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第7章 努力の成果を、【半年越しの激闘!】

毎日夕方18時に更新しております。全19話中の7話です。

宮崎先輩と須川先輩の半年越しの真剣勝負が開幕します。勝負の行方は…!!!?

「ちょっと!!!!!!どうして、あなたまで、そんな ――― なのよ!!!」


かなりの剣幕で詰め寄る宮崎先輩。襟元に掴みかからんばかりに。

アワアワする須川先輩。


あちゃーという顔の仁科先輩…


どうしてこうなった……

それともなるべくしてこうなったのか。


しかし私は―――



――― 遡ること小一時間前。



「遅いよ二人ともっ!!! あ~もしかして…大きい方だった?」


密談?から戻った私たちに、予想通り過ぎる須川先輩の声がかけられた。


「…そんなことより、勝負方法は決まったの?」

流石仁科先輩はソレには反応せずに質問し返した。スルースキルが素晴らしい。きっと昔からの付き合いで慣れ切っているのだろう。

「今日ならまだ雨も降らなそうだし、今からでも戦りましょうよ!」

「え~でも降りそうかもしれないよ~雲行きが~」

まだ須川先輩は渋っているようだ。


「短めで終わる勝負方法もちゃんと考えてきたんだから!いつものパイロンコースでの、10周スプリントの二回勝負!これぐらいなら良いでしょ!」


二回?

勝負を決めるのになぜ二回なのか?私には不思議に思えた…



―――――


しぶしぶ承諾した須川先輩も、いつものようにパイロンをペタペタ貼っている頃には機嫌が戻っていた。やはりラジコンを走らせるのは好きなんだなあ…

コースが出来上がってからは1番に練習走行を開始し、ふんふーんと鼻唄まで聞こえてきた。現金な人だなあ…


そんな須川先輩に仁科先輩が近寄って行った。いつになく真面目な顔、に、見えた。


「…スーちん、今日は、ちゃんと真剣に走りなさいよ!?わかってるよね…」

「だーいじょーぶ!まーかせて!それにしてもこのコース設定、テクニカルで楽しそうだね!」

アレは絶対にわかってない。一抹の不安を覚える私。


「スタートは絡まないように、グリッドスタート風に3mほど離すね。それで前走と後走を一回ずつ入れ替えての二回勝負!」

「そしてゴールラインはここね」

と言いながらラインを引く宮崎先輩。


「…先にゴールした方が勝ち、で良いんだよね?二回で一勝一敗だったらどうするの?」

もっともな質問を須川先輩がした。私も聞きたかった。


「まあ、ソコはハンデということで。一勝でもあなたから出来たらわたしは満足だし。流石に実力の差は分かってるつもりだから。――― だから、真剣にやってよね、須川さん…」



話はまとまったようだった。


一回目の勝負は―――

前走が須川先輩の蒼いM06

後走が宮崎先輩のフレアパターンのM07


その前後走の順番も宮崎先輩が決めたようだ。


「じゃあ、スターターはわたしがするね!」


と、仁科先輩が手を上げて―――


手は振り下ろされた!


唸りをあげるふたつのモーター音。

第一コーナーは、そのまま須川先輩が先に飛び込む。続く宮崎先輩だが…

早速差が少し開いているように見える。


邪魔にならないように仁科先輩が私の横に戻ってきて解説してくれた。


「スタートの加速は、どうしてもRR(後輪駆動)の方が速いからね… FFの宮崎さんのスタートも良かったけど、まあアレぐらいは差がついちゃうよね…」


いつもとは違う、無言の緊張感のなか周回は進む。

ほとんど2台の差は変わらない…どころかやや拡がっている!?


「この差って、追い付けるんですか?」

須川先輩が10周のうちにミスるとも私には思えない。


「追い付けない… というより、この一戦目に勝とうなんて宮崎さんは最初から考えてないね… 勝負は先行になる二戦目!この10周はおそらく、走行ラインの最終確認と、スーちんとの差の確認、って所かな」


仁科先輩が冷静に分析解説してくれた。

そうしている間に、10周はすぐ終わってしまう。


「これで10周!ゴーーール!!!」


イエーーイとやってる須川先輩。

ほとんど変わらない差のまま、いや、少し拡がったかな?一戦目は終わってしまった。


「流石にミスもしてくれないし、全然追い付けなかったね~」

しかし負けた宮崎先輩も、まだまだこれから!という嬉しそうな顔をしている。

それとも二戦目の勝機を感じているのか?



そしてすぐさま二戦目、スタート位置は宮崎先輩が3m前。


「実質… あの差がそのまま宮崎さんのハンデだね。それを抑えられるかどうか…」


そう呟いてから仁科先輩は再びスターターの準備。

この二戦目が本当の勝負…!?

緊張感が高まる。

宮崎先輩はこれまで見たこと無いぐらいな真剣な顔をしている…


… 隣の須川先輩はるんる~んとしている。緊張感無いなあ…


「じゃあ二戦目…… スタート!!!」


仁科先輩の号令と共に同時に飛び出す二台。


スタートの加速で有利な須川先輩のM06がぐーーっと宮崎先輩のM07に近づく―――


そして第一コーナーは!?


