第5章 マイマシン!【ヒロちゃんのニューマシン選択会議いっいえ〜〜ぃ】
毎日夕方18時更新、全19話中の5話です!
ちなみに、今回の話の裏タイトルは『ドキッ!ポロリっもあるよ!ラジコンだらけでサービスサービス!の回』にしようとしましたが、流石に不真面目が過ぎるので自重しました(笑)。
この話の舞台設定は『令和2年』想定となっております。
「私も自分の車を買おうと思います!!!!!!」
次の日も部室に4人が揃ったので、私はかねてから考えていたことを口に出した。
ずっとレンタルマシンを借りているというのも気が引けるし、やはり自分のモノ!というのを手に入れたい気持ちが強くなってきた。
「えっと、それはいいことだと思うんだけど、ラジコン本体と、プロポにメカ関係、バッテリも揃えようとすると結構お金、かかるけどソコは大丈夫?何なら中古とかもあるよ?」
仁科先輩が部長らしくもっともな心配をしてくれた。
須川先輩は、おーっ、ついに!!!というようなキラキラした眼でこっちを見ている。
宮崎先輩は聞いてはいてくれてるけどあまり興味がなそうかも?なにかニューマシンとにらめっこしている。
「その辺は、…何とか大丈夫だと思います。あっっもちろん予算の限界はありますけど。」
昨晩、親に相談してみた。
親からしても、ケガからずっとふさぎ込んでいた私を心配してくれていたようで、新しいことを始めたい!ということをむしろ少し喜んでくれたのはラッキーだった。
もちろんそのあと、
「え!?ラジコン!?」
って言われて、
「え!?そんなにかかるの!?」
と言われたのは言うまでもないことなんだけど。
「ちなみにご予算はいかほどでしょうお客様…」
ごしょごしょと耳打ちしてくる仁科部長。
「えっと… 〇〇〇〇〇円ぐらいまでなら…」
何となくこっちも耳元に返す。
「ほほう!それは良いね!中古で揃えたらハイエンドまでイケそうだけど…でも車は新品がいいんだよね?」
「ハイ!皆さんはその車全部、組み立ててるんですよね?私もそこから始めたいです!」
工作には自信は全くないが、先輩たちがいれば何とかなるだろうという謎の自信があった。
「じゃあ…あとは車を何にしたいかの希望はあるの?」
「えっと… 今、この部で使ってる車って、えむしゃーしってやつなんですよね?」
私なりにスマホで色々調べてみた。
そしてその少し古い型のがレンタルマシンだとあたりをつけていた。
「そう!M05のバージョン2だしほとんどセッティングも出来あがってるから走りやすいかな?と思うんだけど…これの新しいのにする?」
気持ち仁科先輩の押しが強い気がする。
「いえ、その前にちょっと確認したいことがあるんですけど…」
私は前から気になっていたことをどうしても聞いておきたかった。というよりスマホで調べるだけでは私にはわからない。
「このレンタルマシンで練習して、ラジコンに慣れてきたとは思うんですけど、どうしても最初に須川先輩に貸してもらったラジコンの動きと、同じにならないような気がするんです…」
「いえ、このコが走りにくいって言う訳じゃなくて…何て言うんだろう…ステアやスロットルを動かした時の反応が凄くもっと気持ちよかった気がするんです―――」
うまく説明できない。わかってもらえるだろうか?
―――――
「ま、口で説明するのも判りにくいし、百聞は一見に如かず実際色々と試してみましょうか?」
いつもの部室外のアスファルトで、仁科先輩がペタペタとパイロンを並べながら言った。
「第32回ヒロちゃんのニューマシンを何にするか選択会議~いっいえ~~ぃ!!だね」
何が32回なのかはよくわからないが、須川先輩のことだからきっとなんにも考えはないだろう。
「…わたしは、練習しててよいかな?」
宮崎先輩はマイペースだ。
「じゃあ早速… スーちんM06を出して。はい、プロポは関谷さん。」
須川先輩のプロポが渡された。
「最初にスーちんが貸したのがコレ。今回はスピードの設定は落としたりしてないから。ちょっとコレで走らせてみてくれる?」
「分かりました。それでは…行きます!」
と同時にスロットルを握る。
その瞬間!
きゅきゅきゅー 鳴り響くタイヤのスキール音
――― 速い!
いつものレンタルマシンは特にスタートの時など少しゆったり加速するが、コレは握っただけ機敏に加速する!?
「これでもモーターのパワーはいつものM05と一緒だからね。」
仁科先輩が横から解説。
これで、本当にそうなのか。確かにストレートを走っている直進そのもののスピードはそれほど変わらないような気がする。加速が違うのか。
そしてコーナー。
いつものタイミングで減速し ―――
ぅん!?
私がいつも想定していたよりも機敏に向きを変えるマシン。
「あっっっ」
と声が出た時には、くるんっと180度ターンしていた。
「いきなりは難しかったかな?」
「…いえ、もうちょっとやらせてください!」
負けず嫌いの血が騒ぐワタクシ。
もう少し慎重に気を付けながら走ってみる。
スロットルも、ステアリングも、いつもより敏感。
より丁寧に!
――― やはり、凄く指の動きがダイレクトにマシンに伝わる!
特にコーナーからの立ち上がり!
