絶対王者の強さ
あの授業の後は酷いものだった。千李は千珠を非難した。
母が死んだ原因である魔王と李薇の戦士だったそれだけで非難するに値する理由になる
千李はみんなに抑えられ、千珠はすぐ教室を出て行った。
前に賦髄に聞いたことが確かなら、千珠は鸞璃でシェリー二、千李の母と共に過ごしていた仲間だったはずだからなおさら激高した。母を裏切り、あの大戦で生き延び、のうのうと教師をしていることに、それを学園側も許していることに、この頃の不満やストレスもあっただろうその矛先がすべて千珠に向かったのだ。
だが落ち着いた時影姫に聞かされた話はもっと驚いた。
「千李君、あの大戦で魂喰で死んだのはあなたの母親だけなのよ、先生はあなたの母親を助けようとしたんじゃないかしら?」
「そう、なの?でも李薇の戦士って・・・・」
「そうね、私にもわからないわ、でも学園はね先生を牢獄ではなく、学園に置いたの千珠先生は学園から出られないのよそれは藥病先生も一緒なのあの人は毒に取りつかれているから、学園は牢獄の役割も果たしているのよ、茨監獄島よりもここは厳重に管理されているから」
「でも、でも許せないよ、あいつは母さんを一度裏切っているんだろ?」
「でも生き返らせようとしたのよ何か事情があったんじゃないかしら」
「でも・・・でも・・・・!」
千李は泣いた。母の死にかたを初めて知ったのもある、魂喰を受けていたなんて、死んでも母親には会えない、霊体になって見守ってもらうこともできないその事実に涙を流した。その日はそのまま保健室に連れていかれて、一日を過ごしたのだった。
あれから4日たった。
いよいよ3位決定戦と団体戦だ
3位決定戦はあっけなく終わった
蛇頭は豹炎と脈絡が生き残ったが、豹炎は、双子の連携に負けて
双子は、脈絡にあっけなく負けた。
そして大将戦ライラックと脈絡の戦いは激戦だった。早々に終わるかと思っていた試合も
二人の戦いで白熱したものになる
『おおっと!!脈絡選手風に乗って上から攻めるが、ライラック選手!脚の小手で受けて蹴り飛ばしたぁ!』
『これは木刀同士だからできる技だな、真剣同士では切られるから気をつけろ、まぁ木刀でも骨にヒビが入る事もある危険な技だな』
『なるほど確かに危ないですね!ライラック選手の脚は大丈夫でしょうか、おおとライラック選手!余裕なのか手で丸を作っています!舐めてます!脈絡選手をナメ切っています!脈絡選手怒りの追撃!だが避けられたぁ!』
ライラックは、扇の刀で踊るように戦う、それが更に小馬鹿にしているように見えるのか純血派からは、野次が飛んでいる
「ライラック先輩ちょっと遊んでる?」
千李が岸雄に聞く
「遊んでるね、でも、脈絡先輩も相当強かったのに、カラカウためとはいえ余裕出しすぎだなぁ」
美羽が心底不思議そうに千李に聞く
「脈絡先輩って最強の永禮先輩といい勝負してたのにその人相手に余裕なんて、ライラック先輩が強いなら、千李、あなた永禮先輩と同じくらい強いとか」
その美羽の言葉に少しいい気分がしたが一週間前の試合を見た限りでは絶対ありえない
まさに獣が餌を捉えるような集中力は、観客席から見ても一切の隙を感じさせなかった。
太刀筋は鋭く美しく脈絡先輩が互角に戦えてるのを不思議に思うほど洗礼されていた
「まさか、そんなわけ無いよ、脈絡先輩に少し疲れが見えるし惱虹先輩と惱銀先輩が疲れさせてたからできることだと思うよ」
それに影姫が驚いたように言う
「あら、先輩方は割と早めに決着ついてなかった?5分も戦ってないわよ?」
その質問には岸雄が答える
