第二十五話 闇夜の襲撃
見上げるほど高い天井からは、大きなシャンデリアがいくつも降りてきている。
そのシャンデリアは明る過ぎず、暗過ぎない絶妙な明度である。
そのフロアには何人掛けだろうか、大きくて長いテーブルにベンチシートが並んでいる。
「この学園の広さにはどこも驚かされるなぁ」
アヤト達が今居るのは学園の食堂。
細かな説明を聞いていたアヤト達は、夕食の時間になっていることに気がつき、皆で移動してきたのである。
「ここで頼んで、あっちで受け取るのよ。今日はこのメニューがおすすめよ」
事細かに説明をしてアドバイスをくれるユリカ。
「…アヤトくん、ユリカちゃんは肉系しか食べないからおすすめはあまり信用しない方がいいよ。栄養バランスが崩れるから」
「ありがとうございます、ウタさん」
ユリカの説明やアドバイスに対して的確な助言を耳打ちしてくれるウタ。
(本当にこの2人は…)
「私はユリカさんと同じものを!」
「こいつは姉さんと同類なんで肉だけで生きていけます」
この異世界でも、男性より女性が強い世界がきっちり形成されている。
「では!久しぶりのアヤトくんとの再開を祝して…」
「ね、姉さん止めて!恥ずかしいから」
フロアに居る生徒達の視線を一手に集めてしまいそうになる。
「ユリカちゃん…普段はここまでじゃ無いんだけどね」
ウタも顔を押さえて俯いている。
「たぶんアヤトくんに会えたのが相当嬉しいんだと思うよ」
「今後の学園生活に少し不安が…」
「大丈夫だよ…僕は3年間耐えたからさ」
「ウタ先輩…」
お互いを哀れみ、讃えあう2人であった。
ーーーー
「じゃあ、僕の寮はこっちだから。おやすみ」
ウタと別れて寮に戻っていく3人。
「しっかし広いな…迷子になりそうだ」
「2人とも迷子には気をつけてね。私も最初は寮に戻れなかったり、本館にたどり着かないことが何度かあったから」
「えっ!大丈夫だったんですか?」
平然と迷子になったことをカミングアウトするユリカにサーラが心配する。
「うん、少し立つとウタが見つけてくれるから」
「そうなんですね!良かったです」
(ウタさん…)
そんなたわいもない話をしていると無事に寮にたどり着いた3人。
「じゃあ今日はいろいろあったし、早めに休みましょうか?」
「そうしようか…」
「もう少しユリカさんと一緒に居たかったんですけど…明日も早いので」
2人とも自室に戻っていく。
「ふぅ…1日いろいろあって疲れたな」
「そうね、早く寝ましょう」
「そうするか…っえ!?」
自室に戻ったはずのアヤトの後方から声が帰ってきた。
「なんで姉さんが僕の部屋にいるの?」
「え?ダメなの?」
「いや、僕はもう寝ようと思ってるから…」
「うん、寝ましょう!」
「いや、寝るから…」
全然話が噛み合ない2人。
「寝るので、姉さんも自室に戻って」
「いや!せっかくなんだから一緒に寝よーよ」
「でも、寮とかって寝るときは自室じゃないとダメとかないの?」
「うん、別にどこで寝てもオッケー」
「…」
「寝よー」
強引に手を引いてベッドに連れて行かれるアヤト。
「あ、まだ身体を拭いてなかった」
ベッドに連れて行かれまいと抵抗をするアヤト。
「今日はもういいじゃない!アヤトくんは臭くないよ」
(あーもうだめだ…)
ユリカの力には到底及ばないアヤトは強引にベッドに転がされる。
(姉さん…どんだけ強くなったんだよ)
一切抵抗できない力に、成す術も無く寝ることしか出来ないアヤトだった。
この日の夜…いくつもの闇討ちがアヤトを襲ったのだ。
ーーーー
最初はチョークスリーパーから始まり
寝相から繰り出される拳や蹴り
朝にはアヤトのHPが…




