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神華牡丹学園物語  作者: 瑞目叶夢
1章華人の不安と仇の顔
32/62

猫炎と敍樹の確執

翌日、学校の登校時間に事件が起きた。

皆が寮から学校に行く時だった、千李達はいつも待ち合わせて学校に行くのだが

千李達が美羽達に合流しようと思ったら同い年くらいに見えるマーウがいた。


「おはよ、マーウまた大きくなったね」


「「「おはよう」」」


「おはよ!」


千李の声に気が付いて美羽、影姫、岸雄があいさつを返す

それに続いてマーウもニコニコ楽しそうに挨拶をする


「おはよう諸君!マーウはまた一段と美しくなったね」


千李の後ろから真望も来る、真望は驚いたようにマーウに言う


「ありがとう、真望くんはお上手ね!」


真望に続いて癒澄も来る


「おはよう!!、マーちゃん上手にしゃべれるようになったね」


癒澄がそう言うとマーウはニコニコ笑う

そんなマーウを影姫はなでる


「そうなのよ、学習能力も高くて速読もできるみたいで、

狗炎校長に渡された教科書は完読しちゃってもう小学生の勉学は完璧よ

さすがは1週間で大人になる天使ね」


影姫に撫でられご機嫌なマーウは見た目は同い年だが中身は小さな子供のようだ


暫く撫でられてニコニコとしていたマーウがハッと何かに気が付いたように千李の方を見る

いや千李の後ろの方を見ている


マーウの目線につられて全員がそこを見ると玄武寮から豹炎達が出てきていた。


マーウはさっと影姫から離れて豹炎に駆け寄り腕をつかむ


それにびっくりする豹炎


「な。なんだお前!触るな!!」


マーウは女の子の見た目に反して力がすごいようで、豹炎は振り払えない

そのままマーウに袖をまくられて、あざだらけの腕がさらされる


それを見ていた周りの生徒がざわつき始める


それを見た豹炎はマーウの手を振りほどこうと暴れる


「離せ!!離せと言っているだろ!!」


だがマーウは凝視して豹炎に言った。


「痣の呪い、消えない痣、消えない痛み、誰につけられたの?」


マーウは厳しい顔をして豹炎に聞く


「どうでもいいだろ!離せ!!」


マーウは聞いても仕方ないと思ったのか豹炎を無視して

自分の手を痣に向ける

するとマーウは光に包まれ豹炎の手をかざされた痣は消えていった。


それを見て万里が驚いて声を上げる


「痣が!!どうしても消えなかったのに!!」


マーウは豹炎の全身に手をかざした後その光は鎮まった。


「全身に痣があったよ、もう消えた。なんでこんな痣があるの?」


マーウの質問にちっと舌打ちをする豹炎


「部活で打ち合いの時に刀を受けるのを失敗しただけだ」


それを聞いて真望が割って入る


「本当かい?夏休みから帰ってきた時からあると聞いたけどね」


真望の言葉に豹炎は苦虫をかみつぶしたような顔をする


「それに部活でついた痣というけれど、部活で痣の呪いなんて使うのかい?どんな訓練だい?」


豹炎は真望をキッとにらみつけ、一息ついてからマーウを押しどける


「お前には関係ないだろ、僕は忙しんだ、どけ」


豹炎がそう言って学校に行こうとしたが、マーウはむすっとして何か思いついたように言う


「別にいいけど呪い返ししたから術者は今同じ痣の呪いがついてるんじゃないかな」


そのマーウの言葉に豹炎はマーウの胸倉をつかむ


「お前!!なんてことしてくれたんだ!!父上に何かあったらどうしてくれる!!」


マーウはその言葉にびっくりする


「君のパパが呪いをかけたの?自分の息子に?」


マーウの言葉に豹炎はハッとする、挑発に乗ってしまったと悔しい顔をした。

そこに老人の声がする


「それは本当かね豹炎」


狗炎だった。

豹炎は狗炎の姿を見るとあとずさり、せわしなく目を回し、何か言葉を紡ごうと口をパクパクさせるが

何も言葉が出ることはない、そんな豹炎に狗炎校長は近づく、豹炎はどんどん顔色を悪くする

自分の失言のせいで父親の立場が悪くなってしまい、それをどうごまかせばいいのか必死に考える


「こ、これは私がお願いしたのです!