「惱銀、惱虹は、連携技をしながら相手に無駄な動きをさせるように動くから相手はすっごく疲れされられるんだ、二人はそんなに強くないけど弱くもないから脈絡先輩に無駄な動きをさせる為だけの戦い方してたよ」
真剣に試合に集中する岸雄のいつものオドオドは何処へやら、とてもはっきり喋っている
「でも少し疲れてる程度なんだろうねライラック先輩も割とギリギリみたいだし、たまに逃げてるからなんか…………」
千李は苦い顔をして、言葉を濁すと深瑠がはっきり言った。
「尺伸ばしだよね、」
「だね」
「ライラックらしいなぁ」
岸雄は、ため息を付いた。
ライラックは、日頃の鬱憤を晴らすように脈絡をからかっていたからだ
「あ、でも動き出すね」
千李がそう言った瞬間、刀が交り合う
両者引くことなく押し合う、畳まれた扇刀を両手で持っていたライラックが片腕で空に印を刻む
すると二人の首の心代玉が光る
『さぁ脈絡センパイ、このくだらない戦いを終わらせようか』
『拡声印など刻んで何がしたい、負けた時の断末魔でも聞かせたいか、紛い物』
『いやーん怖いねぇ、セ・ン・パ・イ♡ちがうのよ♡あなたが負け惜しみを言うのよ♡』
そう言ってライラックが数珠の持つ手を動かすと風の力を使って脈絡を吹き飛ばす
お互い距離ができた。
だが、体制が壊れている脈絡にライラックがすかさず切りかかる
『紛い物が戯言を言うな!』
『その言葉で最後だよ!』
そして二人は切り合い、すれ違ったあと玉が、割れていたのは、脈絡だった。
ワッと歓声が湧く蛇頭、純血が4位に下った事で純血派を嫌っている者たちは興奮した。
そして、純血派達は憤り帰っていったのだった。
そんな試合も終わり昼休憩が終われば決勝だ、
鸞璃対猿武だ、
千李と岸雄への期待は大きく、さっきから岸雄は、青くなったり白くなったり、影姫と深瑠に励まされて赤くなったり顔色だけで忙しそうだ。
「岸雄君大丈夫!だってあなた強いもの!」
「岸雄、あなたは真木さん以上の男になれるはずよ、頑張って」
「が、が、がん、がんば、る」
もうガッチガチに固まっている緊張がピークに立って壊れたラジオのようだ
ここまで緊張しなてる人が居ると逆に落ち着くというもので、千李はそれを見ながら
しっかりと食事をとる
「へい!ブラックナイト、グリーンキング!応援してるぜ!」
「猿武に千五百華かけてるんだ!よろしく頼むぞ!」
「お前どうせなら五千華かけろよなぁ」
みんな思い思いのことを言って6人の横を通って行く、いい席を取るため急いでいるようだ
自分たちが賭け事の対象と言うのは何とも言えない気分になった。
そこにライラックが来た。
「お前ら大丈夫か?大将ってもしかしてアレじゃねぇよな」
そう言ってライラックが指差す方向にはガッチガチで興奮状態の凱臥がいた。
「それが今回の大将は僕にして欲しいって言われてるんですよ」
千李が困ったように言う
「ふぅん凱臥先輩が正しいよ千李くん、本来大将は、チームで一番強い奴がするものだからね、なんてったって大将が倒されたらそこで試合は終わり、つまり君は将棋の王将なわけ、大方他のメンバーで永禮を疲れされたいんだろうけど、岸雄と千李以外であのグループを抑えられるかねぇ」
やれやれと言う風にライラックが言う
「ライラック!失礼よ!凱臥だって寸魏だって私だって強いんだから!二人ばっかりに頼った試合なんてしないわ!」
「えー深瑠先輩一回戦は完璧に二人だよりだったじゃん」
「う、そ、それは絶対突破したかったから」
深瑠が悔しそうにライラックを見る
「ライラやめなよ!え、猿武の人達はみ、みんな!つ、つよいよ!」
岸雄がそう言ういつの間にか周りには猿武の部員が来ていた。
ニヤッとライラックが笑う
「いいねぇ!その顔!久々の決勝戦でガチガチだったとは思えないよ!
