が言う
「まずこの八芒星、基本この国で使われてるのは7神獣を示す七芒星なんだけど八芒星になると、邪神藤狐をさすのよ、そして紫の狐はわかるわよね、藤狐の眷属なのよ、有名な狐で泰胡とかね、ここまでくればわかると思うけど、この門の絵が示すのは藤狐教の人達、藤の会が使う門になるの、で、選定の門って事は何らかの方法で選定するみたいだけど、ここに書かれてる呪文が問題なの古代文字なんだけど、華なき者の命を捧げよって書かれてる、何が起きるかはわからないけど、藤の会でない人が通ろうとすればただ事では済まないって事よ」
それを聞いて岸雄は、目を見張る
「つ、つま、つまり、ここを通るには、し、死にかける、しかないってこと?」
古代文字の意味を知り岸雄は、悔しそうにその門を睨む
「岸雄、まさかこの門が地下にあると思ってるの?
こんな門、なかったじゃないか!」
千李はびっくりして岸雄に言う、それに対して影姫は違う考えを言う
「隠匿術を使っている可能性もあるわ、壁画に埋め込んで違う絵に見えるようにしてあるとか……」
真望は、はっとする
「本棚か!本棚の絵が確かにありましたね!影姫さん!」
それを聞いて癒澄が明るい顔をする
「そっか!あの本棚なら扉の大きさにピッタリだものね!えいちゃとまもりんさすがだよ!」
「あの本棚か!」
皆に希望の光が見えた。だが、次の影姫の言葉でまた暗くなる
「それなんだけどね、あの本棚は確かにカモフラージュだったらしいの」
それを聞いて、全員驚く
「え?えいちゃ入ったの?」
癒澄の問に影姫は、首を振る
「学園のお祖父様から聞いた話なんだけど、校長が昨日
千珠先生に地下の扉を開けてもらうように指示したの、
それで開けたんだけど中はもぬけの殻で何もなかったって、
確かにあの水晶に映ってた場所だったけど何もなくて、
それに扉も呪いの扉じゃなかったんだって」
みんなが暗い顔をする中、岸雄は、門の絵を憎々しく睨む
「ふりだ、だしに戻ったじゃないか、み、深瑠、さんはど
どこにいるんだよ!!」
岸雄は悔しそうにしている
「でも桜州からは出られないはずだから、もしかしたら桜州に住んでる
上位純血派の家にいる可能性があるから今、調査されているらしいの、
もしかしたら誰かの家に選定の扉が隠されているかも」
それを聞いて真望が唸る
「そうなってきますと獏家と朱軸家と鷺家になりますよね、
でもそんな危険なことしますかね?」
「そうなのよね、あってもおかしくはないけど、特に朱軸家は当主が虹の女帝の事件で捕まってるし一番可能性があるわ」
千李はそれに驚く
「つまり永禮先輩がかくまってるってこと?!それは無いだろ?
だって人魚の事件で怒ってたじゃないか!」
「でも永禮先輩は当主の言うことに逆らえないんでしょ?」
千李は美羽の言葉にムッとする
「でも、かくまうなんてするはずないよ!大体!樂巖は死んでるんだよ?
なんで永遠の命を欲しがるのさ!八百比丘尼は、蘇らせたりできないだろ?」
千李が庇いたいのはみんなわかる、一六五三の件から、永禮低によく行くようになって永禮とは仲良くしているからだ、厳しいが優しい永禮、
そんな人が憎き李薇に、手を貸しているなんて信じたくないのだ
「落ち着いて、千李くん、朱軸家は、一番最初に捜査が入ったけど何もなかったそうだから、李薇ほどの腕があれば隠しとおせるとも言われてるけど、あまりにも危険だしわかり易すぎるわ、だから上位純血派3家ではないと思うのよ」
「僕は永禮先輩と白雅先輩は、疑いたくない」
千李はムスッとしてそう言った。
千李が落ち着いたのを見て美羽は、安心して影姫と話す
「そしたら上位純血一とよね、誰かしら」
みんな頭を悩ませるが、分家は、結構いる
「でも、大体調査が入ってるのよね、隠匿術で隠されてたらわからないけど、
千珠先生が藤の会に居た人間で虹の女帝に好意的な人の名前は上げてたらしいから」
千李は、疑問を抱く
「李薇に好意的?李薇は、樂巖の二の妻って聞いてるよ?
なのに李薇に反抗的な人たちがいたの?」
それの問には癒澄が答えた
「虹の女帝は、日本人と華無の間の子だからあんまりよく思われてなかったの、
虹の女帝の圧倒的な神華を欲した樂巖が藤の会に迎え入れたって聞いてるわ
目に見えるのものを全て操れる力は本当に危険で魅力的だったし、
未来を見えるなんて手放したくなかったみたい」
千李は驚いた。
李薇は、藤の会で女帝として、うやまれていると思っていたからだ
「そうなんだ、」
知らなかった李薇の事、ならば李薇は、なぜそんな針のむしろになるようなところに行ったのか、そんなに樂巖を愛していたのか、そんな疑問も浮かんだ
そんな話をしながらもどこにありそうか話してもやはりわからない、情報が少なすぎるからだ、地下に早く行っていればまだ違ったんじゃないかと悔しい思いをする、苛立ちがピークに達した岸雄
「ど、どこにあるんだ!」
岸雄は、選定の門に触れる
「駄目よ岸雄くん!」
美羽の制止は、間に合わず、門の絵に触れた指が赤くなる
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」
岸雄が触れたところが紫に輝き、岸雄の手がどんどん腫れていく
一六五三は、慌てて岸雄を絵から引き剥がした。
岸雄の手は赤く腫れ上がっている
「馬鹿!!何してるのよ岸雄くん!!」
影姫が慌てて治癒呪文を掛けるが腫れは引くことはないどころかどんどん広がっていく
「ど、どうしよう悪化してく!」
美羽が泣きそうに言うと癒澄が岸雄の手をとって手に歌いかけると進行は止まり、心なしか腫れも引いた。
「うーん、完全には治せないみたい、呪いもあるのかも、とりあえず急いで医務室に連れて行こう!」
「私が連れていきます!」
一六五三はさっと岸雄抱える
影姫は、山と積まれた本に印を切り、数珠を振ると本達は勝手に本棚に戻って行く、その様子を見ることなく影姫は、急いで岸雄と一六五三を追いかける
千李は、正直その術にびっくりしたが今はそれどころじゃないとみんなの後を慌てて追いかる時、ふと後ろを見るとあの本が宙に浮いて、門の絵に狐の笑った顔が浮かんでいて、女の笑い声が聞こえて、パタリと閉じるのが見えた。
ゾクリと恐ろしいものを感じながら千李は、図書館を後にした。