まがい物と半端者、清家の汚点に人間もどきに負けた戒めに、

父上に指導していただいたのです!けして父上の考えではないのです!

だから呪い返しなんてお門違い、私がお願いしたのですから父上が苦しまれるのはおかしいのです!」


やっとの思いででた言い訳も、誰も信じるはずがない全身を清められていた豹炎、

全身に痣の呪いをかけるなどいくら子供にお願いされたからと言って親がすることではない


「豹炎、きなさい」


狗炎は手を前に出し豹炎を呼ぶ


豹炎は震えながら狗炎のもとに行く、狗炎は豹炎の肩を抱きよせて花壇の方に行く、

花壇の前に着いた時に狗炎は野次馬になっていた生徒たちに学校に行くように言った。

そして万里と千李達6人と一六五三(ひむこさん)とマーウを引き留める


「詳しい話を聞きたいから君たちも来てくれるかの」


「はい」


真望は校長の言われて薔薇のエレベーターに一緒に行くのを千李達は慌てて追いかける


薔薇のエレベーターはこの前入った時よりも広くなっていて全員が座れるようになっていた。

千李達はそれぞれ座り、万里は豹炎の隣に座ってしくしく泣いている


『校長室です』


薔薇の声が聞こえて扉が開く

校長にうながされ、全員がエレベーターから出ると桜姫の人形が出てくる


「おかえりなさいませ、狗炎現校長」


桜姫の人形はそう言って校長室の扉を開ける

すると中には壁画の中で思い思いの事をしている歴代校長たちがいて

狗炎校長が戻ってきたことに気が付きこちらを見ている人もいる


そして狗炎校長が数珠を持った手を振ると空中から椅子が出てくる


「みんな座りなさい」


そう言って狗炎校長はデスクの椅子に座る一六五三以外のそれぞれが椅子に座ると、

校長は話し始める


「それで、マーウはなぜ豹炎に痣の呪いがかかっていることに気が付いたのかな?」


「妬み、怒り、憎悪の感情が込められた跡が見えた、天使は、負の感情見えるし浄化できます」


そう言ってマーウは悲しそうな顔をした。


「ふむ、そうか、ありがとうマーウ、そして文月くん達は前から知っていたのかな?」


これには真望が答える


「たまたま地下に行く機会があり、その時にスポーツウエアで現れた豹炎君の体に痣があるのを発見していました。地下の神華人の話では夏休み明けからあったそうです」


「余計なことを」


真望の発言に豹炎は怒りを露にする。

狗炎はそんな豹炎を見て、ため息をつき真望にお礼を言って姿見の前に立つ


「ありがとう文月くん、仕方ない子達だね、猫炎(びょうえん)、猫炎やちょっと出ておいで」


狗炎がそう呼ぶと豹炎に似た綺麗な顔の男の人が不機嫌そうに姿見に出てきた。


「なんでしょうかお爺様、私も暇ではないのですが」


そう言いながら猫炎と言われた男は姿見から出てきた。


「何か私の愚息が粗相でも致しましたか?」


男は豹炎を一瞥して冷たい顔をして狗炎に向き直る、その顔で豹炎は青い顔をする


そんな豹炎を万里が抱きしめ、不安そうに見ている


「いやね、豹炎に痣の呪いがかけられていたみたいなんだよ、何か知らんかね」


狗炎がそう言うと猫炎は驚いた顔をして豹炎の下に行く


「それは本当か!!そんなもの誰につけられた!!」


まるで本当に心配するように猫炎は言う、だがその場に居る全員が猫炎自身が豹炎に呪いをかけたことを知っている、でも本当に心配しているように見えるのだから大した役者である

