第14章 決戦ふたたび!・前編【秘策プランA!!】
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ついに決戦のレースの幕が上がります。今回はクライマックス構成(前中後)のうちの【前編】です。
ヒロと宮崎先輩の連携の前に、須川先輩は・・・?
そして勝負の刻 ―――
放課後。いつもの部室裏アスファルト。
仁科先輩に、「コースレイアウトはあなたたちで決めて良いよ?」と言われたので、出来る限りアドバンテージはもらっておくこととした。
特訓したサーキットと似たようなレイアウトを、パイロンを置いて宮崎先輩とふたりで作成した。箒で路面の掃除もした。
「――― ふーん、なかなか楽しそうなコースだね!」
思わず振り向くと、私は一瞬目を疑った ―――
いつもの須川先輩 ―― だが、あのキレイな髪の毛をまとめて、上にぎゅっと縛り上げていた。須川先輩のあんな髪型は初めて見た…
蒼い髪留めから後ろに垂れ下がる後れ毛が、さやさやと風にたなびいていた。
太陽の光に透けて見えて、キレイだ、と思った。
っと、そんな場合じゃない。私は気を取り直し、
「これで、今回は20周の一回勝負でお願いします。…練習走行は、されますか?」
「わたしは無しでよいよ?」
なにか髪型が変わり、いつもと雰囲気が違って見える須川先輩。少しドキドキする。
「じゃ、わたしたちは少しだけ。走らせましょうか関谷さん。」
最終確認だ。
宮崎先輩と二台で、路面のグリップ感を確かめるように、軽く流して走らせる。
――― 少し指先が震える。トリガーを握る指が冷たく感じる。
大丈夫だ。問題ない。
適度なプレッシャーは集中力に変換できる。懐かしいサッカーの試合前のような感覚を覚えた。
「今回も、ハンデは3メートルもらうけど、それで良いよね?」
宮崎先輩は、ホームストレートのはじまりのところにマシンを置いた。
「OK~それぐらいで行こっか ♪
ところでヒロちゃんはどうするの?」
私は―――
テクテクと前に歩いていく。
「なんと言っても一番の初心者ですからね~これぐらいはハンデ貰います!」
ストレートエンドまで歩き、コーナーに向けて斜めにオレンジのM06を置いた。
多分、ダメ出しはされないだろうという確信があった。内心はドキドキだけども。
「ん?それぐらいで良いんだ?」
不敵に笑う須川先輩。今日はなんだかいつもより威圧感を感じる。
一瞬、もっとコースの先の方にマシンを置こうかと思ったが辞めておいた。
「それじゃ、いちおう私がマーシャルやるけど…一人だけだから当てにしないでね!」
仁科先輩がストレート入口のゴールラインのあたりから声をかけてきた。
ホームストレートに沿って並ぶ私たち3人。仁科先輩から少しはなれて、須川先輩、宮崎先輩、そして私の順で並んでいた。
そしてスターティンググリッドは、
ストレートの一番後ろから、須川先輩の蒼いM06、
3メートル離れて宮崎先輩のフレイムパターンのM07、
そして10数メートル以上離れて私のオレンジのM06。
「関谷さんは、落ち着いて走ったらよいからね?…作戦通り、プランAだっけ?」
緊張をほぐそうと隣から宮崎先輩が声をかけてくれた。
「ハイ!頑張ります!プランA、やってやりましょう!」
――― そして、
「じゃあいっくよ~ ・・・3,2,1…スタート!!!」
一斉にモーターの甲高い音が響き渡る。
それに反して、静かな立ち上がりの展開だった。
☆☆ 仁科's view ☆☆
さて、関谷さんはどれぐらい上達したのかな~
スタートから一人旅、インフィールドをスムースにオレンジのM06が走り行く…
ウンウン、05から乗り換えたばかりだけどなかなかスムースに走ってるなあ…
でも、まだまだこのペースだとすぐ追い付かれるかな?
関谷さんが一周終わり、ストレートを立ち上がって行った後、数秒遅れて宮崎さんとスーちんがやって来た ――
早くも宮崎さんの後ろにピッタリついて、抜くタイミングを伺っているなスーちん…
やはりこの2人の勝負だな…
ストレートが終わり、2周目のインフィールドに入っても同じ展開で。
宮崎さんは相変わらす丁寧にインを突いた走りで……?
!?何かおかしい?
なんだこの違和感は!? ―――
関谷さんが3周目のホームストレートを終えて曲がった瞬間、宮崎さんとスーちんがストレートに入った ――
――― 関谷さんとの差が全くといってよいほど縮まっていない!?そんなバカな!?
関谷さんの走りはいたって普通、それほど速くないのに???
☆☆ 宮崎's view ☆☆
店長さんが考えてくれたプランA… ここまでは予想以上に巧くいっている!