――― 流石にスタートだけで並ぶところまでは追い付かない。

先に宮崎先輩のM07か飛び込んだ。1m後ろに続く須川先輩。


「――― ヨシっ!!!」

その瞬間、宮崎先輩の気合一閃!気合の声が漏れ出ていた。

突然の声にビックリした。


「やはりココに勝負をかけてたみたいね… 頭を抑えた。これではじめて、宮崎さんは勝負になる!!!」

解説がありがたい仁科先輩。


「…どういうことですか?」


「この半年で、凄く宮崎さんも上手になった… でも純粋なタイムアタックなら、まだまだスーちんには勝てない。でも、同時に走るレースで更にこんなテクニカルレイアウトなら、抜きどころは限られるし車の性能差も生きてくる…!」


コーナーが続く区間では、丁寧にキレイにパイロンを掠めていく宮崎先輩のM07。

実にスムースになめらかにスピードを落とさないように走っている!


対する須川先輩M06は!?


短いストレートではかなりピッタリと後ろに付きだしたが、やはり第一コーナーで無理には入れない!

そしてコーナー区間でも、M07のやや斜め後ろから抜きどころを探っているが、リズムよく駆け抜けていく宮崎先輩もインをしっかり押さえてブロック!そのまま二台は前後に連結してるかのように走っていく―――


「スーちんは、コーナー中は無理に抜きに行って接触したら不利だからね…当たり負けって言って、RRのM06はFFと当たったら弾き飛ばされやすいんだよ…」


そういえば、チキチキ遊び中に私がミスして当たって須川先輩を弾き飛ばしてしまったことが何回かあった。


「じゃあ、このままミス無く走れば宮崎先輩が勝ちますか?」


「このまま行けば、だけど、単走なら10周ノーミスできても追われてる展開ってかなりのプレッシャーがかかるから…」


――― ガッ!


一瞬、ほんの少しだけパイロンを踏んだ宮崎先輩のM07が減速 ―――


迫り来るM06!!!


――― なんとか踏ん張って最低限のロスで立ち上がるM07!

次のコーナーでもなんとか前をキープした…


見ているだけの私の方が息がつまりそうだ。


「スーちんはあの位置からプレッシャーをかけ続ける。そしてそれに耐えて宮崎さんは同じラインを走り続けられるかどうか… あとは精神力の戦いね……」


「精神力、ですか。」


「そう、ラジコンは精神力、メンタルの勝負でもあるんだよ ―――」


――― メンタルの勝負、か…


そしてもうレースは8周目の最後のコーナーからの立ち上がり。

宮崎先輩は丹念に同じラインを通す。


「…… あっ、」

須川先輩が、動いた!!!ように見えた。

さっきまでとは違うライン取り、そして最終コーナーを直線的に立ち上がってきた!


「仕掛けた…!」

仁科先輩も呟く。


ストレートの立ち上がりでアウトからグングン近づく須川先輩M06…

その差は1台分もない ―――

そして第一コーナー!!!


焦らず微動だにせず!宮崎先輩M07はインを空けること無くジャストのタイミングでコーナーを駆け抜けて行った。ほとんど同時にコーナーを抜けついていくM06。


「スゴい!今のところは完璧に押さえ込んでる!これはこのまま行っちゃうかな~~」

なぜかちょっと楽しそうな仁科先輩。須川先輩を応援しないんだろうか?


そしてそのまま9周目も全く同じ展開で進み、またしても最終コーナー!


「もう一回行った!」

仁科先輩が声をあげる。


今度は何をしたのか私にも何となく分かった。最短距離を回るコーナーリングではなく、早めにブレーキング!向きを変えての早めのアクセルON!

そうやってアクセルを握る距離を稼いで、ストレート勝負を仕掛けているのだ!!!


そして再びストレートでアウトから並びかけて、アウトからプレッシャーを欠けるM06 ―――


第一コーナー!少しでもブレーキが遅れて膨らめば宮崎先輩の負け……


…曲がれ!!!

私は心の中で叫んでいた!


そしてM07は!!!


ビタっっっ!と

完璧にコーナーをクリア!


「おおー抑えたねえ~ そしてこれがファイナルラップ。スーちん万事休す、か?」


「ぅーー」小さく須川先輩の呻き声が聞こえた。


スゴイスゴイ!宮崎先輩が、勝つ!?


このままグルッと回ってゴールで終わりだ…!


―――――


To be continued…


次回! ちきラジっ!

「とある真っ直ぐな少女の話」

第7章をお読みいただきありがとうございました。

完璧に抑え込んでいるはずの宮崎先輩が、なぜ冒頭であのような怒りを爆発させていたのか。明日の夕方18時更新の第8章は、もうひとりの「とある少女の話」をお届けします。このレースの裏側にある彼女の想いとは。

明日もどうぞよろしくお願いいたします。

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