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第15章~決戦ふたたび!・中編【崩れるプランA、そしてプランB発動!】

毎日夕方18時に更新しております。クライマックス構成の【中編】をお届けします。蒼いシュシュを結び激走を魅せる須川先輩。宮崎先輩の防衛ラインがついに限界を迎える中、ヒロの能力は・・・!?

  ☆☆ 宮崎’s view ☆☆


もちろんこのまま終わるとは思ってなかったけど。

隣にいる須川さんの雰囲気が変わったことにはすぐに気づいた ―――


――― 仕掛けてきたか!?


インフィールド奥の一番回転半径の小さいヘアピンコーナー。

わたしはタックイン気味に小さくコーナーを回って立ち上がった。その後ろから…


!!!?須川さんがミスしたっ???


視界の端に、明らかなオーバースピードでアウトに膨らんでいく蒼いマシンが見えた…

須川さんの自滅???こんなところで!?


それ以上は見る余裕はなかった。キュキュキュっーーー!!! という須川さんのマシンのタイヤの音だけが聞こえてきた。これで、こんなにあっさりと終わり…?


一瞬落胆しかけた。

しかし直後、ドキリっとさせられた。


そのまま次のコーナーを回ったときだった。

ちょっとだけ差は広がったが、後ろにいる!!!

何故!?そこにいる?あんなミスをしたらもうちょっと離れてるはずだ。


そして ―――

半周も走らないうちに、瞬く間にその差は詰められてしまった!

しまった動揺したか?それともペースを落とし過ぎたか?


走りに集中しよう…

わたしはわたしの走りをするだけだ。元に戻っただけなんだからこのまま……


「7周目で~す」


仁科さんの声が聞こえてきた。関谷さんがホームストレートを通っていく。

数秒遅れて、わたしたちもストレートをほとんど差のないまま駆け抜けていく。


――― よし、ココもこのままだ。

第一コーナーを回り、後はインフィールドで少し抑えめに……


「…遅いよ?」


ゾクリっとした。ぽつっと横から声が聞こえた気がした。

何が起こっているのかわたしにはよくわからなかった。


コーナーでは有利なはずなのに。

わたしのM07よりも、『一台分外側なのに同じスピードで』ついてきている!!!

抑えめに走っていたら、今にもそのままアウトからぶち抜かれそうに!

そんな!?もしかして無意識にスピードを抑えすぎた???


瞬く間に来る次のコーナー。

思わずそれ程「抜く」ことなくコーナーをクリアしてしまった。

わたし的にはジャストタイミングなコーナーリング!これなら!???


! ダメだっ!!!ピッタリ後ろにいる!?

明らかに須川さんのコーナーリングスピードが上がっている?


くっこれでは…

思わずプロポを握る指に力が入る ―――



「8周目で~す」


!!!今までより『コーナーひとつ分コールが遅い!』

ということは…


直後、2台連なったままホームストレートに入ると、


――― やはり、関谷さんのオレンジのマシンが見えてきた…近づいている!

須川さんにペースを上げさせられているっ!!!

追いついてしまったら、関谷さんにはブロック出来る走りなんてできない。至近距離の後ろからつつかれるのが苦手な関谷さんはすぐミスしてしまうだろう…


こうなったら、もう少しアウトに寄せてでも須川さんをブロックしなきゃ…


わたしよりも一台外側でハイスピードに走る須川さんのM06にもう少し寄せて ―――


!!!

わたしはアウトに寄せようと一瞬ステアを緩めたが、無意識か偶然か、とにかく嫌なプレッシャーのようなものを感じてインを締めていた ―――


――― そう思ったときには、アウト側を走っていたはずの須川さんが、わたしの真後ろに切れ込んで来ていた…

つまり、インを開けたらズバッと抜かれていたところだったのだ……


「あれ?おっしいなあ~~」

隣で楽しそうにつぶやく声。

「インが開いたかと思ったのに。宮崎さん、勘が良いねえ~ ♪」


須川さんは鼻歌交じりに走っている。

駄目だ…これでは―――


ペースを落とさせようとアウトに寄せればその瞬間、インから抜かれてしまう。

インにいても抜いた走りをすれば、アウトからまくられてしまう。

コッチが全力で走り続けるしかない!ミスも許されない!!!


そしてこれでは、『ペースを落として走る』なんてことは全くできないっ!!!コントロールできない……


「ふんふ~~ん ♪」

気持ちのよさそうな楽しそうに隣から聞こえる鼻歌。

そして焦らされるかのように聞こえてこないラップカウンターの声…


ついに最終コーナー、そして、


「9周目で~す」


……駄目か。

最終コーナーを回って立ち上がった時に見えてきた関谷さんのマシンは、もう目と鼻の先に迫っていたのだった。

ストレート一本分はあったはずの差は、あっという間に無くされてしまった…




  ☆☆ 仁科’s view ☆☆


少し目の前の光景が滲んで見えた。――― スーちんの、走りだ。


もともとバギーでは、砂煙を豪快に巻き上げるようにテールスライドさせて走らせるのが好きなスーちんだったが、レースで集中しているときは違った。


スライドはさせるんだけど最小限に、そしてステア操作も最小限に、ほとんどカウンターも当てなくなってくる。どんどんステアを切っている時間が短くなっていく ―――


いわゆる、ゼロカウンタードリフトだ。

しかも四駆でもないのに、スーちんの絶好調時には滑りやすいダートの二駆でもやって見せていた。

他のマシンがグリップが利かなくて加速できないダート路面を、コーナーで止まることなくスルスル前に押していく…昔何度も見た光景だ。


普通ドリフト走行といえばタイムは遅い!って言われるけど、それはハイグリップなサーキットでの話。

ダートやココみたいな古いアスファルトの滑りやすい路面では、滑らせながらでもマシンを前に押し出せるほうが速い!!!