頼むよ!あんたら!私は負けなし鸞璃が負けるとこが見たいのよガッチガチになってる暇あったら作戦会議しろよーじゃあな!」
そう言ってライラックは、ひとっ飛びしてその輪から抜けて走っていった。
確かにライラックに言われて通りみんな緊張が少し和らいだようだ
「うーむ、ライラックに落ち着かされるとは俺はまだまだだな、部長として不甲斐ない」
凱臥が少し悔しそうな顔をした。
「仕方ないわ、私達この一週間は、鸞璃との戦いを期待されて緊張がピークだったもの」
「にししし、めちゃくちゃ緊張してる奴らがいたから俺は平気だかな」
寸魏がそう言うと深瑠は、寸魏のつま先を踏む、イタタタと言いながら寸魏は、笑っている
「とりあえずみんなしっかり食事はしたか?控室に行くぞ」
「「「「「「押忍」」」」」」
その掛け声を上げてから猿武の部員達は控室に向かった。大広間を出る時も控室の道すがらも
頑張れよ!
無様にだけは負けんなよー
などと言葉をかけられる、鸞璃を倒してほしい人と
倒せるはずないと思う人、そんな人たちの間を通って控室に着き、さぁ試合だ
選手入場のファンファーレが鳴り響いている
会場に出れば多くのお客さんが観客席や空中に居る
岸雄は、もう二刀を握っていて虚空を眺めている
今回のチームは凱臥と岸雄が守備、深瑠が小役で寸魏が切込隊長だ
相手は前回と変わっていなかった。
『さぁ!皆さんお待ちかねの!!!!決勝!!!!戦!!!!でえええええす!!!!』
音弧の力強い声が会場に響き渡り観客が湧く
『実況は私、久瑠袮音孤が担当いたします!解説にはお馴染み尾座那先生と
ライラック・フェントンさんです!いやぁ先生、ライラックさん、ついに決勝ですねぇしかも猿武は、7年ぶりの決勝戦!、新入生の神童コンビが大将と守備役のようですね!今回は慎重に事を運ぶつもりでしょうか!』
『そのようだな、まぁ妥当な判断だろう、凱臥では、悪いが何とか白雅を倒しても永禮は、
倒せそうには無いからなぁ』
『そうっすねぇ、努力ではどうにもできない才能の領域じゃぁ永禮に勝てそうなのは
私等4強の残り3人と神童コンビくらいだからなぁ、特にあの二人の連携は私でも怖いね、
千李には、負かされたしねぇ、是非永禮先輩を倒してほしいな!頼んだぞ神童コンビ』
『なるほど!神童コンビは、それだけ期待できるほど強いと!
刀を交えた人の言葉は違いますね!神童コンビへの期待が高まる一方です!
永禮先輩が負けるところを見てみたい反面!負けてほしくないとも思ってる同士は多いはず!
新星が輝くのか!不動の王が座り続けるのか!この試合でわかるかもしれません!
さぁ飛騨氏先生がドラの前に立ちます!』
『この試合は大いに期待している!思いっきり戦え!健闘を祈る!』
ドラの音が響いた。
深瑠と寸魏、紗南香と瑞葉が動いた。
『互いの切込隊長と小役が刀を交えたぁ!