M05のつもりでぎゅっとスロットルを握ろうとすると先程みたいにスピンターンしそうになってしまう…
「スゴいです!同じラジコンなのにこんなに違うんですね!!!」
興奮覚めやらず。
仁科先輩の後ろで何故か須川先輩がいやーそれほどでも、と照れ臭そうにしているが。
「スーちんのは特にクイックにセットしてるしね~ それとFFとRRの違いが凄く大きいんだよ♪」
仁科先輩は前輪駆動(FF)と後輪駆動(RR)の特性について教えてくれた。簡単に言えば、FFは安定した走行性,
RRは操作感がダイレクトだけどやや扱いが難しい、など。
「なるほど~こんなに違うんですね凄いです!!!」
驚く私に仁科先輩も嬉しそうで。
「08もあると良いんだけど…まだ組んでないし、07も試してみましょうか。宮崎さんちょっといい?」
宮崎先輩は「新しいんだから壊さないでよ~」と口では言いながらニコヤカに貸してくれた。
皆いい先輩たちだ。
それにしても組んでない、とはどういうことなのだろう?
「M07は新型のフロントミッドシップモーターの前輪駆動で運動性が………」
なんだか仁科先輩のセリフが早口になってきた…後半はよく聞き取れないというか理解が追い付かない。
「まあ、動きとしては05に似てると思うよ?」
珍しく宮崎先輩がフォローしてくれる形に教えてくれた。
M07を試走してみること数周。なるほど、須川先輩のM06とは違い、慣れ親しんだレンタルM05の動きに似ていて安心して操縦できる…
むしろそれよりも運転しやすい?かも!?
そしてこの宮﨑先輩のプロポ軽いっ!!!
これが新製品ってことなのかなあ?
―――――
「ありがとうございました宮崎先輩!」
「どういたしまして~♪ 良いでしょ07?」
そこに、いつの間にか部室に戻っていた仁科先輩がもう一台持ってきた。
「今の二台を踏まえて、取って置きのコレなんてどうカナ~?」
何かメガネが怪しくキラーんっと光った気がする…
不穏な空気を一瞬感じる…
ふと振り返って見回すと、いつの間にか須川先輩と宮崎先輩は私たちから離れて自分のラジコンを走らせ始めていた。
…なんだろうこの雰囲気は?
「これは、FFなんですか?RRなんですか?」
気を取り直して聞いてみる。
凄く年季が入った車のようにも見える…が、まさか部に伝わる呪いのマシン、なんてことは無いだろう。
「ふっふーん、まあ走らせてみてのお楽しみかな~」
妙に押しが強い気がする。
まあ確かに走らせてみないと判らないか。
と、プロポを手に取り走らせてみる ―――
こ、これは!
スゴい加速!
須川先輩のM06以上のスピードだ!
そしてコーナー!ついうっかりオーバースピードで突っ込んでしまったが、何事もなかったかのように曲がっていく…
「これぞわたしの取って置きM03とM04を前後ニコイチしたツインモーター四駆で至高で究極の…………」
聞いてもいないのに勝手に仁科先輩が早口で捲し立てていたもちろん途中からは全然聞き取れないし理解できな ―――
「あっ」
少しパイロンに乗り上げた!
…
…… アレ!?
ポロリっ
ころころころ…
タイヤがひとつ、転がり落ちた。
ずさーとマシンは止まり、きゅるきゅるきゅると空回りするタイヤの音だけがむなしく鳴り響く。
「あ、あれ~?もうナットがダメになってたのかな~」
タイヤを追いかける仁科先輩。壊れたのに何か楽しそうだ。
う~ん、なにか色々と深いんだなあ…と私は改めて思ったのだった…
全く、ドキッとした。
―――――
「そんなわけで、結局ヒロちゃん何にするか決まりそう?」
珍しく須川先輩が司会進行。仁科先輩は、別のところにもクラックが~と叫びながら嬉しそうに車を直している。
「今買うならやっぱり07か08じゃない?公式レースにも出れるし?」
宮崎先輩も薦めてくる。
でも私の気持ちはほとんど決まっていた。最初から。
「私、私は、M06がいいです!」
「後輪駆動の動きが気に入ったなら、M08の方が新しいし部品なんかも手に入りやすいからホントはお勧めなんだけど…」
やっぱりといった顔で、それでももう一度と宮崎先輩は言ってくれた。
それでも、
あの最初の走りに見惚れて、そしてはじめて走らせて楽しい!と感じたマシンがいいと思った。須川先輩とお揃いの。
お揃いの!?いやべつにそんな須川先輩とおそろいにしたかったとかソウイウことじゃ…
…ひとり何故か心の中で気恥ずかしくなったのは気のせいだろう。
「…フフフ。話は聞かせてもらった! M06ならいいモノがあるよお客さん!」
今日の仁科先輩はなんだか怖い。
「まだ、買ってから未組の、M06Rをお安く提供できます!今ならなんと~~~さらに半額!!!」
「えっ~半額!部長、やす~~い!アレが半額ならわたしが欲しい…でも今お金全然無いしな~」
仁科&須川先輩が2人でなにかコントのような会話をしている。
―――――
「…決まったみたいだからわたしはひとっ走りしてくるね~」
宮崎先輩はM07を持って出ていった。ここのところずっと、なにかの練習をしているようだ。
それからもしばらくは、プロポとメカをあーしようこーしようと2人は相談にのってくれた。
その会話を聞きながら、
この部(同好会だけど)に入って本当によかったなあと、
私は安堵したような気持ちになってその1日を楽しく過ごしたのだった。
第5章をお読みいただきありがとうございました。
本作は、この第5章をもちまして「日常ゆるふわ編」が終了となります。明日の夕方18時更新の第6章からは、ついに物語の根幹である【熱血青春群像劇編】へと突入いたします。宮崎先輩がストイックに練習を続けていた理由が明かされ、4人の運命が交差していきます。ここからがこの小説の本当の始まりとなりますので、明日もぜひご覧ください〜!