店長さんとの会話が脳裏を掠める ―――
「… 宮崎さんは、スゴく、ブロック勘が良いと思うんだ。僕が抜こうとしたタイミングを先読みするかのように、スッとマシンを寄せてブロックしてたよね、さっきも?」
「…そうですね、なんとなく、ですけど。後ろの人が抜きにくい位置取りが、わかってきたような気がします…」
「2人ともが勝つこと、それを狙うには、関谷さんを逃がさないといけない。そのためには宮崎さんが、『ペースを落としつつブロックする』必要があることになるんだ!」
「…そ、そんなことが出来るんですか!?」
「相手はM06なんだろう?新型のM07と比べたら断然マシンの性能に差がある。なかでもコーナーリングスピードは全然こっちが有利なんだ。だからこそ、そこはわざとペースを落として相手のラインに立ち塞がるように走る… そして向こうが有利な立ち上がり区間はこちらも全開にしつつ頭を押さえる…
これが上手く行けば、相手はなかなかペースが上げられない…今の関谷さんでもミスがなければかなり逃げられるハズだ!」
「…そんなことが…わたしに出来るでしょうか?」
「それはこれから少しでも特訓しよう!」
―――――
店長さんがそれから、色々とペースを変えながらの練習をしてくれた…
お陰で、今、後ろを走る須川さんのマシンの動きが面白いように見える!!!
須川さんが、加速したいところで少し寄せて邪魔をし、ペースを上げられないところではこちらも少し休憩
3周目のホームストレートに入った…
視界の端に見えるオレンジの関谷さんとの距離もいまだ保てているようだ…
スゴい!店長さんの作戦がバッチリはまっている!!!
「――― そう、これが宮崎さんのス◯ンド能力!パーフェクトブロックだっ!!」
「スタ…?なんですか店長さんイキナリ?」
「あっ!私聞いたことあります!昔お兄ちゃんがJ◯J◯(伏せ字)というマンガの物真似してた時にそんなこと言ってましたよ?それですよね!?」
「おおう、関谷さん分かってくれたかありがとう!おじさんダダスベリになるかと思ったよ…」
「いや店長さんスベってますよそれ―――」
特訓最終日にようやく、少しモノにできたような気がした。
後半の会話はともかく、今、わたしはあの須川さんを、余裕をもって抑えられている!
これならもう、怖くない!!!
☆☆ 関谷's view ☆☆
今のところ、順調に走っている。
結局、今の私はまだまだ、得手不得手がハッキリしている。
宮崎先輩みたいに、冷静なバトル、走りなんてできない。特に後ろからプレッシャーをかけられたらひとたまりもない ―――
かと言って独走で逃げ切る…なんてことも1人ではできない。
宮崎先輩に守ってもらうしかない。宮崎先輩が、しっかり抑え込んでくれることを信頼して、しっかり走るしかない。
そして、宮崎先輩にも私がしっかり走ることを信頼してもらい、抑え込むことに集中してもらう!!!
2人が信頼しあい、協力することでこの作戦は成り立つんだ ―――
店長さんはそう言っていた。
そして宮崎先輩は、その作戦通り、須川先輩を抑え込んで走っているようだ…
私は今、1人じゃない!
隣の宮崎先輩が凄く心強く感じる。
流石に差が開くことは無さそうだが、後ろの二人との差はストレート一本分、これだけ差があれば私がミスさえしなければそう追いつかれることはなさそうだが…
このままイケるだろうか?
「6周目で~す!!!」
仁科先輩のカウントの声が聞こえてくる。
まだ6周目!?
プロポを握る指が少し震える。
スタートして時間にすればちょっとしかたって居ない筈なのに、残り時間の長さを感じる…
練習ならまだまだなんてことない時間なのに!
――― 集中だ。いまはそれだけだ。
とにかく今は宮崎先輩を信頼して、走るしかない。
軽くニュートラルブレーキを利かせながら、私はストレート後のコーナーに飛び込んでいった。
☆☆ 須川's view ☆☆
ふーん、そういうことか。
なにか仕掛けてくるとは思ってたけど。
宮崎さんが微妙にもたついた走りをしてオカシイな~~
と思ったけど、そうやってわたしを抑え込むつもりなんだね…
ヒロちゃんも丁寧にそつなく走っているようだ。
ラップカウンター代わりのふーさんの声が聞こえてくるタイミングは最初とそれほど変わっていない。差がどれくらい残ってるか分かるように、ゴールラインをヒロちゃんが通るピッタリのタイミングで声を出してもらうよう、ふーさんにはお願いしている。
相変わらず宮崎さんのM07がわたしの進路を邪魔するかのように、付かず離れずわたしの前をうろちょろ走っている。
そしてヒロちゃんとの差も、ストレート一本分ぐらいか?やや縮んだぐらいでほとんど変わっていないようだ。蛍光オレンジのボディが視界の端にちらちら見える。良く目立つ色だ。
ヒロちゃんがとにかくこのままミスせずに逃げれば!?ってところか…
…
……
でもそれはね?
ヒロちゃんはまだこのスピードでしか走れない!ってことの裏返しでしかないんだよねっ!!!
まだまだっ!全然だねっ!!!
そろそろタイヤもあったまってきたし。
屋外アスファルト、滑る路面の走り方ってものを見せてあげるよ!!!
本当に楽しくなってきた…
こういう気持ちはいつ振りだっただろう?とても懐かしく感じる ―――
わたしは昂る気持ちを抑えられず、スロットルを握り込んだ。
第14章をお読みいただきありがとうございました。
4人全員の視点が目まぐるしく切り替わる、レースの臨場感を楽しんでいただけていれば幸いです(わかりにくかったらスミマセン)。J△J△とか定番のネタはつい入れてしまいます・・・
明日の夕方18時更新の第15章は【決戦ふたたび(中編)】をお届けします。牙を剥いた須川先輩の猛追により、作戦は崩壊の危機へ。もう一つのプランBとは。明日もどうぞよろしくお願いいたします。