猿武は、毎年4強に倒されているイメージではありますが他の選手とは互角なんでしょうか?』
『まぁ他の選手も強いには強いけど猿武も弱いわけじゃないからねぇ新入生の強さはわからないけど互角に殺り合えると思うよ』
『そうだな、寸魏と深瑠に関しては過去の4強の賦髄が鍛えているしな
今までも守備として何とか4強を抑えようとは出来ているくらいの実力はあるからな、
ただやられることはなかろう』
『そのようですね!激しい切り合いです!ですがやはり新入生の紗南香選手は深瑠選手に押されているようです!防戦一方!これは大丈夫かぁ?!』
『うーん、紗南香ちゃん岸雄と戦いたいとか言ってたから、
あ、ほれ、根性で持ち直してきてるよ、やるねぇそういう子お姉さん好きよぉ!』
『紗南香選手!深瑠選手を風で吹き飛ばす!そして結界で空に飛んできりかかったぁ!深瑠選手反応が遅れてしまったぁぁぁぁぁああああ!!深瑠選手の心代玉が割れたぁ!そしてそのまま岸雄選手に突撃だぁ!が!?岸雄が消えた!?と思ったら背後に!紗南香選手!背中を切られてしまったぁ!』
『岸雄素早く飛んで交わしてから背中切りやがったな、可哀想なことしてるよなぁ』
『まぁあの状態の岸雄は、切ることしか考えとらんと聞くからな、目が冷めた時に後悔しそうだが背後に回られると考えず動けなかった紗南香も悪いからな、失敗することも考えて動かんと先は読めんぞ』
紗南香は悔しそうに端による
『お、瑞葉選手と寸魏選手にも動きがありましたよ!
互いに激しく打ち合うので互いに飛ばされてますねぇ!
瑞葉選手は、足りない力を風力で補っているようです!
風操作系特有技のカマイタチも使っているみたいですが寸魏選手!
うまく避けています!流石心理系の神華は、強いですねぇ!』
『心が読めたら先読みとか関係ねぇからな、
そこらへんで自分より実力があるやつでも渡り合えるようになるから
寿獲琉先輩あたりに当てるつもりかなぁ、まぁまず瑞葉先輩突破しないとな』
『まぁそうだな、寸魏の実力なら寿獲琉とは互角といったところか、先読みと心読みがどちらが優勢かだが、その前に瑞葉に斬り伏せられたらどうにもならんがな』
『辛口ですねぇ!激辛だぁ!寸魏選手辛口コメントが出ていますが大丈夫でしょうか!?
だが変わらず打ち合っています!おっと!?動きが止まったか!?』
『いつまでも打ち合っていても埒が明かないからな、ここで決着をつけるのだろうな』
見つめ合う二人、全員が固唾を呑んで見守る
『緊張の一瞬です!二人が同時に動いた!』
『いや、寸魏が早いぞ』
『ああああああ!瑞葉選手!胸の心代玉が割れています!瑞葉選手の刀も首に向かって振られているようですが割るまでには至りませんでしたぁ!
そして寸魏選手、素早く次へと向かいます!
寿獲琉選手に突撃だぁ!!そして白雅選手には、凱臥選手が突撃していったぁ!』
『ほぉ凱臥が白雅と取り合うか、』
『いいねぇいいねぇ熱いねぇ!凱臥っち頑張れぇ!』
『あ、凱臥選手、何か叫びながら戦ってますねぇ』
『私にはわかる、俺を先輩扱いしろ不良生徒!って言ってるんだよ』
『凱臥選手余裕ですねぇ』
『いや、白雅先輩笑ってるから本気出してないんだろ』
『そうだな、白雅は、軽く避けるばかりで仕掛けていないな、様子見といったところか』
『お?4強でも様子見するのですね!凱臥選手は強いということですか?』
『うーん、そういうわけではないけども、』
『凱臥は、弱いわけではない、これまで猿武では主将をしてきたほどだ、4強とも遅れを取らんだろう、だが4強ほど強いというわけでもない、あいつは秀才だからな、勤勉なのは良いが頭が硬いんだ、柔軟な戦い方の白雅とは相性が悪い』
『そうなんだよなぁ、そこをどう乗り越えるかだよねぇ、時には遊びも大切なのよーんセ・ン・パ・イ★』
『おっと凱臥選手!不機嫌になったのを落ち着けるためか、一度、白雅選手から距離を取った!