その姿に豹炎は震えながら名前を言う


「使用人の(れん)・・・・です」


絞り出すようなその言葉を聞いて真望と千李は椅子から勢いよく立ち上がって豹炎を凝視する

そんな真望と千李を猫炎は軽蔑するようにいちべつして、豹炎に向き直る


「そうか、煉には厳しい罰を与えよう、私の息子に手を出すことの意味を教えてやらないとな」


そう言って猫炎は立ち上がる、そこに千李が耐えきれず声を上げる


「豹炎!!」


それを聞いて猫炎は冷めた顔で千李を見る


「どうしたのかな?私の息子が何か気になることでも?」


千李は怒りの表情で猫炎を見るがその後ろで豹炎が余計なことを言うなという顔で首を振るので

千李は何も言うことができない


「なん、でも、ないです」


「そうかい、それならよかたっよ、この問題は解決ですかね?豹炎には解呪の術をかけてあげてくださいお爺様

それでは私は忙しいので失礼します」


そう言って猫炎は帰ろうとする


「そうかい、来てくれてありがとうね、そうだ猫炎、教育もほどほどにするんだよ」


「さて何のことでしょう、では、私は失礼します」


その言葉を残して猫炎は姿見の中に姿を消した。


その場はシーンとして重い空気がながれ、万里のすすり泣く声だけが聞こえる


真望は悔しそうな顔で豹炎を見る


「豹炎、なんであんな嘘を」


そんな真望に目も合わせず豹炎は下を向いてつぶやく


「本当の事だ」


それに対して千李は豹炎に詰め寄った。


「豹炎!!君の発言で何も悪くない使用人が罰を受けるんだぞ!!」


豹炎は苦虫を噛みつぶしたような顔で千李を突き飛ばす


「俺は悪くない!!悪いとしたら余計なことをしたお前らのせいだ!!お前らのせいで使用人が罰を受けるんだ!!」


「豹炎君、虐待は許されるとじゃない、それはわかるはずだ」


真望が静かな怒りを込めた声で言うので豹炎は一瞬たじろいだが、すぐに威嚇する猫のように声を上げる


「うるさい!!お前に何がわかる!!」


そう言って豹炎も勢いよく席を立つ


「お前に銀帯を取られて!!混血の汚らわしい汚点に負けて!人間もどきの神華人にも負かされて!!

俺がどれだけ悔しい思いをして生活しているかなんてお前らにわかるか!!あれくらいの罰受けて当然なんだ!!清家の名を落としてるんだからな!!虐待じゃない!!教育していただいたんだ!!もう俺にかかわるな!!余計なことをするな!!まがい物に心配されるだけで屈辱だ!!」


そう言うと豹炎は校長室の入り口に向かって無言で出て行った。その後に万里もついて行き、出ていく間際に

真望と千李とマーウを泣きそうににらんで出て行った。


何とも言えない空気の流れる校長室の中、真望は豹炎の出て行った扉をにらんで悔しそうに拳を握りしめる

その手を癒澄が手で包み込む


「癒澄くん・・・」


「そんなに強く握ったら血が出ちゃうよまもりん」


そう言われて真望は自分の手を見るとくっきりと爪の跡がついている


悲しそうに狗炎が話し出す


「純血主義の家庭問題は非常に難しい、清家だけがこんな状況なのではなく今の一年生は特に

親のあたりが強いようでな、行き過ぎた教育を目にすると報告を受けておる、特に豹炎と猫炎はなぁ

猫炎は出来が悪いと馬鹿にしていた敍樹が真価を発揮しだしてから冷遇されていたこともあり劣等感が強いのじゃ、きっと今もその劣等感で豹炎と千李の関係を見ているのかもしれんな、」


それを聞いて千李はなんて迷惑な話だと思った。親の都合を子供に押し付けるなんてあんまりすぎる


「そんなの、猫炎の勝手な都合じゃないですか!そんなことで豹炎に虐待するなんて間違ってる!!」


千李がそう言うと狗炎は悲しそうな顔をして水晶に手をかざした。その中には豹炎、猫炎、敍樹、千李が映っている


「そうじゃ、だがそれを間違ってるというのがこの場に居る少人数ということもまた事実、

純血主義の闇は深いんじゃよ遠い昔からのう」


狗炎がそう言うと、水晶の中の千李達が消えて見たことのない男の子が現れる、綺麗な顔で品行方正そうな黒髪の男の子は誰にでも好かれそうな顔でにっこりと笑っていた。


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