昔、スーちんに何度か、どうやって走っているのか聞いてみたことがあるが、


「???え~~っと、マシンのお尻が、グっと流れそうになるのをならないようにギュっと抑えながら……」


感覚だけでやっているようで説明はよく分からなかったし、わたしには全く真似は出来なかったのだけど。


そして今。


丁寧にインを押さえて走る宮崎さんも、2週間前よりも走りの精度が上がっているように感じる。本来ならマシンの性能差で、特にコーナーリングではM07の方が限界は高い。


しかしスーちんは、劣るマシンの性能を、タイヤの限界をギリギリまで使うことによって補い、宮崎さんについて行っているのだ。


キューーーーーーっっっ


一台だけ他よりもひときわ甲高いスキール音を鳴らせて走っていく ―――



何年かぶりに見ることができた、カッコいいスーちん!!!

あのスーちんが、ついに戻ってきた……

わたしはしばし、見惚れていたが、


おっと忘れるところだった。


「10周目で~す」


先頭の関谷さんがゴールラインを超えたコール。少し声を出すタイミング遅れちゃったかな?


でも、もう関係ないか。


完全に追いついた。

関谷さんもここまで大きなミスもなく頑張って走ってきたが、一台だけ明らかにペースが遅かった。

これで関谷さんは脱落。

あとは宮崎さんとスーちんのふたりの勝負。だけど宮崎さん、あと10周も持つかな~?


通常、あれだけぴったりと後ろに付かれると、前を走る方のプレッシャーは半端ないものだ。あの冷静な走りをそのまま続けられるかな~?


わたしは残るふたりのバトルがとても楽しみになっていた。関谷さんには悪いのだけど。

と、その時は考えていた。




  ☆☆ 関谷’s view ☆☆


私ひとりにしては、結構うまく走れたんじゃなかったかなと思う。


ここまで、宮崎先輩のおかげで、それほど後ろからのプレッシャーを感じることなく自分の走りに集中できた。

特訓の時以上に上手く走れた気がする。


でも、


「前と同じ、10周勝負のほうが関谷さんが逃げ切るのには有利なんじゃないかな?」

今朝まで宮崎先輩と話し合っていたことを思い出す。


プランA。

宮崎先輩が須川先輩をブロックして抑え込んでいる間に、私が逃げ切って勝つ。

ハンデももらうのだから、もちろん周回数は短い方が良い。


それでも ―――


「いえ、やっぱり20周でお願いします。」

「…うん、関谷さんがそういうなら、そうしましょうか。」


本当に、宮崎先輩は優しい先輩だ。そして心強い。



「10周目で~す」


仁科先輩の声が聞こえた。10周勝負なら本当にギリギリだったけれども。

私が先にゴールラインを通過し、すぐうしろの二台も連なるように通過。

10周勝負だったならば…


――― でも、流石にここまでか。


ピッタリ後ろに近づかれると、後ろのマシンがどうしても目に入ってしまう。私の集中力が削がれてしまう……

どうしても克服できなかった、私の弱点だ。


こうなると、大きなミスをする前に譲ってしまった方が良い。パイロンに乗り上げて転がってなんてしてしまえばもう取返しもつかない。それで私ひとり、終了だ。


「関谷さん、ゴメンっ……」(須川さんを抑えきれなかったよ…)

隣の宮崎先輩の切羽詰まった声と、心の声も聞こえたような気がした。


そんなことないですっ!宮崎先輩は本当に凄いです。

店長さんの言うあんな無茶苦茶な無理難題に思えるような走りをここまで出来たんですっ!凄いです!



――― はくしゅっ

その頃店長さんは、くしゃみをしてマシンをスピンさせていた。

「う~ん、誰かわしの噂をしてるな!?」

「まさか。花粉症ですよ!」 

―――



「先輩、ココで先に行ってください!」

私は第一コーナーに入る所で、少しスピードを落としてラインを外に外した。

インを開けて、先に行ってもらう。


「っ……!」

少し悔しさをかみしめるように、無言で宮崎先輩が追い抜いて行った。

その目はもう前を向いて、集中しているようだ。


「ヒロちゃん、おっさき~~ ♪」

連なって須川先輩も追い抜いて行った。

多分、一秒後にはもう前の宮崎先輩のM07しか見てないだろう。


でも、



―――――― まだここからだ!


「先輩、プランBです!!!」

「っ……!関谷さん、出来そう?」


「やりますっ!!!」


集中!!!切り替えろ!――――――



――― トレース、ON ――― 



――― キンっっっ


乾いた音が耳の奥で響いた。

少し、暗くなる周りの視界。


ここからが、私と須川先輩の勝負だ!!!

第15章をお読みいただきありがとうございました。須川先輩のゼロカウンタードリフトにより崩壊するプランA。ヒロの能力は果たして通用するのか?

明日の夕方18時更新の第16章は【決戦ふたたび(後編)】をお届けします。限界領域のバトルの行く末を、ぜひ明日も見届けてください~

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