そして、ん?なんだ?あの構え』
凱臥は、上体を低くして上の方に水平に刀を構える
『ほぉ古い戦術書でも読んだか、白虎の構えだな、扱いが難しくてとうに廃れた流派だ』
『えーなにそれ、凱臥センパイ扱えんの?』
『あいつの刀術は身体じゃなく頭で動いてるからな』
『ん?どういうことですか?あっと!?凱臥選手動いた!さっきとは比べ物にならない動きだ!まるで獣のような動き!あれが凱臥選手なのか!?』
『あーなるほど、凱臥センパイは、本能の動きとか苦手だから文字としてその動きを学んだってことか』
『あいつは頭が固く頭で考えて動く、その考える場所に獣のような殺気を感じる力を洞察力や瞬発力を屈しして足りない分を補っているのだろう、獣の様に見えるには見えるが、よく見れば正しい型が抜け切れていないところがあるのもあいつらしいな』
『なるほど!それで動きが段違いに変わったんですね!日々の努力の成果がここ出ています!
思わぬところから期待できる人が出てきたのではないでしょうか!』
『いやだが』
『残念、足りないね』
『え、あ!あぁ!凱臥選手!胸の心代玉が割られているうううう!!凱臥武勇伝ここで終わってしまったぁ!』
『あ惜しいねぇ凱臥センパイの刀、白雅先輩の心代玉の下だったかぁ』
『え!あ!本当だ!白雅選手の心代玉のあたりに刀があります!白雅選手、危うく相打ちになるところだったようです!凄いです!凄いですよ!誰がここまで熱い戦いを予想できていたでしょうか!あの万年ドベだった猿武が王者鸞璃と対等に戦っています!これは熱いですねぇ!』
『熱いついでにあっちの冷戦もそろそろ動いてくれるといいなぁアレじゃ玄人しか理解できないから一般客暇だと思うぞ』
『え?あ!そうです!寸魏選手対寿獲琉選手は未だ膠着状態!相手の思考が読める者対先を読むことが出来る選手なので互いに攻め入りきれない!思考のバトル!この緊張感!どちらかの気がそれたら負けです!』
緊張の瞬間、会場の声援も静まり、みんな固唾を呑んで見守る
「やばいな」
岸雄が険しい顔で言う
「うん、寸巍先輩押されてるみたいだ」
千李と岸雄は寸巍の汗の掻き方、動き、寿獲琉の表情を見て悟
「僕が白雅先輩を倒せば」
「いや、千李君は大将だから、俺が行く」
その言葉と共に岸雄が白雅に向かって走った。
『おっと!?岸雄選手が動いて二人も動いた!どうなった!?どうなった!?』
『心代玉が割れたのは!?』
音孤がそういった瞬間寸魏は、白雅の方に移動した。
『あああ!寿獲琉選手の心代玉が割れています!額の心代玉がありません!寸魏選手は、傷一つなしです!すごいです!猿武が鸞璃を押しています!あと一息です!』
『いや、やっと入り口っしょ、後二人が難関だぜ?』
『いや、ここまで押せたのもすごいことだ、何とか紙一重で避けてきている、実力不足かと思ったが神童コンビのおかげでいい訓練ができているみたいだな、だがここからは連携が取れるどうかだ』
岸雄と寸巍は白雅の前に立った。
大将を抜いて一人しか残っていないというのに白雅は柔和な笑みを浮かべてそこに立っている
相手は一人、自分たちは二人だというのに隙の無い姿、岸雄が刀なら白雅は大樹だ、どこから切り込んでも切り倒せる気がしない、だがその遥か後ろに居るはずの虎はそこからでも感じる威圧感とその巨大な存在感を出している
「ふひひ、岸雄君いけるかい?」
寸巍がそう問いかけるが、岸雄は何も言わず何を考えているかわからない無表情で首をこてんと傾ける、すると白雅もにっこりしながら傾けた。
そして二人は首を持ち上げた瞬間に走った。
遅れて寸魏も、走った。
『おっと!3人が動きました。岸雄選手と白雅選手の刀がぶつかるが、流されて寸魏選手は弾き飛ばされた!お?岸雄選手、寸巍選手のもとに行き何か言っていますね、作戦を今練っているのでしょうか?』
『というより、指示じゃないか?すぐ離れたようだからな』
『あー、そうっすね』
『ん?フェントンさん何か引っかかることでも?歯切れの悪い言い方ですね』
『んー?いやこれは寸巍先輩には難しいよなぁって』
『へ?おっと岸雄選手、白雅選手に猛攻です!激しい打ち合いの音が響きます!』
寸巍は岸雄に言われた通り岸雄の合図と共に白雅に切りかかる、
『おっと寸巍選手も動きましたがさすが多方面に運動能力がある白雅選手!柔らかい体でよけて寸巍選手の心代玉を切った!これで岸雄選手と白雅選手の一騎打ちです!』
がちんと刀がかち合い、押し合いになった。岸雄と白雅
「あなたは男らしくないですね」
それを聞いて白雅はにっこりと笑う
「ははは、ひどいこと言うね!」
そう言って白雅は力ずよく押し返して岸雄を押し飛ばす
岸雄はさっと体制を立てなおし、切りかかろうとするが、もう目の前に白雅がいた
「俺、君みたいな意地悪な子は好きじゃないなぁ」
白雅は変わらぬ笑顔で岸雄に切りかかるが岸雄は咄嗟に後ろに飛ぶ
だがそれに白雅は追いつく岸雄は直刀で白雅の刀を受け止める
「俺のどこが男らしくないって?」
白雅は笑っているがその後ろに仄暗い物を感じさせる雰囲気が出ている
『あーあ、岸雄が白雅先輩を怒らせた。これは勝てるかなぁ』
『え?白雅選手怒ってますか?笑ってますけど?』
『ふむ、明らかに殺しにかかってるな』
『え?あの笑顔の貴公子を怒らせるって岸雄選手何したんですか!?』
『さーねぇ、弱いとかでも言ったんじゃねぇの?』
『それは失言ですねぇ!白雅選手ファンも怒っているようです!
岸雄選手は防戦一方!?かと思いきや押し返しだしました!』
『そりゃね、私が訓練してたんだから岸雄ならすぐ相手の動きに合わせられるわな』
それだけではない白雅は執拗に岸雄の額の心代玉を狙っているから岸雄は防ぎやすいのだ
そしてまた。刀同士が合わさり力押しになる
「うーん、頭の心代玉を割ってついでに記憶飛ばして欲しかったんだけど君強いねぇ、
仕方ない、こだわっている場合じゃないね、早く終わらせなきゃね」
そう言って白雅が笑うが岸雄は無表情だ、
そして、白雅がいきなり力を抜いて横にそれるが岸雄はすぐに対応して後ろに飛びのきすぐさま切りかかる白雅は向かってくる刀を受け流そうと思った。だが白雅の前に岸雄は居なくなった。
「え、」
白雅が振り返ろうとした瞬間心代玉が割れる音がした。
岸雄は飛びあがり後ろに回っていたのだ、そして白雅の頭の心代玉を切ったのだった。
『ああああああああああああああああああああああああああ!!なんということでしょう!!白雅選手!心代玉が割られています!!!岸雄選手の勝ちです!!
白雅選手も岸雄選手の速さには追いつけなかったみたいです!すごいです!さすが神童!
今年の個人戦は上位4名の顔ぶれが変わる!そんな予感をさせる戦いでした!さぁ次は大将です!ここで永禮選手が負ければ3年ぶりの鸞璃ランク落ち、7年ぶりの猿武優勝です!
おっと!?ここで千李選手も駆け付けた!大将戦は2対1のようです!神童コンビの動きに期待しましょう!!』
千李は岸雄の隣に立つ
「岸雄何話してたの?白雅先輩めっちゃ怒ってたけど」
「?白雅先輩男らしくないから」
「あぁ確かにそうだけど、本人に言うかな」
呆れたように千李は言う
「ほぉ、白雅は男らしくないか?」
近くで聞きなれない声がした。千李と岸雄はさっと刀を前に持ってきて後ろに下がる
かん!かん!かん!と3回刀がぶつかる音がした。
刀を構えて避けなければ心代玉が割られていただろう
「俺の前で悠長に話している暇があると思ったか?」
すぐさま永禮は岸雄を切り伏せた。岸雄の胸の心代玉が割られている
いつ動いたのかわからないほど早かった。初動が無い、動く気配も感じさせない
千李は距離を取る間合いに入れば簡単に切り伏せられるのではないかと思える気迫
殺す気で行かないと玉を取ることは難しいほどに強い
「よく脈羅先輩渡り合えてたな、すごすぎだよ」
永禮が動き、何とか刀で防ぐが、上背もあり体格もいいだけあって力強い
押し負けそうになりそらして切りかかるがすぐ弾き飛ばされる
上から切っても後ろに回ってもどこから攻めても防がれる
「神童というのはそんなものか?」
永禮が問う
千李は刀を握りなおす
「期待外れだな」
そう言って永禮は動く
千李は寸前のところで避けて永禮に切りかかるが受け止められる
「ほぉ避けるか、なかなか見込みがあるみたいだな」
「ありがたいですね!そう言っていただけて!」
千李は刀を離して胸の心代玉を狙うが白雅はいつの間にか背後にいた。
「っ!!」
『あああああああああ!!!千李選手の心代玉が割れています!勝負あり!今年も鸞璃が優勝だあああああああああ』
千李はそのアナウンスを聞いて初めて自分が切られたことに気づいた。
初めての刀激戦団体戦は2位という結果に終わった。
圧倒的な強さだった。凱臥が言っていた。他の4強も最初はそうだったと
刀を交えた経験で何とかしのいで勝とうとするが勝てた者はいないと
そうだろうと思った。明らかに段違いだった。須舘家のSPの神華人よりも強い
影姫たちの話が事実なら産咲は戦闘系とか家政婦系とかそんなこと考えずに作った?はずだ。つまり戦闘系でもない神華人が戦闘系よりも強いということだ
どんな訓練をしているのだろうどんな鍛え方をしたらあんな体になるんだろう
千李は好奇心が出てきた。聞きたい、永禮の鍛え方、トレーニングの仕方
戦術書は何を読んでいるのか知りたいと強く思った。
そしてそのまま閉会式が始まった。校長から千李が準優勝の盾を受け取る
「頑張りましたね、素晴らしい試合でした。これからの成長に期待します」
「はい」
そして校長が両手を広げたのでおどおどしながら近づくと抱きしめられて耳元でささやかれる
「今夜パーティーが終わった後、中央広場の花壇の前にいてください、待ってますよ」
そう言って校長は千李を離して握手した。千李は驚きながら校長を見ると校長は笑っていた。
「薔薇が導いてくれます」
校長はそれだけ言って手を離した
そして後ろから誰かに引っ張られた。凱臥と深瑠だった。
猿武のメンバーみんなで千李を囲んだ、そして悔し泣きをした。
あと一歩だったのだからみんな悔しいながらも盾をもらえた嬉しさもあった。
千李はその盾を深瑠に渡した。
深瑠は今年で最後の試合だったからだ、深瑠は泣きながら笑った。
そして猿武が下がったら鸞璃が出てきた。
鸞璃は永禮が校長から優勝杯を受け取って、瑞葉に持たせていた。
瑞葉は泣きながらそれを掲げた。
これが千李の初めての刀激戦団体戦だった。